【2021年10月1日 東北大学】

宇宙空間には、宇宙線(一次宇宙線)と呼ばれる高エネルギーの荷電粒子(陽子・ヘリウム原子核・電子など)とは別に、きわめてエネルギーの高いガンマ線やニュートリノが飛び交っていることが近年の観測で明らかになっている。

こうした「宇宙ガンマ線背景放射」は10^-3〜1GeVくらい、「宇宙背景ニュートリノ」は10^4〜10^7GeVくらいのエネルギーを持っているが、その起源天体や生成のメカニズムは現在も謎だ。

東北大学学際科学フロンティア研究所の木村成生さんたちの研究チームは、このガンマ線やニュートリノの発生源が、比較的暗い活動銀河の中心ブラックホールだという説を提唱した。

私たちの天の川銀河を含め、ほぼ全ての銀河の中心には超大質量ブラックホールが存在すると考えられている。天の川銀河の中心ブラックホールは現在は静かな状態にあるが、銀河によっては、中心部のガスが大量にブラックホールに落ち込んで莫大な重力エネルギーが解放され、様々な波長の電磁波を出して明るく輝く「活動銀河核 (AGN)」となっているものがある。クエーサーや電波銀河などがAGNの代表例だ。

木村さんたちは、AGNの中でもブラックホールに落ちるガスの量が少なめで暗い「低光度活動銀河核(LLAGN)」に着目し、過去に得られているX線のデータから、LLAGNのブラックホールを取り巻くプラズマの状態を推定した。

LLAGNの高温プラズマ
低光度活動銀河核でガンマ線やニュートリノが生み出されるしくみを示した図。ブラックホールの周囲で高温のプラズマが生成され、その中の熱的電子が軟ガンマ線を放射する。また、プラズマ中の陽子も乱流によって加速され、他の陽子や光子と衝突して高エネルギーのニュートリノを生み出す(提供:木村成生)

その結果、LLAGNのブラックホールの周りでは電子が約100億度まで加熱され、ガンマ線を効率よく放射することが理論的に示された。また、宇宙に存在するLLAGNの数を考慮すると、宇宙ガンマ線背景放射のエネルギー分布はたくさんのLLAGNからのガンマ線の合計だと考えれば自然に説明できることがわかった。

木村さんたちによれば、このモデルは宇宙背景ニュートリノの起源もうまく説明できるという。一般的に、LLAGNのブラックホールを取り巻く高温プラズマは乱流状態になっていて、プラズマの中の荷電粒子は乱流の作用で加速・減速を繰り返す。この過程によって、プラズマに含まれる陽子の一部が約10^8GeVまで加速されることを木村さんたちは示した。

こうして加速された陽子は、プラズマを形づくる他の陽子と衝突したり、電子が放出した光子と相互作用したりすることで、10^6GeVくらいの高エネルギーニュートリノを生成する。このニュートリノが宇宙背景ニュートリノになっていると考えれば観測データをうまく説明できるのだ。

宇宙のガンマ線やニュートリノの起源については、明るいAGNやブラックホールから噴出されるジェットなど、電磁波で明るい天体がその源ではないかとこれまでは議論されてきた。今回の研究は、電磁波であまり明るくない天体であっても数が多ければ高エネルギー粒子の起源に十分なりうることを示した画期的な成果だと研究チームは考えている。