【2020年6月16日 国立天文台 野辺山宇宙電波観測所】

渦巻銀河の中には、中心部に棒状の構造を持つ「棒渦巻銀河」と呼ばれるタイプの天体があり、天の川銀河もこの種の銀河に分類されている。棒の部分は物質が移動する道のような役割を果たすなど、銀河そのものの進化に影響すると考えられてきた。

NGC 1300
棒渦巻銀河の例、エリダヌス座のNGC 1300(撮影:Kamui γさん。画像クリックで天体写真ギャラリーのページへ)

国立天文台野辺山宇宙電波観測所では2014年から2017年にかけて、45m電波望遠鏡による観測データを次世代の研究の土台として残す「レガシープロジェクト」を実施した。その一つ「近傍銀河の複数輝線による分子ガス撮像観測(CO Multi-line Imaging of Nearby Galaxies = COMING)」プロジェクトのDragan Salakさんたちの研究チームは、天の川銀河の近傍にある20個の渦巻銀河(うち7個が棒渦巻銀河)を45m電波望遠鏡で観測し、一酸化炭素分子のガスが発する電波を調べた。

私たちに近づく方向へ動くガスが発する電波の波長は短くなり、遠ざかるガスからの波長は長くなるので、波長の変化を調べると銀河の中で分子ガスがどのように移動しているかがわかる。Salakさんたちが、銀河中心の周りを回る円運動をしているガスと、内向き・外向きに流れているガスの割合を調べたところ、棒渦巻銀河の中心寄り、すなわち棒の部分では円運動の割合が下がることが判明した。棒状構造の中でガスが内向きに流れているという従来の予測と一致する結果だ。

銀河の星の分布と一酸化炭素の電波輝線の観測例
(左)観測例。上段は波長1.2μmの電波で観測した星の分布を擬似カラーで表した画像に一酸化炭素が発する電波の強度を表す等高線を重ねたもの。下段は一酸化炭素ガスの速度を表し、私たちに近付いている成分を青、遠ざかっている成分を赤で表現している(提供:2MASS J-band, Jarrett et al. 2003、COMINGプロジェクト)
(右)野辺山宇宙電波観測所の45m電波望遠鏡(撮影:Dragan Salak)

また、観測結果からは棒が銀河全体とともに回転する速度も求めることができ、棒が発達した棒渦巻銀河ほどゆっくり回転していることが判明した。このことから時間とともに棒状構造が成長し、それに伴って銀河の回転にブレーキがかかることがわかるが、これも棒渦巻銀河の進化に関する理論と一致する結果となった。

渦巻銀河の棒状構造のパターン速度と半径の関係のグラフ
渦巻銀河の棒状構造のパターン速度と半径の関係のグラフ。棒状構造が大きいほど回転が遅くなることがわかる