【2018年4月2日 NASA】

米・ハワイのパンスターズ1望遠鏡で発見された「オウムアムア」は、太陽系外からやってきた観測史上初の恒星間天体と考えられている。昨年9月19日に時速約31万5000kmという猛烈な速度で太陽からわずか0.25天文単位(約3700万km)の距離を通過した。現在は太陽から遠ざかりつつあり、今年5月には木星軌道を越え、そのまま太陽系を脱出する見込みだ。

通常、太陽系の中をオウムアムアほどの高速で移動する天体といえば、太陽系の外縁部からやってきて太陽に向かって落ちてくる彗星が挙げられる。彗星は、大きさが家一軒ほどから幅数kmくらいまでの氷天体で、太陽に接近すると暖められてガスや塵を放出する。しかしオウムアムアにはそのような現象が見られなかったため、その正体は乾燥した小惑星だと判断する研究者もいた。

惑星や微惑星、彗星や小惑星などの小天体は、若い恒星を取り巻く「原始惑星系円盤」の中でガス・塵・氷などの物質が集積して作られる。中心星から遠い場所では氷を材料として彗星が作られる。一方、中心星に近い高温の領域で生まれる小天体は表面に氷の層を持てないため、岩石質の小惑星となる。惑星系の中で小惑星が作られる場所は、彗星が作られる領域よりはかなり小さい。そのため、仏・ボルドー大学のSean Raymondさんたちの研究チームでは、オウムアムアの正体は岩石質の小惑星ではなく彗星に近いのではないかと考えている。

「惑星系の中心近くで作られる小惑星は中心星との重力的な結びつきが強いため、惑星系の外に放り出されるのは彗星より難しいことになります。したがって、オウムアムアが小惑星として誕生したとすると、生まれ故郷の惑星系から放り出されることは考えにくいのです」(Raymondさん)。

「惑星形成論に関する理解が正しければ、オウムアムアのように惑星系から放り出される物質は氷天体の方が圧倒的に多いはずです。もしも、惑星系から放出された天体の観測例で岩石質のものが大半を占めるようであれば、現状の惑星形成モデルには何か間違いがあることになります」(米・メリーランド大学 Thomas Barclayさん)。

彼らのこうした見解については、オウムアムアの色の観測からも一部確認されている(参照:「オウムアムアは『厚い有機物で覆われた雪玉』か」)。他の研究でも、太陽系のような恒星系は小惑星よりも彗星を放出する可能性が高いことが指摘されている(参照:「オウムアムアの故郷は連星系」)。

「オウムアムア」の想像図
「オウムアムア」の想像図(提供:ESO / M. Kornmesser)

また、オウムアムアのような恒星間天体のほとんどは巨大ガス惑星を持つ惑星系を故郷としているのではないかと考えられている。強い重力を及ぼす巨大惑星があれば、微惑星を恒星間空間へと放り出すのが容易になるからだ。特に、不安定な軌道を持つ巨大ガス惑星は、軌道が惑星系の中をあちこち移動することでたくさんの物質と接近遭遇するため、非常に効率的に小天体を放出する役割を果たす。巨大惑星が作られなかった惑星系では小天体が放出されることはほとんどない。

Raymondさんたちは、以前に行ったシミュレーション結果を用いて、惑星系から放り出される天体のうち0.1〜1%程度のものは、巨大ガス惑星のかなり近くまで接近遭遇するためにバラバラに分裂してから放出されることを示した。また彼らは、オウムアムアの葉巻のような細長い姿も、放り出される前に巨大惑星と接近したために惑星の強い潮汐力によって引き伸ばされたものだと説明できるとしている。

彼らはさらに、一つの恒星系で惑星が形成される間に地球質量の2〜3倍の物質が惑星系の外に放出されるという仮定に基づいて、我々人類が観測できる恒星間天体の数を計算した。彼らの計算によれば、巨大惑星との接近で一部の微惑星が破壊されてから放出されるという効果を盛り込むと、実際にパンスターズ・プロジェクトのサーベイ観測が始まってからオウムアムアが見つかるまでの期間から導かれた恒星間天体の観測頻度をより矛盾なく説明できるようになるという。

現在チリで建設が進められている「大型シノプティック・サーベイ望遠鏡(Large Synoptic Survey Telescope; LSST)」などを用いた観測によって、今後数多くの恒星間天体が発見され、太陽系外の惑星系で起こる惑星や微惑星の形成について統計的な研究も可能になることが期待される。

「オウムアムアは太陽系から去っていきますが、系外惑星や第二の地球探しについてのヒントを私たちに残してくれています」(NASA ゴダード宇宙飛行センター Elisa Quintanaさん)。