【2022年9月15日 NASA】

地球から約20万光年の距離にある小マゼラン雲は、天の川銀河に付随している衛星銀河の一つだ。この小マゼラン雲の中にある散開星団「NGC 346」は、直径がわずか150光年だが太陽5万個分の質量を持つ。また、渦巻銀河の腕のようにカーブした星やガスの集まりが見られ、非常に活発な星形成を行っている。だが、この星団がなぜこうした性質を持つのかはよくわかっていなかった。

米・宇宙望遠鏡科学研究所のElena SabbiさんとPeter Zeidlerさんを中心とする研究チームは、ハッブル宇宙望遠鏡(HST)を使ってNGC 346の星々の位置を11年間にわたって観測した。この星団の星々は時速約3000kmの速度を持ち、11年間で2天文単位(約3億km)ほど動くが、小マゼラン雲は天の川銀河の星々より遠いため、地球から見た移動量はきわめて小さい。SabbiさんたちはHSTの高い分解能と感度のおかげできわめて精密な測定を行うことに成功した。さらに、ヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡VLTを使って星団の星々の視線速度も求め、星々の3次元的な運動を明らかにした。

その結果、NGC 346の内部では星とガスが星団の中心に向かって渦を巻くように動いていることが明らかになった。星団の奇妙な腕構造や星形成率が非常に高い原因の一つは、この渦巻き運動にあったのだ。

NGC 346
小マゼラン雲にある大質量星団NGC 346。赤い渦巻きは星とガスが中心に向かって渦を巻いて運動している様子を示す(提供:NASA、ESA、Andi James (STScI))

「渦巻き運動は、星団の外側から中心に向かって星形成を促す、非常に自然で良い方法です。星や星形成の燃料となるガスを中心部に送り込むのに最も効率的なやり方なのです」(Zeidlerさん)。

小マゼラン雲は天の川銀河よりも重元素の量が少ないため、重い星が生まれやすい。ガス雲が重力収縮して新たな星になるためにはガス雲が冷える必要があるが、重元素が少ないガスは冷えにくく、より大きなガスの塊でないと圧力に打ち勝って重力収縮が進まないからだ。こうして誕生した大質量星は、わずか数千万年で超新星爆発を起こして一生を終える。

重元素の少ない小マゼラン雲は、超新星爆発で宇宙に大量の重元素がばらまかれる前の、初期宇宙の銀河に似ているともいえる。今回明らかになったNGC 346の星形成の仕組みは、ビッグバンから約20億〜30億年後の初期宇宙で起こったとされる「星のベビーブーム」がどのように引き起こされたのかを理解するヒントになるかもしれない。