レース結果の数字だけを見れば、2020年のホンダは2019年よりも成績が落ちたように見える。

 たとえば、レッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンのドライバーズ選手権は2019年同様3位だったが、獲得したポイントは2019年が278点だったのに対して、2020年は214点にとどまった。コンストラクターズ選手権でもレッドブル・ホンダの得点は、2019年の417点から2020年は319点に減少した。

 しかし、これは2019年が21戦だったのに対して、2020年が17戦で行われていたことが大きく関係している。ドライバーズ選手権3位のフェルスタッペンと2位のバルテリ・ボッタス(メルセデス)とのポイント差を見ると、2019年は48点あったのが、2020年は9点となっているように、レッドブル・ホンダ+フェルスタッペンという組み合わせは、確実にメルセデスに近づいた1年だった。

 そのことは予選でのメルセデスとのパフォーマンスにも表れている。

 2019年の開幕戦オーストラリアGPでポールポジションを獲得したルイス・ハミルトン(メルセデス)のタイムが1分20秒486で、4番手のフェルスタッペンのタイムは1分21秒320と、ふたりの差は0.834秒あった。これが2020年の第1戦オーストリアGPでは、ポールポジションを取ったボッタスの1分02秒939に対して、3番手のフェルスタッペンは1分03秒477と、0.538秒差となった。

 アルバートパークとレッドブルリンクの1周の距離が違うので、タイム差をパーセンテージで比較すると、2019年の開幕戦はメルセデスに対して約101.036%だったが、2020年は100.854%と、やはり差を詰めていたことがわかる。

 2020年はフェラーリが低迷したが、2020年のレッドブル・ホンダがメルセデスに肉薄していたことを考えると、仮にフェラーリが低迷していなくとも、レッドブル・ホンダがメルセデスに次ぐポジションで戦っていたことだろう。

 2020年のホンダで忘れてはならないのは、信頼性の向上だ。もちろん、限界で使用しているF1ではトラブルが皆無ではなかった。フェルスタッペンだけでも3回(オーストリアGP、イタリアGP、トスカーナGP)リタイアした。だが、田辺豊治F1テクニカルディレクターが最終戦に「すべてのパワーユニットを用意していた」と語っていたことからも、3基(ESとCEは2基)とも最後まで使用できる状態にあった。つまり、ハードウェアの耐久性に関しては計算通りだったことは今後の開発に向けて明るい材料といえる。

 ホンダの信頼性で評価すべきは、レッドブルだけでなく、アルファタウリもペナルティなしでシーズンを乗り切ったことだ。メルセデス製パワーユニットはウイリアムズが、フェラーリ製パワーユニットはハースが、そしてルノー製パワーユニットはマクラーレンが年間使用基数を超えてペナルティが科せられた。

 アルファタウリもピエール・ガスリーのパワーユニットが第12戦ポルトガルGPで出火するというトラブルに見舞われながらも、レギュレーションの範囲内にとどめた。これは現場でアルファタウリのパワーユニットを管理するホンダの本橋正充チーフエンジニアをはじめとしたアルファタウリ側のホンダのスタッフの努力があったことは言うまでもない。

 そんな彼らがアルファタウリとともに掴んだ第8戦イタリアGPでの勝利は、2020年のホンダにとってのベストレースと言っていいだろう。

 この優勝はアルファタウリとホンダにとって貴重な1勝となっただけでなく、ライバルチームにとっても大きな影響を与えた。ガスリーの優勝に触発されたのか、第9戦トスカーナGPではアレクサンダー・アルボンが初表彰台を獲得。第11戦アイフェルGPではダニエル・リカルドがルノー移籍後、初表彰台。第13戦エミリア・ロマーニャGPではダニール・クビアト(アルファタウリ)が表彰台争いを演じ、第14戦トルコGPではランス・ストロール(レーシングポイント)が初ポールポジションを獲得。そして、第16戦サクヒールGPではルイス・ハミルトン(メルセデス)の代役として出場したジョージ・ラッセルが活躍し、セルジオ・ペレス(レーシングポイント)が優勝した。

 そのアルファタウリから2021年にF1デビューする角田裕毅。速さに関しては、FIA-F2で1年目にもかかわらずポールポジションを4回獲得していることも心配はないだろう。ただし、F1は速いだけでは結果につながらない世界。そこには、常に安定して速いことが求められる。F1はF2に比較にならないほど多くのエンジニアが存在し、セットアップを行ううえでの走行データの質と量が求められる。そのためには、いかに早くマシンを限界を引き出し、かつミスなく走らせるかが重要となる。

 F1では金曜日のフリー走行2回目に予選用のアタックとレースでのタイヤデータを取るためにロングランを行うが、ここでミスしてクラッシュしてしまうと、大きなロスとなる。

 2020年のF2での角田は、時折ミスがあった。例えば、1回目のバーレーンの予選でのスピンだ。もちろん、限界を探るにはリスクは伴う。ハミルトンやフェルスタッペンだってスピンはする。しかし、彼らはマシンを壊したり、セッションを終了しなければならないような致命的なミスを滅多に犯さない。F1は少ないチームでも約200人、多いチームでは400人以上がレースに関わっている。そのプレッシャーとも、角田はうまく付き合っていかなければならない。

 だが、角田なら、できるだろう。というのも、F2の終盤戦で、スーパーライセンスポイントを獲得するためのプレッシャーに打ち勝っていたからだ。いま思えば、最終戦となった2回目のバーレーンは、スーパーライセンスポイントを獲得するためのレースだっただげなく、F1ドライバーとして資質があるかどうかが試された一戦だったのかもしれない。そのプレッシャーに打ち勝った角田なら、きっとできるはず。