【2021年3月22日 VSOLJニュース】

著者:前原裕之さん(国立天文台)

三重県亀山市の中村祐二さんによって、カシオペヤ座の中に明るい新星が発見されました。

中村さんは3月18.4236日(世界時、以下同。日本時では19時10分ごろ)に焦点距離135mmのレンズとCCDカメラを用いて撮影した画像から、カシオペヤ座の中に9.6等の新天体を発見しました。発見の報告を受けて行われた詳しい観測によると、この天体の正確な位置は以下のとおりで、散開星団M52の約0.4度南です。


赤経 23h24m47.74s
赤緯 +61°11′14.8″(2000年分点)

発見画像
(左)発見画像、(右)発見前(14日撮影)画像(撮影:中村さん)

カシオペヤ座の新星の位置
カシオペヤ座の新星の位置。画像クリックで星図拡大(「ステラナビゲータ」で星図作成)

発見から0.4日後の3月18.8日には岡山県倉敷市の大島修さんの30cm望遠鏡や、京都大学岡山天文台の3.8mせいめい望遠鏡によって天体の分光観測が行われ、スペクトルに強い水素のバルマー系列や中性ヘリウムの輝線の他、電離したヘリウムや窒素などの輝線も見られることがわかりました。また、中性ヘリウムの輝線はP Cygプロファイルを示し、その吸収成分は輝線成分に対して秒速1600kmほど青方偏移していることもわかりました。このようなスペクトルの特徴から、この天体が極大光度に達する前の古典新星であることが判明しました。

たいへん興味深いことに、この新星の位置は15等級の明るさのおおぐま座W型変光星と分類されていた青い色の天体CzeV3217の位置と一致します。また、位置天文衛星「ガイア」のデータによると、この天体までの距離はおよそ5500光年で、明るくなる前の絶対等級や色、変光の周期は、白色矮星とロッシュローブを満たす低温の主系列星からなる激変星の一種で、新星類似型変光星(nova-like variable)と呼ばれる天体のものと矛盾しません。こうした爆発前の天体の性質から、この天体はCzeV3217で起こった新星爆発によって急激に明るくなったものと考えられます。

新星は発見後も増光を続け、発見翌日の3月19日夕方には8等ほど、20日早朝には7等台まで明るくなったことが報告されました。新星までの距離と典型的な新星の極大時の絶対等級から、この新星はさらに明るくなる可能性もあり、今後の明るさの変化が注目されます。

中村さんの新星発見は2019年9月のさそり座新星以来です。