【2018年12月11日 Chandra X-ray Observatory】

太陽のような軽い恒星は一生の最期に白色矮星という天体になる。白色矮星は地球ほどの大きさの領域に太陽ほどの質量が詰め込まれた、非常に高密度で重力の強い天体だ。多くの場合は別の星と連星系をなしていて、白色矮星には相手の星から物質が流れ込んでいる。

白色矮星と赤色巨星の連星系
白色矮星(左と赤色巨星の連星系の想像図(提供:NASA/CXC/Texas Tech/T. Maccarone Illustration: NASA/CXC/M. Weiss)

2016年、超新星など突然明るくなる天体を世界中のネットワークで観測しているASASSNチームが、地球から約20万光年彼方の小マゼラン雲で発生した突発現象「ASASSN-16oh」をとらえた。この天体をNASAのX線宇宙望遠鏡「チャンドラ」と ガンマ線バースト観測衛星「ニール・ゲーレルス・スウィフト」で調べたところ、明るいX線バーストが検出され、そのX線の特性からASASSN-16ohが白色矮星の連星系であることがわかった。

ASASSN-16ohからは、数十万度の温度のガスに由来する軟X線(低エネルギーのX線)が検出された。とくに、そのX線放射が通常の恒星大気からの軟X線に比べてはるかに明るいものであったことから、ASASSN-16ohは「超軟X線源」に分類されることになった。

白色矮星から超軟X線が放射されるメカニズムはこれまで、連星系の相手の星から白色矮星の表面に物質が降り積もり、そこで核融合反応が起こるというものが考えられてきた。この場合、X線放射は白色矮星全体からやってくる。「これまでに知られてきたすべての超軟X線は、白色矮星の表面における核融合反応に伴うものでした」(米・テキサス・テック大学 Tom Maccaroneさん)。

しかし、チャンドラの観測によって、ASASSN-16ohからの超軟X線は白色矮星の表面にある小さな領域から放射されていることが示された。また、可視光線での明るさは、表面で核融合反応が進んでいることが知られる他の白色矮星の1%しかないことも示され、核融合の場合のように急激に増光することもなかった。

こうした結果から、ASASSN-16ohは核融合ではない現象で超軟X線を放射していると考えられている。白色矮星が伴星である赤色巨星からガスを引き出すという点では同じだが、そのガスは白色矮星を囲む大きな円盤へと降り積もる。ガスは渦を巻いて白色矮星へと落ちていきながら高温になり、円盤と星が接する帯状の領域に沿って軟X線が放射される。円盤を通じて落ちていくガスの量は大幅に変化し、急速に増えるとX線の強度も強くなって、超軟X線となるという。「今回の研究から、超軟X線放射が核融合反応と伴星からの物質降着という2つの異なる方法で、それぞれ発生することがわかりました」(米・ピッツバーグ大学 Thomas Nelsonさん)。

ASASSN-16ohでは過去の観測でとらえられたどの連星系よりも多くの量の物質流入が起こっていて、最も速く太っていく白色矮星の可能性がある。白色矮星の質量が増え続けて限界に達すればIa型超新星爆発が起こるが、ASASSN-16ohの質量はすでに異常に大きいことが示唆されている。天文学的な時間スケールにおいて近い将来、ASASSN-16ohは超新星爆発を起こすかもしれない。