【2021年6月9日 JAXA宇宙科学研究所】

太陽のような恒星は一生の終末期に外層を失い、中心核だけが残って白色矮星という高密度天体になる。白色矮星が別の星と連星を成していると、伴星からガスを受け取った白色矮星は質量が増えていき、チャンドラセカール限界質量(白色矮星の限界質量、太陽の約1.4倍)に近づくとIa型超新星として爆発する。

Ia型超新星はどれも真の明るさが同じとされ、これを見かけの明るさと比較して距離を測ることができるので、「宇宙のものさし(標準光源)」として利用されている。しかし、質量や中心密度が大きく異なる多種多様な白色矮星がIa型超新星を起こす可能性が指摘されており、Ia型超新星の「ものさし」としての信頼性を再検証する必要がある。

東京大学の大城勇憲さんたちの研究チームは、わし座の方向に存在するIa型超新星の残骸「3C 397」に着目し、爆発前の白色矮星の特性を調べた。この超新星残骸の元になった爆発前の白色矮星の質量はチャンドラセカール限界質量に近かったことが、過去にX線天文衛星「すざく」の観測で指摘されている。

大城さんたちがヨーロッパ宇宙機関のX線天文衛星「XMMニュートン」による観測で残骸の形状や元素分布を詳しく調べたところ、鉄やニッケルに対するチタンやクロムの質量比が異常に高い領域が発見された。Ia型超新星やその残骸からチタンが検出されたのは初めてのことだ。

超新星残骸3C 397とX線スペクトル
(左)超新星残骸3C 397(擬似カラー)。残骸の南部にクロムが過剰な(青色が濃い)領域が確認できる。(右)左図の白円内から抽出したX線スペクトル。Ia型超新星の主要生成元素である鉄に加えて、チタン、クロム、マンガン、ニッケルが検出されている(提供:ISAS/JAXA, Ohshiro et al.)

この結果を超新星元素合成の数値計算モデルと比較したところ、観測された元素組成比は、チャンドラセカール限界質量に近い質量を持つ白色矮星の中でも、特に高密度の中心領域でのみ実現することがわかった。チャンドラセカール限界質量に迫った標準的な白色矮星の爆発時の中心密度は、2×10^9g/cm^3程度と考えられているが、3C 397を生み出した白色矮星の中心密度はこれよりも2〜3倍も高い。

元素組成比の測定結果と、元素合成計算モデルの比較
ニッケルに対するチタンの質量比の計算結果。帯の部分が今回観測された比を表し、3C 397を生み出した白色矮星の中心密度が5×10^9g/cm^3であることを示す(提供:Ohshiro et al. 2021より改変)

3C 397で観測されたチタンやクロムの高い組成比はIa型超新星の多様性を示すものだ。他のIa型超新星残骸の爆発前の白色矮星の質量や中心密度を今回と同じ手法で調べることで、「ものさし」として確実に利用できるIa型超新星の特徴が明らかになるだろう。これにより、遠方銀河の距離や宇宙膨張の歴史を精緻に調べることができると期待される。

さらに今回の成果は、太陽系の形成過程を知る上でも重要な意義を持つ。隕石の一種「炭素質コンドライト」は46億年前の太陽系形成期に原始惑星系円盤の外縁部で作られ、その後太陽系内縁部まで移動したと考えられているが、このタイプの隕石はチタン50やクロム54の(チタン48やクロム52に対する)同位体比が高く、その起源候補の一つとして高密度の白色矮星によるIa型超新星が提案されていた。

こうした高密度の白色矮星の存在について3C 397の観測から初の実証が得られたことは、太陽系形成期に近傍で3C 397と同タイプのIa型超新星が起こった可能性を示唆するものだ。「はやぶさ2」が持ち帰ったリュウグウのサンプルでチタン50などの同位体比が詳しく調べられれば、その母天体が太陽系のどのあたりで作られたかが明らかになるかもしれない。