【2017年8月9日 HubbleSite】

成層圏とは大気の層の一つで、地球では上空10〜50km付近に存在している。オゾンガスが太陽からの紫外線を吸収するため高度が高くなるほど温度が上昇するという特徴があり、木星や土星、土星の衛星タイタンの成層圏などでもメタンガスが同様の働きをしている。

太陽系ではよく見られる成層圏が系外惑星に存在するという証拠は、すでにいくつかは示唆されていたが、英・エクセター大学のTom Evansさんたちが行った観測から、これまでで最も強い証拠が見つかった。「実にエキサイティングな成果です。系外惑星の大気で起こるプロセスと、太陽系という異なる条件下で起こるプロセスが比較できます」(NASAエイムズ研究センター Mark Marleyさん)。

Evansさんたちはハッブル宇宙望遠鏡で、とも座の方向約900光年彼方にある系外惑星「WASP-121b」を観測した。WASP-121bの半径は木星の1.9倍、質量は1.2倍で、中心星からわずか400万kmほど(太陽〜地球の約40分の1)の距離を1.3日周期で公転している「ホットジュピター」だ。これほどの近距離にあるため、惑星の大気の最上層は摂氏約2500度にまで熱せられている。

「WASP-121b」の想像図
「WASP-121b」(右)の想像図(提供:Illustration: NASA, ESA, and G. Bacon (STScI)、Science: NASA, ESA, and T. Evans (University of Exeter))

恒星の光は惑星大気の奥深くまで到達し、ガスの温度を上昇させ、そのガスは宇宙空間に赤外線の形で熱を放射する。もし大気の一番上に温度の低い水蒸気があると、水分子によって、特定の波長の光が宇宙空間へ逃げ出すのが妨げられる。しかし、水分子の温度が高ければ、ガスと同じ波長の赤外線が発せられる。「水からの放射が見られるということは、高度と共に温度が上昇していることを意味しています」(NASA ジェット推進研究所 Tiffany Katariaさん)。

太陽系の惑星の場合、成層圏内の温度上昇は摂氏56度ほどだが、WASP-121bの場合は560度も上昇している。どのような化学物質によるメカニズムかはまだわかっていないが、褐色矮星によく見られる酸化バナジウムと酸化チタンが候補に挙げられている。これらの化合物が気体の状態である温度が必要なことから、ホットジュピターの中でも特に温度の高い系外惑星にしか存在しないと予測されている。「この超高温の系外惑星は、大気モデルの一つの基準となるでしょう」(NASAゴダード宇宙センター Hannah Wakefordさん)。