【2021年8月31日 東京工業大学地球生命研究所】

地球などの岩石惑星は、表面を覆う地殻の下に岩石質のマントルがあり、中心部には鉄を主成分とする金属の核がある。核は液体の外核と固体の内核に分かれていて、外核の液体金属が対流することで磁場が生じる。こうして生み出された惑星の磁場は、太陽からの放射線が大気に降り注ぐのを防ぐバリアとなるため、磁場の有無はその惑星が生命に適した環境になるかどうかを決める重要な要素になる。

東京工業大学地球生命研究所(ELSI)のIrene Bonatiさんたちの研究グループは、原始惑星の質量や鉄の含有量、核の化学組成を様々に変えたモデルを使い、どのような条件の惑星で磁場が生じるのか、またその磁場の寿命はどのくらいになるのかを計算機シミュレーションで調べた。

誕生直後の原始惑星は、大量の微惑星が衝突するエネルギーによって表面がどろどろに溶けた「マグマオーシャン」という状態になると考えられている。Bonatiさんたちはこのマグマオーシャン時代の終わりからシミュレーションをスタートし、惑星内部の温度や磁場の進化を追った。

研究の結果、たいていのケースでは初期の段階から固体の内核ができるが、でき上がる内核の比率は、惑星の質量が大きくても小さくてもあまり変わらず、むしろ核とマントルの境目の温度と、核の化学組成によって変わることがわかった。

核とマントルの境界の温度は、惑星全体での鉄の含有量と、その鉄がマントルと核にどう分配されているかによって変わる。また、核の化学組成は、酸素・ケイ素・硫黄・炭素・水素などの軽元素が核にどのくらい含まれているかで変わる。核に軽元素が多く含まれていると、核の物質はより低い温度で溶けて液体になる。これらの効果を総合すると、鉄を多く含み、マントルに含まれる鉄の比率が高い場合、そして核に含まれる軽元素が少ない場合に、大きな内核が作られることが明らかになった。

惑星内部の構造
(左)岩石惑星の内部のイラスト。内側から、固体の内核(濃い灰色)、液体の外核(灰色)、および粘性の高い下部マントル(オレンジ色)に分かれている。内核が固まると潜熱や重力エネルギーが解放されて外核に熱を放出する。外核は冷えつつあるマントルへと熱を放出する。これらの熱流が外核の対流を生み出し、惑星磁場の源になる。(右)原始惑星の内部構造。左上が基準となるシミュレーション条件(マントルに含まれる鉄が0、核の軽元素量が0、質量が1地球質量)でできる内部構造で、鉄の総量を20%から80%まで4通りに変えた場合の結果を示す。右上・右下・左下はそれぞれ、惑星質量を2地球質量に増やした場合、核の軽元素を5%に増やした場合、マントルの鉄の比率を10%に増やした場合の結果(提供:Irene Bonati、以下同)

これらの条件は、惑星誕生後に核がどう進化し、惑星磁場がどのくらいの寿命を持つかを考える場合にも重要だ。研究結果によると、惑星全体の鉄の含有量が非常に高いかマントルが鉄を多く含む惑星では、磁場の寿命が短い傾向がみられた。鉄が多いと核が完全に固体のみとなって液体の外核ができなかったり、核からマントルへ出ていく熱が減って外核の対流が起こらなくなるためだ。

質量とバルク鉄含有量が異なる惑星の磁場の寿命
惑星の質量(横軸)と鉄の総量(縦軸)を変えた場合の惑星磁場の寿命(等高線)を示した図。左は核に軽元素なし、マントルに鉄なしの惑星の場合。右上はマントルの鉄を10%に増やした場合、右下は核の軽元素を5%に増やした場合の結果。マントルの鉄を増やすと磁場は最長でも25億年程度で消えてしまう。核に軽元素が含まれていると、45億年以上にわたって惑星磁場が保たれる

今回の研究は、惑星の核の構造や磁場が様々な条件にどう影響を受けるかを理解するのに役立つだけでなく、私たちの太陽系の岩石惑星の進化についても手がかりを提供する。たとえば、現在の火星には磁場が存在しないが、これはマントルに含まれる鉄の量が多いせいかもしれない。

さらに、こうした研究を積み重ねれば、質量とサイズくらいしかわからない系外惑星についても、将来的には惑星内部の情報を得られることが期待できる。惑星磁場と大気の相互作用についての研究が進み、大気の観測データから惑星磁場の情報を得られるようになれば、そこから系外惑星の内部の特性を明らかにできるようになるかもしれない。