【2018年10月18日 国際電波天文学研究センター】

高速電波バースト(Fast Radio Burst; FRB)は、宇宙のある方向から突発的に電波が放射される現象だ。継続時間はわずか数ミリ秒で、全天のあらゆる方角で発生する。太陽が80年かかって放出するのと同じ量の莫大なエネルギーが一度のFRBで放出されるが、これまでに34件しか報告されておらず、その正体はわかっていない。

豪・スウィンバーン工科大学のRyan Shannonさんたちの研究チームは、オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)の電波望遠鏡アレイ「オーストラリアSKAパスファインダー(ASKAP)」を使って2017年1月から観測を行い、2018年2月までに20件ものFRBを新たに検出した。研究チームが検出した事象には、これまでで最も地球に近いFRBや最も明るいFRBも含まれている。

「私たちの観測によって、2007年に初めてFRBが検出されて以降の全世界での検出数が約2倍に増えました。ASKAPの新技術を使うことで、FRBが私たちの天の川銀河の近くではなく、ずっと離れた宇宙で起こっている現象であることも示されました」(Shannonさん)。

FRBを観測するASKAPのイラスト
FRBを観測するASKAPのイラスト(提供:OzGrav, Swinburne University of Technology)

FRBの電波は数十億年にわたって宇宙空間を旅しながら、ときどきガス雲の中を通過する。「ガス雲を通過するたびに、バーストの電波に含まれる様々な波長域の電波が異なる割合で減速します。このため、バーストの電波は波長ごとにわずかに異なる時刻に地球に到着します。波長ごとの到着時刻を計ることで、バーストが地球へやってくるまでにどれくらいの量の物質を通過してきたのかがわかります」(豪・国際電波天文学研究センター Jean-Pierre Macquartさん)

Shannonさんたちの研究によって、FRBがはるか遠くの宇宙からやってくることが確実になった。今後は銀河間空間に存在していると考えられているダークバリオンの検出にもFRBを利用できるだろう。

(Vimeo動画)

遠方の銀河を起源とするFRBが地球へ到達してASKAPに観測されるまでを描いた動画(提供:ICRAR)

今回の観測に用いられたASKAPは、2020年代に観測開始予定で現在建設が進められている世界最大の電波望遠鏡アレイ「スクエア・キロメートル・アレイ(Square Kilometer Array, SKA)」の先行プロジェクトとして、西オーストラリアのマーチソン電波天文台に設置されている。口径12mの電波望遠鏡を直径6kmの範囲に36基設置した電波望遠鏡アレイだ。

CSIROのKeith Bannisterさんは、ASKAPでこれほど多くのFRBを検出できたのには2つの要因があると述べている。「ASKAPの個々の望遠鏡は30平方度という非常に広い視野を持っています。これは満月100個分に相当する広さです。さらに、それぞれのアンテナで空の異なる部分を同時観測するという斬新な方法を採用することで、240平方度、つまり満月の約1000倍の領域を一度に観測できるようにしました。ASKAPはFRBの観測に非常に適しています」(Bannisterさん)

FRBが宇宙の非常に遠いところからやってくることはわかったものの、発生のメカニズムやどの銀河を起源としているのかはまだわかっていない。研究チームの次の挑戦は、バーストの正確な位置を明らかにすることだ。「今後は、1度の1000分の1以下という精度でバーストの位置を決定できるようになるでしょう。これは10m離れたところから人間の髪の毛1本の幅を見ることに匹敵します。個々のバーストを特定の銀河に結びつけるには十分な分解能です」(Shannonさん)。

将来、SKAが観測を開始してより多くのFRBが観測されるようになれば、FRBの起源である初期宇宙についても詳しく研究できると期待されている。