【2022年6月24日 アルマ望遠鏡】

星の材料となる分子ガスが集まって恒星が誕生するときは、原始星円盤と呼ばれる構造が形成され、その原始星円盤を通して周囲のガスが中心へ降り積もると考えられている。このことは太陽程度の比較的軽い星では確かめられているが、質量が大きな星、中でもとくに重くて進化が速いO型星についても当てはまるかどうかはよくわかっていなかった。

中国科学院上海天文台のXing Luさんたちの研究チームは星の形成過程を調べるために、天の川銀河中心部にある「銀河中心分子雲帯」と呼ばれる、水素分子を中心とした高密度な分子ガスが蓄えられている領域を観測した。ここはLuさんたちの観測により星の形成領域として注目されているが、地球から約2万6000光年と遠く、そのうえ星間物質が視界を妨げるため、観測が難しい。

そこでLuさんたちは星間物質を見通せるアルマ望遠鏡の長基線観測を用いて、40ミリ秒角の解像度(東京から大阪にある野球ボールを簡単に見つけられるほどの能力)で銀河中心分子雲帯の一部を観測した。その結果、太陽の32倍の質量を持つO型原始星を取り巻く降着円盤を発見した。円盤の直径は約4000天文単位(約6000億km、土星の軌道直径の200倍)に達する。「これは、降着円盤を持つことがわかっている最も重い原始星の一つであり、銀河中心部にある原始星円盤を電波で直接撮像した初めての例です」(米・ハーバード・スミソニアン天体物理学センター Qizhou Zhangさん)。

観測画像と数値シミュレーション
(a-c)原始星を取り巻く降着円盤と接近・通過した天体の時間変化を追った数値シミュレーション画像。左下から、接近時、4000年後、8000年後の様子。(d)アルマ望遠鏡による観測結果。渦巻き腕を持つ降着円盤とその周りにある2つの天体が見える。シミュレーション結果と合わせると天体同士が最も接近した時から約1万2000年が経過していると推測される(提供:Lu et al.)

観測された原始星円盤には、2本の渦巻き腕という珍しい構造が見られる。Luさんたちはさらに調査を行い、降着円盤から約8000天文単位離れたところに太陽質量の3倍程度の天体を発見した。数値シミュレーションによると、この天体が約1万2000年前に降着円盤に接近・通過して円盤を乱し、渦巻き腕が形成されたのかもしれないという。このような現象も、より小さな原始星の円盤で観測例がある(参照:「星系への侵入者、原始惑星系円盤を乱す」)。

「星の質量が違っても、その形成過程は同じである可能性があります。さらなる高解像度観測によって、大質量星の形成の謎が解明されることが期待されます」(Luさん)。