【2020年7月2日 アリゾナ大学】

超大質量ブラックホールが生み出す莫大なエネルギーによって、はるか遠方でも観測できるほど輝く天体であるクエーサーが、宇宙の歴史でいつ出現したかというのは、多くの天文学者が解き明かそうとしている疑問である。

米・アリゾナ大学スチュワード天文台のJinyi Yangさんたちの研究チームは、米・ハワイ島マウナケア山にあるイギリス赤外線望遠鏡やマウイ島ハレアカラ山頂の「パンスターズ1望遠鏡」などのサーベイ観測データの中から、宇宙の幼年期に輝いていたクエーサーを探し、しし座の方向に候補天体を見つけた。

この天体をマウナケアのケック天文台やジェミニ天文台の望遠鏡で分光観測したところ、確かにクエーサーであることがわかった。クエーサーの正式な符号は「J100758.264+211529.207」だが、ハワイで発見されたことに敬意を表し、クエーサーとして初めてハワイ先住民に由来する名前がつけられた。

ハワイ大学イミロア天文学センターのハワイ語命名プログラムが主催したワークショップで、ハワイ語学校の教師30名が選んだ名前は「ポニウアーエナ(Pōniuāʻena)」。「輝きに囲まれた、見えざる回る創造の源」という意味だ。クエーサーは超大質量ブラックホールへ落下する物質が回転しながら円盤を形成し、加熱されることで輝いているのだから、まさに名は体を表している。

ポニウアーエナの想像図
クエーサー「ポニウアーエナ」の想像図(提供:International Gemini Observatory/NOIRLab/NSF/AURA/P. Marenfeld、以下同)

ポニウアーエナまでの距離は130億光年以上であり、ビッグバンからわずか7億年後の宇宙に相当する。2018年に見つかった最も遠いクエーサー「J1342+0928」との差は200万光年に過ぎない。それでいてポニウアーエナが抱える超大質量ブラックホールは太陽質量の約15億倍と、J1342+0928のものに比べて2倍ほど重い。

ブラックホールは太陽の数十倍の質量を持つ恒星が寿命を迎えて超新星爆発を起こすことによっても誕生するが、その程度の小さなブラックホールがポニウアーエナの規模まで成長するには、7億年という宇宙年齢はあまりにも若い。研究チームによれば、ポニウアーエナの「種」となったブラックホールはビッグバンの1億年後の時点で太陽1万個分もの質量を有していたと考えられるが、こう想定すること自体が従来の常識から見れば大きな挑戦だという。

ポニウアーエナの「種」と成長後の姿
(左)ビッグバンの1億年後に存在した太陽1万個分のブラックホール、(右)ビッグバンの約7億年後に太陽質量の10億倍ほどまで成長したポニウアーエナ。共に想像にもとづくイラスト

「ポニウアーエナのような天体の観測は、初期宇宙でどんなことが起こっていたのかをより良く知る助けとなります」(アリゾナ大学 Xiaohui Fanさん)。