第12戦ポルトガルGP決勝の40周目にルイス・ハミルトン(メルセデス)がピットインし、ハードタイヤに交換すると、チームメイトのバルテリ・ボッタス陣営も動く。ボッタスの担当レースエンジニアのリカルド・ムスコーニが「ルイスはハードタイヤを選択した」と無線で伝えると、ボッタスは「じゃ、僕たちはソフトで行こう」と返した。

 しかし、41周目にピットインしたボッタスにメルセデスはハードタイヤを装着して、レースに復帰させた。

 レース後、メルセデスが開いた会見でトト・ウォルフ代表は、その理由を次のように説明した。

「基本的に我々はふたりのドライバーのレースに関して、あまり干渉することはしないようにしている。リードしているドライバーが採った選択に対して、もうひとりのドライバーが異なる戦略を採ろうとする気持ちも理解できる。しかし、レースでの状況は常に複雑で、あのときの我々がまさにそうだった」

 ミディアムでスタートし、1ストップ戦略でレースを進めていたメルセデス勢2台には、ピットストップでふたつのタイヤ選択のオプションがあった。ひとつはハード、もうひとつはソフトだ。先頭を走るハミルトンがハードを選択したため、2番手のボッタスはソフトに賭けようとしたわけだ。
 
 だがウォルフは、データ上、ソフトという選択が間違っているため、チームとしてハードを選択したと説明した。

「レースの残りの3分の1を走るのに最適なタイヤがソフトでなく、ハードだということをデータが示していたので、そのことをふたりのドライバーに説明した。そして、それが正しかったことは、レース終盤にソフトを履いてレースしていたチェコ(・ペレス)とエステバン(・オコン)が苦戦していたことでもわかる。我々はあの時点でハードがベストタイヤだと確信していた」

 つまり、ボッタスがもしソフトで勝負に出ていてもハミルトンを逆転することができなかったばかりか、約8秒後方でフィニッシュした3位のマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)に逆転を許していたかもしれなかった。

 そうなると、ボッタスのポルトガルGPでの敗因は、20周目にハミルトンに許したあのオーバーテイクに尽きる。いったい、何があったのか? トラックサイドエンジニアリングディレクターのアンドリュー・ショブリンがこう説明する。

「10周目あたりからタイヤの温度が下がり始めて、安定した走りが難しくなっていた。逆にルイスはペースをつかみ始めていたため、パスすることができた」

 ボッタスには、ピットストップを遅らせて、オーバーカットするという選択はなかったのか? ショブリンはこう続ける。

「バルテリはタイヤにちょっとしたバイブレーションが発生させていたため、それはできなかった。ルイスはもっと長く走らせることはできたが、我々は2台ともピットインさせることにした」

 つまり、メルセデスはボッタスから優勝するチャンスを奪ったのではなく、2位をプレゼントしていたのだった。