【2022年6月1日 すばる望遠鏡】

現在の宇宙に存在する銀河のうち、主に渦巻銀河や不規則銀河ではガスを材料として星が生まれる星形成活動が起こっている。ところが、渦巻きのような構造を持たずぼんやりとした形の楕円銀河では星形成活動が止まっていて、銀河としての成長もやめてしまっていることが知られている。

NGC 850 楕円銀河の例、くじら座のNGC 850(提供:国立天文台/HSC-SSP)

そんな楕円銀河でも、時間をさかのぼれば星形成活動が盛んだった時期があるはずで、何らかの原因でその活動が終わりを迎えたのだと考えられる。実際に100億年以上前という昔の宇宙(遠方宇宙)を観測すれば、ほとんどの銀河で活発に星が生まれていることがわかる。ところが、すばる望遠鏡などによる近年の観測で、遠方宇宙にも既に星形成を終えている銀河が少ないながらも見つかっている。これらは現在の楕円銀河の祖先かもしれない。

星形成活動が終わってしまう原因については、銀河の中心核に潜む超大質量ブラックホールの活動によって星形成が抑制されてしまうという仮説がある。ブラックホールに引き寄せられた物質は加熱され、強力な輝きや風、ジェット噴射を見せるが、これらが銀河からガスを排出したり、銀河内外のガスを加熱して集積しにくくしてしまうのだという考えだ。

総合研究大学院大学(研究当時)の伊藤慧さんたちの国際研究チームは、遠方宇宙で星形成が止まった銀河で、実際に超大質量ブラックホールの活動が検出できるかを調べた。対象としたのは約95〜125億年前の宇宙に存在した5211個の銀河で、X線天文衛星「チャンドラ」とカール・ジャンスキー超大型干渉電波望遠鏡群の観測データを使っている。

約100億年以上前に星形成を終えた銀河 多波長の探査観測「Cosmic Evolution Survey(COSMOS)」のデータを用いて調査された、約100億年以上前の遠い過去に星形成を終えた多数の銀河(周囲の拡大パネル内の赤色の天体)。中央はCOSMOS領域の画像(提供:国立天文台)

すばる望遠鏡が銀河をとらえた位置をX線や電波で観測しても、一見何も検出されない。しかし、銀河を距離や質量で分類した上でグループごとに重ね合わせると、X線でも電波でもはっきりとした信号がとらえられた。放射されているX線や電波の強度は恒星だけでは説明できず、超大質量ブラックホールが一般的に存在していることを示唆している。

研究手法の概念図 今回の研究手法の概念図。星形成を終えた約95〜125億年前の銀河5211個をいくつかの時代(距離)と星成分の質量(ダークマターとガスを除く)に分けた上で、画像を重ね合わせ、X線と電波の平均的な放射強度を求めた(提供:国立天文台)

また、同じ時代で星形成活動が起こっている銀河に比べて、止まっている銀河の超大質量ブラックホールは活動性が高いこともわかった。宇宙の歴史初期においても、星形成活動の停止に超大質量ブラックホールの活動が関わっていることを示唆する結果だと伊藤さんたちは結論づけている。今後はブラックホールがどのように星形成を止めたのか、その具体的な過程を明らかにしたいという。