F1第2戦シュタイアーマルクGPはルイス・ハミルトン(メルセデス)がポール・トゥ・ウインを達成。予選2番手の位置からスタートしたマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)は、バルテリ・ボッタス(メルセデス)の追撃を振り切れず3位表彰台。一方のフェラーリ勢は新型フロントウイングを投入もまさかの同士討ち、データをとることなくレースを終えた。そんなF1第2戦の模様を無線とともに振り返る。

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 F1史上初となる同じサーキットでの2週連続開催。しかし、F1第2戦シュタイアーマルクGPは土曜日に雨が降って、予選は大混乱。スターティンググリッドが1週間前と大きく変わったため、レースは1周目から激しい戦いが展開された。その中で、スタート直後に同士討ちを演じたのがフェラーリだった。3コーナーでセバスチャン・ベッテルのインに強引に飛び込んだシャルル・ルクレールは止まりきれずに追突。ベッテルはリヤウイングが脱落してスローダウンを余儀なくされ、ルクレールもフロアに大きなダメージを負った。

ベッテル:マシンにダメージがある。だれかが僕のリヤウイングをもぎ取ったようだ。

フェラーリ:OK、BOX。

ベッテル:コピー、BOX。だれが(僕のリヤウイングを)もぎとったのかわからないけど、とりあえずピットインするよ。

フェラーリ:セーフティカーが入ったけど、BOXしろ。

ベッテル:わかっている。いまスロー走行しながら、向かっているよ。

 ピットインしたベッテルのマシンを見たチームは、リタイアを決断。

フェラーリ:ガレージにマシンを入れる。

ベッテル:マジで。

フェラーリ:そうだ。損傷がひどい。

ベッテル:ああ、かなりひどいな。でも、だれだ? 普通に3コーナーを通過しようとしたら、いきなりイン側からぶつけられた。ア゛ーーーッ。

フェラーリ:了解……。

 このとき、チームはだれがベッテルに追突したのかわかっていた。しかし、それを無線で伝えなかったのは、それがチームメイトだったからだ。逆にルクレールは、この時点で自分が犯したミスの大きさをまだ理解していない。

ルクレール:マシンをチェックしてほしい。だれかがリヤから激しく追突してきた。リヤのダメージは?

フェラーリ:スロー・ボタンをオンにしろ。

 ピットインしてタイヤを交換してコースに復帰したルクレールだが、マシンに負ったダメージが大きく、満足に走ることができない。

ルクレール:リヤがおかしい。マシンは大丈夫?

フェラーリ:フロアにダメージがある。

ルクレール:かなりひどいのか?

フェラーリ:ターン3の後は(走行ラインではない)右側のラインを走行しろ。

ルクレール:ノー、ノー。それっておかしくない? お願いだから、教えてよ。ダメージは大きいのか、それとも小さいのか? いったい、どうなってんの?

フェラーリ:まだ、ハッキリはわからない。ただ、フロアの左側にダメージがあるようだ。

ルクレール:僕は最後まで走りたい。やれるかどうかはわからないけど、とりあえず、やらせてほしい。

 しかし、チームはリタイアを決断。4周目にルクレールをガレージに戻した。そして、約15分後にテレビ局のインタビューに出てきたふたりが最初に語ったコメントがこうだった。

ベッテル:イン側にスペースはなかった。だから、シャルルがオーバーテイクを仕掛けてくるとは想像もしなかったよ。

ルクレール:これは言い訳できないミスだ。自分が情けない。チームをガッカリさせて、本当に申し訳ない。

■トップを走るルイス・ハミルトンを追うマックス・フェルスタッペン
 フェラーリの2台がいなくなったレースは、メルセデス勢2台(1番手、3番手)とレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペン(2番手)による一騎打ちとなっていた。7周目にメルセデスはトップを走るルイス・ハミルトン(メルセデス)にこう伝える。

メルセデス:前の周のラップタイムは、フェルスタッペンと同じだ。それを聞いたハミルトンはしっかりとリアクション。7周目からペースアップを開始し、コンマ5秒ずつフェルスタッペンを引き離していく。その走りに対して、メルセデスはこう無線を送る。

メルセデス:フェルスタッペンに対してタイムをロスしているのは、ターン3のミニマムスピードだけだ。あとはターン9でのタイヤマネージメントをもう少し行ってくれ。

 ピットストップウインドウに入った20周目、2番手のフェルスタッペンとトップのハミルトンの差は4.7秒に広がり、逆に3番手のボッタスとの差は3秒に縮まった。そして、こう伝える。

レッドブル・ホンダ:メルセデスはふたりにプッシュしろと言っている。

フェルスタッペン:で、僕に何をしろと?

レッドブル・ホンダ:任せた。でも、君がプッシュするのはわかっているけどね。

 レッドブル・ホンダは3番手のボッタスのアンダーカットを阻止するために、24周目にフェルスタッペンをピットインさせる。ピットアウト後、フェルスタッペンがピットに確認する。

フェルスタッペン:ピットストップは早すぎたんじゃない?

