【2021年8月30日 佐藤幹哉さん】

国内では8年に一度の絶好の条件となり、期待されたペルセウス座流星群。残念ながら北海道の一部などを除いて悪天候となり、見られなかった人も多いことでしょう。このペルセウス座流星群、例年の極大から約1日半後に予想外の極大が観測され、世界中で話題となりました。

ペルセウス座流星群
ペルセウス座流星群(撮影:Inehachiさん)。画像クリックでペルセウス座流星群の天体写真ギャラリーへ

例年のペルセウス座流星群は、太陽黄経の140.0度付近で極大を迎えます。これを日時で表すと、今年の場合は8月13日4時過ぎ(日本時、以下同)に当たっていました。ところが、これより1日半過ぎた8月14日17時台に、例年の極大規模の2倍以上という強い活動が観測されたのです。

国際天文学連合(IAU)天文電報中央局発行の電子速報「CBET No. 5016」によると、アメリカのビデオ自動観測ネットワーク「CAMSテキサス」と「CAMSカリフォルニア」が、8月14日15時〜20時にペルセウス座流星群の突発出現(アウトバースト)を検出しました。極大は太陽黄経141.474度(±0.005度)で、これは8月14日17.2時(17時12分)に相当します。ローレンツ分布曲線にフィットさせた半値全幅(極大の半分となっていた継続時間)は0.08度(±0.01度)と報告しています。これは2時間弱に相当し、通常極大の継続時間(およそ1日弱)と比較してとても鋭いピークだったことがわかります。

世界の眼視観測データが集まる国際流星機構(IMO)によれば、Terrence Ross氏(米・テキサス州)が14日17時30〜37分の7分間に20個(HR=171)、Pierre Martin氏(カナダ・オンタリオ州)が14日17時10〜15分の5分間に22個(HR=264)を観測するなど、かなり活発だったもようです。しかし、突発出現の主な眼視観測データはこの2人によるもののみでした。事前に予測されていた極大時刻を過ぎていたことが原因かもしれません。

この極大は電波観測でもとらえられていました。世界的に流星電波観測のデータを集計している杉本弘文氏は、通常極大から大きく離れた時間帯に出現数が増加していることにいち早く気付き、日本流星研究会のメーリングリストに投稿しました。筆者も含め、このメールで気付いた日本の観測者や研究者も多かったようです。最終的には10分毎の集計によって、太陽黄経141.479度(14日17時15分)付近で突発出現の極大が起こり、眼視観測のZHRに相当する値は273(±28)にまで達していたことがわかりました。

電波観測のデータ
電波観測のデータ。上は約1週間、下は突発出現前後の約半日分(出典:杉本弘文さんのウェブページ)

実はこの突発現象、何と日本でも多くの人が目撃していました。今年のペルセウス座流星群では、極大のころの悪天候の影響もあって、米・ハワイ・マウナケアのすばる望遠鏡サイトから国立天文台と朝日新聞が共同配信している映像に注目が集まっていたからです。突発出現のころのハワイ(現地13日22時ごろ)は放射点の高度がとても低く、観測条件が悪かったものの、長径路の流星が続々と出現していく映像をリアルタイムで追うことができたのです。本来、日本では観測できない時間帯の現象であったにもかかわらず、それに気付いた人達がいたということに、新しい時代の到来を感じずにはいられません。

なお、このような短時間に出現数が増加する極大では、比較的濃いダスト・トレイルによる関与が考えられます。ペルセウス座流星群の母天体であるスイフト・タットル彗星(109P/Swift-Tuttle)は、紀元前69年の出現が記録されていて、過去約2000年の軌道が計算されています。この期間における彗星からのダスト放出に由来するダスト・トレイルの影響は筆者も既に調べており、今回の件の後にもさらに詳しくデータを計算し直したのですが、この突発出現を説明することはできませんでした。2000年以上前に放出されたダストや、一般的な条件とは別の変わった条件で放出されたダストなのかもしれません。今回の現象をきっかけに、よりいっそう、ペルセウス座流星群と母天体とを結びつける研究が深まることが期待されます。