【2021年4月23日 アルマ望遠鏡】

138億年前に宇宙が誕生してから10億年前後という早い時期に存在した銀河は、観測技術の進歩にともなって次々と見つかっている。しかし、見つけやすい銀河というのは大きく明るいものであり、そのように成長した銀河は宇宙初期ではあまり多くなかったと考えられる。初期宇宙の典型的な銀河は、現在の観測技術でとらえられないほど暗くて小さいが、銀河進化の全体像を知るうえでは、こうした銀河の姿をこそ何とかして明らかにしなければならない。

そこで、暗い銀河を研究するため、重力レンズ効果で拡大された宇宙初期の銀河をアルマ望遠鏡によって多数探し出すという、大規模掃天観測計画(ALMA Lensing Cluster Survey; ALCS)が実施された。地球と初期宇宙の小銀河との間に銀河団のような大質量の天体があると、重力レンズ効果によって銀河の光が増光されたり、銀河の像が複数になったり拡大して見えたりするおかげで、暗く小さい銀河の観測も可能になる。

ALCSの研究チームは95時間かけて観測を行い、重力レンズを引き起こす銀河団33個の中心領域をくまなく調べたところ、うさぎ座の方向にある、太陽の1000兆個倍の質量を持つ銀河団「RXCJ0600-2007」の重力レンズ効果を受けた、遠方銀河「RXCJ0600-z6」を発見した。さらに、アルマ望遠鏡とジェミニ望遠鏡の観測データから、この銀河が129億光年彼方に存在している(129億年かけて届いた光である)ことも明らかになった。

RXCJ0600-z6
ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した銀河団「RXCJ0600-2007」の画像に、アルマ望遠鏡で観測した「RXCJ0600-z6」の重力レンズ像を赤色で合成。銀河団による重力レンズ効果でRXCJ0600-z6の像が増光・拡大され、3つ以上に分かれて見えている(提供:ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), Fujimoto et al., NASA/ESA Hubble Space Telescope、以下同)

重力レンズ効果を生み出している銀河団の質量分布を精密に計測すると、重力レンズ効果を受けていない、拡大前の銀河の姿を復元することができる。研究チームは、ハッブル宇宙望遠鏡の画像とヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡VLTの分光データ、理論モデルを組み合わせて、RXCJ0600-z6の実際の姿を復元した。その結果、銀河の質量は太陽の約20億〜30億倍程度であることがわかった。これは天の川銀河の約100分の1という小ささである。また、銀河の内部構造は約1000光年という高い分解能で描き出されている。

復元されたRXCJ0600-z6の姿
復元されたRXCJ0600-z6の姿。赤色の等高線はアルマ望遠鏡でとらえた炭素イオンが放つ電波の広がり、青色の等高線はハッブル宇宙望遠鏡がとらえた光の広がりを現す。一部(左上の囲み図)は重力レンズでさらに大きく拡大されていた

今回の研究では、RXCJ0600-z6が回転で支えられていることもわかっている。宇宙誕生後9億年という早い時代に小さな銀河が回転により支えられていると明らかになったのは、RXCJ0600-z6が初めての例だ。従来、誕生直後の銀河に含まれるガスの動きはランダムで、整然と回転している成熟した現在の渦巻銀河とは異なると考えられてきたが、こうした銀河形成理論に再考を迫る重要な結果である。