史上初の4カ月遅れでの再開幕戦となったオーストリアGPから5日。F1は史上初となる同じサーキットでの2週連続開催を迎える。先週と同じオーストリアで行われる第2戦の名称は、戦いの舞台となるレッドブルリンクがある州の名前を冠にして、「シュタイアーマルクGP」という名で開催される。

 そのシュタイアーマルクGPで木曜日に行われたFIA会見は、1週間前と同様、全ドライバーがチーム後2名ずつ出席して行われた。
 開幕戦ではレース終盤に3番手を走行し、タイヤ戦略の違いから優勝も狙える位置にいながら、2番手を走行するルイス・ハミルトン(メルセデス)をオーバーテイクする際に接触したアレクサンダー・アルボン(レッドブル・ホンダ)は、「今週のレースでもしハミルトンと同じような状況でバトルするようなことがあったら、アプローチを変えるか」と尋ねられると、「いや、まったくそんなことは考えていない。100%同じことをやる。ただ、正直言って、その件についてはあまり言うことはない。ルイスだって接触するつもりはなかったと思うしね」と変わらぬ姿勢でシュタイアーマルクGPに臨む。

 そのコメントを隣で聞いていたマックス・フェルスタッペンは、「あのシーンは見ていたけど……うーん、本当だったら見ているべきではなかったと思うけど、でも、僕は(リタイアしていたから)ドライバールームでくつろいでいたからね」と、やや自虐的に笑ながらも、チームメートのドライビングを次のように称えた。

「あそこでアウトサイドから仕掛けたアレックスの動きは素晴らしかったよ。あれはなかなかできるもんじゃない。だから、ペナルティがルイスに与えられたのは当然だと思う。でも、最後尾まで落ちたアレックスのほうがダメージは大きかったね」

 続けて登場したフェラーリのふたりで、多くの質問を受けたのは、開幕戦で2位表彰台を獲得したシャルル・ルクレールではなく、10位に終わったセバスチャン・ベッテルだった。その理由は今週、フェルナンド・アロンソが2021年にルノーから復帰することが発表され、ベッテルに残された選択肢がまたひとつ減ったからだ。

 ルノーと交渉していたかと尋ねられたベッテルは「うん、していた」と初めて、ルノーと接触していた事実を認めながらも、「でも、それはベーシックなもので、本格的な交渉には至らなかった」と語り、ルノーは2021年の選択肢にはなかったことを強調した。

 興味深かったのは、レッドブルに復帰する可能性を尋ねられたベッテルの反応だった。

「以前、所属していたチームだから、いまでも多くの人と交流がある。クリスチャン(・ホーナー)、ヘルムート(・マルコ)、そして、その他の人たちともね。彼らは勝てるクルマを持っている。もちろん、レッドブルのすべてを知っているわけじゃないし、僕が離れてから、チームも変わったところがあると思うけど、僕は彼らがどうして強かったのかを知っているし、それはいまでも変わらない」

 そして、司会者が「レッドブルからオファーが来れば、それを受け入れるか?」と質問されると、ベッテルは「僕は戦うためにここにいて、勝つためにここにいる。だから、あなたの質問への答えは、イエスということになるだろう」と答え、「僕は多くのことを成し遂げてきたけど、まだやり残したことがある」と語った。

■人種差別への抗議活動を続けていくルイス・ハミルトン
 最後に登場したメルセデスのハミルトンには、日曜日のレース前のセレモニーで膝をついて、人種差別へ抗議した行動について質問が目立った。その中で、興味深かったのは元ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)のアメリカンフットボール選手のコリン・キャパニックについての質問だ。それは、2017年のアメリカGPで、ハミルトンがキャパニックのトリビュートヘルメットを使おうとしたものの、重大な結果を招く恐れがあるという圧力を受けて断念していたからだ。

 キャパニックを知らない方のために補足すると、白人の母親と黒人の父親の間に生まれたキャパニックは、白人家庭の養子として生まれ育った経験を持ち、後に名門サンフランシスコ・フォーティナイナーズのクォーターバックとして活躍した名選手だ。ところが、2016年に人種差別撤廃を訴えて、試合前の国歌斉唱で起立を拒否し、ひざまずくという抗議活動を開始。大きな賛同を得る一方で非難も集中し、2017年にはチームとの契約を終了して以降、事実上、NFLから干されてしまった。

 そこでハミルトンは2017年のアメリカGPでキャパニックへのトリビュートヘルメットを使用しようとしたが、上層部からの圧力によって断念したという。だからこそ、開幕戦で自分なりに抗議活動を行うことができたことに満足していた。

「コリンに捧げるためにあのヘルメットはまだ持っている。いまでもコリンとコンタクトしていて、今回のことをすごく応援してくれていた。だから、先週末、膝をつくことを許可し、賛同してくれた(F1と多くのドライバー)に感謝している。彼(コリン)が始めたこの素晴らしい抗議活動が続けられていることをうれしく思っている」

 ハミルトンはどんな形であれ、差別が撤廃されるまで抗議活動を今後も続けていくという。