【2021年11月1日 ハーバード・スミソニアン天体物理学センター/チャンドラ】

現在までに発見されている太陽系外惑星は全て「銀河系内惑星」だ。すなわち、全て天の川銀河の中にあり、ほとんどが私たちから約3000光年以内の距離にある。

このたび、米・ハーバード・スミソニアン天体物理学センターのRosanne Di Stefanoさんたちの研究チームは、りょうけん座の方向約3000万光年の距離に位置する渦巻銀河M51、通称「子持ち銀河」の中にある惑星候補を発見した。天の川銀河外の惑星候補が見つかったのは初めてのことだ。

M51
子持ち銀河M51。ハッブル宇宙望遠鏡(可視光線)と「チャンドラ」(X線)の観測データを合成。四角内が惑星の候補が検出された領域(提供:X-ray: NASA/CXC/SAO/R. DiStefano, et al.; Optical: NASA/ESA/STScI/Gendler)

Di Stefanoさんたちは(天の川銀河内の)系外惑星探しに使われる「トランジット法」を応用して、天の川銀河の外で惑星を探そうと試みている。この方法では、惑星が中心星の前を通過するときに主星が暗くなる様子を観測して、惑星自体が見えなくてもその存在を確認できる。ただし、普通の恒星に比べて惑星は非常に小さいため、トランジットに伴う減光はごくわずかだ。

そこでDi StefanoさんたちはX線連星に注目した。X線連星は中性子星またはブラックホールが伴星からガスを引き寄せるほど近接した連星で、主星へ流れ込むガスが数百万度の高温に加熱されてX線で明るく輝いている。中性子星もブラックホールも非常にコンパクトな天体であり、X線で輝く領域も通常の恒星に比べてかなり小さい。そこで、この連星の周りを惑星が回っていれば、トランジットの際にそのX線源の大半、場合によっては全てを隠しうる。X線の変化が大きい分、可視光線のトランジットよりもはるかに遠くから検出することができる。「X線の波長で惑星候補を探すという、他の銀河での発見をも可能とする戦略によって、私たちは全く新しい舞台での系外惑星探しに挑んでいるのです」(Di Stefanoさん)。

(Youtube動画)

M51内のX線連星「M51-ULS-1」を横切る惑星のイメージ動画(提供:NASA/CXC/A. Hobart)

研究チームは2つの天文衛星、NASAの「チャンドラ」とヨーロッパ宇宙機関の「XMMニュートン」を3つの銀河に向け、M51で55個、おおぐま座のM101(回転花火銀河)で64個、おとめ座のM104(ソンブレロ銀河)で119個のX線連星を監視した。そして、惑星トランジットらしき信号がM51-ULS-1と名付けられたX線連星で検出された。

M51-ULS-1はブラックホールまたは中性子星と太陽質量の20倍程度の恒星からなる連星で、チャンドラによる観測中にX線の放射が約3時間にわたって止まった。研究チームはこれが、土星程度の大きさを持ち、主星から約30億km(太陽から土星の距離の約2倍)離れたところを公転する惑星によるトランジットではないかと考えている。

残念ながら、今回の発見が正式に「銀河系外惑星」と認められることは当面なさそうだ。チャンドラがとらえたのが惑星トランジットであることを確認するには、さらなる観測データが必要となる。しかし研究チームの計算が正しければ、次に惑星が主星の前を通過するまでは約70年間も待たなければならない。しかも正確な周期がわかっていないので、どの瞬間にM51-ULS-1へ望遠鏡を向ければよいかも不明だ。ただ、今回観測された減光データ自体は惑星を仮定した場合によく当てはまり、もう一つの有力な原因であるガスと塵の雲による減光を否定するものだという。

推定される惑星候補天体の軌道
M51-ULS-1の周りを回ると推定される惑星の軌道。白い点線を中心に、計算上通りうる軌道が灰色で示されている。下が地球の方向。中心の四角内に連星があり、右の拡大図には中性子星またはブラックホールを取り囲むオレンジ色のガス円盤と青白い伴星が描かれている(提供:NASA/CXC/M. Weiss)

M51-ULS-1に本当に惑星が存在するとすれば、壮絶な過去をたどってきたことになる。中心の天体が中性子星かブラックホールであるということは、その前身の恒星が超新星爆発を起こしたことを意味するからだ。そのときは強烈な衝撃と放射線が惑星を襲ったことだろう。さらに、連星の伴星も質量が大きく超新星爆発する運命にあるので、惑星の未来は明るいとは言えない。