【2017年10月13日 JAXA宇宙科学研究所/国立天文台】

太陽の表面温度は摂氏約5500度だが、その外側に広がる希薄な大気であるコロナは数百万度もの高温となっている。なぜこのような高温コロナが存在しているのか、どのように加熱されているのかは謎で、「コロナ加熱問題」として知られている。

コロナ加熱のメカニズムにはいくつか仮説があるが、中でも有力なのは、表面での微小な爆発現象である「ナノフレア」が頻繁に発生することでコロナに熱が供給され、高温が保たれているとする考え方だ。ナノフレアが発生している場合、コロナよりもさらに熱い1000万度以上の超高温プラズマが存在することがシミュレーションで予言されていたが、これまでその存在を確実に示した観測はなかった。

JAXA宇宙科学研究所の石川真之介さんたちの研究チームは、国際共同プロジェクトの太陽X線観測ロケット「FOXSI(Focusing Optics X-ray Solar Imager)」と太陽観測衛星「ひので」によって太陽の温度構造を調べた。FOXSIは1000万度以上の超高温プラズマ、「ひので」に搭載されたX線観測装置は数百万度のプラズマにそれぞれ高い感度を持つので、両機が同時に観測を行うことで対象領域の温度構造が詳しくわかる。

2014年12月に行われたFOXSI-2による6分間の観測では、太陽活動領域でフレアによるX線の増光現象が発生していない状態で、有意な硬X線放射が検出された。この時の「ひので」のデータを解析しコロナの温度構造を高精度で見積もったところ、数百万度のコロナの主成分に対してごくわずかながら、1000万度以上の超高温成分も存在することが明らかになった。一見太陽フレアが起こっていないように見える領域でもナノフレアが発生しており、太陽に常に超高温プラズマが存在することを示している。

FOXSI-2と「ひので」の観測データ、ナノフレアのイメージ
(左下)「ひので」がX線でとらえた太陽像に、FOXSI-2の観測による等高線データ(水色)を重ねたもの。黄色い枠部分は活動領域12234。(左上)活動領域12234の観測データ。「ひので」データ(上)でフレアによるX線増光は見られないが、FOXSIデータでは超高温プラズマの存在が示されている。横軸は時間経過。(右上)ナノフレアのイメージ図(提供:ISAS/JAXA、UC Berkeley、NASA、NAOJ)

今回の結果は、コロナ加熱を説明する理論モデルに大きな制限を与えるものだ。今後、より多くの領域の観測や長時間の観測により、ナノフレアによるコロナ加熱のメカニズムがさらに解明されると期待される。