【2021年4月30日 立命館大学】

隕石のうち「炭素質コンドライト」に分類されるものには、有機物だけでなく水も含まれている。これまで、水は鉱物の結晶構造中にヒドロキシ基(水酸基)や水分子として発見されていたが、液体としては見つかっていなかった。

立命館大学の𡈽山明さんたちの研究グループは、大型放射光施設SPring-8を用いた新しい手法での分析により、炭素質コンドライトであるサッターズミル隕石の鉱物中に液体の水を探した。この隕石は2012年2月に米・カリフォルニア州に落下したものだ。

𡈽山さんたちは方解石と呼ばれる鉱物に着目し、隕石の薄片中から方解石の粒子を探し出した。方解石は隕石の母天体である小惑星の内部で水溶液から析出すると考えられており、方解石が成長するときに取り込んだ当時の水が、隕石中の方解石の粒子中に包有物として残っている可能性があるためだ。

サッターズミル隕石の顕微鏡画像
サッターズミル隕石中の方解石。(A)走査型電子顕微鏡での画像、(B)X線ナノCTでの画像、(C)方解石中のナノメートル(nm)サイズの包有物が多数存在する領域の透過型電子顕微鏡での画像、(D)nmサイズの二酸化炭素が豊富な包有物(黄色の矢印)の透過型電子顕微鏡での画像、(E)-100℃での(D)の領域を含む電子線回折図形、(F)20℃での(E)の電子線回折図形(提供:プレスリリースより、以下同)

方解石の粒子を超高空間分解能で見たところ、数μmよりも大きな包有物が多数見つかった。この中身は空隙だったが、これは、かつては存在していた水が46億年という長い間のどこかで逃げてしまったことを物語っていると考えられる。

一方、方解石中にはより小さな、ナノメートルサイズの包有物が無数に存在していることもわかった。さらにこの中身を調査したところ、低温(-100℃)で見えていたものが常温(20℃)で消えることが確かめられた。これは、包有物中に純粋な液体の水ではなく、二酸化炭素の氷あるいは二酸化炭素ハイドレートの氷が含まれていることを示唆している。このような鉱物中で二酸化炭素を含む液体の水が発見されたのは世界で初めてのことだ。

流体に含まれる二酸化炭素の量は15%以上だ。このような多量の二酸化炭素を含む流体が存在できる条件から、母天体の直径は約100kmよりも大きなものだったとみられている。

今回の結果は、サッターズミル隕石の母天体が、二酸化炭素のスノーライン(物質が氷として存在するようになる、太陽からの距離の境界)よりも外側の低温領域で、二酸化炭素を含む氷とともに形成されたことを意味する。一方で、今回は一酸化炭素の氷は見つからなかったため、一酸化炭素のスノーラインより内側で形成されたということでもある。

サッターズミル隕石の母天体の形成過程とスノーライン
サッターズミル隕石の母天体の形成領域と水、二酸化炭素、一酸化炭素のスノーラインを示した図。横軸が初期太陽系の進化による時間経過、縦軸が太陽からの距離を表す

この領域は木星の形成領域よりも外側に位置することから、サッターズミル隕石の母天体は太陽系形成時に木星の外側ででき、その後の木星の軌道変化に伴って現在の小惑星帯に移動したと考えられる。これは、最近考えられている太陽系形成モデルとも一致しており、今回の成果はこのモデルの物質科学的な証拠ともなる。