レッドブル・ホンダ:ボッタスのアンダーカットを警戒した。

フェルスタッペン:でも、それじゃ、レース後半にタイヤが厳しくなる。でも、まあ、いいや。

 そして、フェルスタッペンの心配は的中。フェルスタッペンは縁石に乗り上げた際にフロントウイングの翼端板にダメージを負っていたこともあって、ダウンフォースを失い、タイヤが想定よりも厳しい状態となってしまった。54周目、メルセデスはボッタスに指示を送る。

メルセデス:このペースで行けば、ファイナルラップに彼(フェルスタッペン)に追いつける。いいぞ、バルテリ!! もうこれからはしゃべりかけないから、プッシュしろ。

 一方、レッドブル・ホンダはフェルスタッペンにマシンにダメージがあることを知らせる。

レッドブル・ホンダ:あと2、3周でボッタスが追いつく。フロントウイングの右の翼端板にダメージがあるから気をつけるように。

フェルスタッペン:ターン3の立ち上がりのドライバビリティが最悪だ。リヤタイヤがもう残っていない。

 65周目にフェルスタッペンに追いついたボッタス。66周目のバトルではなんとか耐えたフェルスタッペンだが、67周目にボッタスがオーバーテイクを成功させ、ふたりのバトルは決着した。

 その直後、その後方では4番手のアレクサンダー・アルボンと5番手のセルジオ・ペレス(レーシングポイント)による激しいバトルが繰り広げられ、2台は接触。アルボンがポジションを守り切ったのに対して、ペレスはフロントウイングに大きなダメージを負った。

■最終ラップまで白熱する中団勢のバトル


 するとここから、5番手のペレス、6番手のダニエル・リカルド(ルノー)、7番手ランス・ストロール(レーシングポイント)、8番手のランド・ノリス(マクラーレン)までの4台による激しい戦いがファイナルラップの最終コーナーまで続く。

 ここからはその緊迫したやりとりを聞いていこう。

■68周目
レーシングポイント→ストロール(7番手):ノリスがDRSに入ってきた。君も前のリカルドのDRSにとどまるように。

■69周目
マクラーレン→ノリス(8番手):あと2周だ。シナリオ7。

■70周目
3コーナーで7番手のストロールがリカルドに飛び込み抜こうとするが2台そろってコースオフ。その隙に8番手のノリスがリカルドをパスして、6番手ストロール→7番手ノリス→8番手リカルドに。

リカルド:事故を避けるために、コースを出るしかなかった。
ルノー:わかっている。
レーシングポイント→ストロール(6番手):すぐ後ろにノリスがいる。気を付けろ。
ノリス(7番手):コース上に(アルボンとペレスが接触したときの)デブリがあった。内圧をチェックしてくれ。
マクラーレン→ノリス:だいじょうぶだ。ゲーム・オン!!
レーシングポイント→ペレス(5番手):フロントウイングにダメージがある。ガスリーが後ろにいるが、彼とレースするな。

■71周目(ファイナルラップ)
5番手ペレス→9秒→6番手ストロール→0.7秒→7番手ノリス→0.6秒→8番手リカルド

■ホームストレート上
レーシングポイント→ペレス:あと1周だ。
マクラーレン→ノリス:オーバーテイク・ボタンを1回押せ。
レーシングポイント→ストロール:ノリスが後ろにいるから、気を付けろ。
ルノー→リカルド:ラストラップ。

■1コーナー立ち上がり
マクラーレン→ノリス:オーバーテイク・ボタンを1回押せ。

■3コーナー立ち上がり
レーシングポイント→ペレス:ガスリーの後ろから3台が接近している。彼らは君とレースしている。1台目がランスで、2秒後方だ。

レーシングポイント→ストロール:前にいるペレスはフロントウイングにダメージがある。
マクラーレン→ノリス:シナリオ8。オーバーテイク・ボタンを1回押せ。

ノリスがストロールを4コーナー手前で抜く。
これで5番手→ペレス6番手ノリス→7番手ストロール→8番手リカルドに。

■5コーナー手前
レーシングポイント→ペレス:縁石に乗るな。

■7コーナー立ち上がり
ガスリーがペレスをオーバーテイク。

レーシングポイント→ペレス:すぐ後ろに3台いる
マクラーレン→ノリス:前方でペレスが超スロー走行している。気をつけてプッシュしろ。オーバーテイクボタンを5秒間、押し続けろ。
ルノー→リカルド:前にトラブルを抱えたペレスがいる。

■最終コーナー
マクラーレン→ノリス:オーバーテイクボタンを押し続けろ!!

■チェッカーフラッグ
マクラーレン→ノリス:5位だ。シナリオ1にしていい。
ノリス:ワオ!
レーシングポイント→ペレス:チェコ、6位だ
ペレス:ア゛ーーーッ。××××。ゴメン、みんな
レーシングポイント→ストロール:よくやった、ランス。よく頑張ったよ。
ストロール:彼(リカルド)を抜くのは、大変だったよ。

ルノー→リカルド:入賞だ。もっと多くのポイントを取れたと思うけど、いいレースだったよ。
リカルド:ああ、ありがとう。

 そのころ、すでにトップでチェッカーフラッグを受けたハミルトンとメルセデスでは、ウイニングランでこんなメッセージが交わされていた。

メルセデス:最高の男だよ、君は。

ハミルトン:みんなも最高だよ。本当に大変な仕事を完璧にこなしてくれた。ありがとう、ボノ(ハミルトンのレースエンジニアのピーター・ボニントン)

 そこにチーム代表のトト・ウォルフが割り込む。

ウォルフ:ルイス、君のドライビングも悪くなかったよ。

ハミルトン:ハハハ、ありがとう、トト(笑)