ローレンス・ストロールは、息子のランスがグランプリの世界で長いキャリアを確立する基盤を作るためだけにF1チームを買収したのではない。ファッションビジネスで大きな成功を成し遂げたストロールは、自動車業界においてその再現をしたいとも考えているのだ。2020年、アストンマーティン・ラゴンダ社の株主でありエグゼクティブチェアマンとなったストロールは、F1チームは同社にとって良い宣伝効果を発揮すると見ている。

 ストロールは2018年にフォース・インディアF1チームを買収、同チームをレーシングポイントとして運営していたが、2021年にはアストンマーティンF1チームに名称を変更することを決めた。

 F1活動において、ストロールが妥協のないアプローチを取っていく方針であることは、2020年の時点ですでに明らかになっている。チームは何年もの間、レッドブル・レーシングのチーフテクニカルオフィサーを務めるエイドリアン・ニューウェイのデザインコンセプトを取り入れてきたが、2020年に向けてそれまでの信念とデータをすべて放棄するという異例の手段を取った。そして2019年のF1を席巻したメルセデスのシャシーW10をコピーすることに、方向転換したのだ。

 レーシングポイントは、信頼性の問題とランス・ストロールの一貫性の欠如によってコンストラクターズ選手権3位の座は失ったものの、2020年に明確に一歩前進した。2021年にはアストンマーティンの名のもとで、より一層良い結果を出すべく、準備を進めていく。

 ストロールとパートナーたちは、4度のF1チャンピオンであるセバスチャン・ベッテルを中団チームであるアストンマーティンに加入させることに成功。ベッテルの獲得から、彼らが野心的な計画を立てていることは明らかだ。

 さらにアストンマーティンがメルセデスF1チームとの技術提携関係を強化することも明らかになっている。彼らが目指すのは、2020年にメルセデスに続くランキング2位を獲得したレッドブル・ホンダのレベルに近づくことだ。

 新ファクトリーの建設は新型コロナのパンデミックによる制限で遅れたものの、アストンマーティンは、シルバーストンの古いファクトリーにある程度の資金を使うと同時に、この12カ月の間に150人以上の新スタッフを雇用、少なくともあと50人を雇い入れる予定だ。その新スタッフの一部は、ほんの13kmほどの位置にあるブラックリーのメルセデスのファクトリーから移籍してくる模様だ。

 2021年のF1レギュレーションには予算制限の項目があり、それにより新たな制限が課されるため、メルセデスはスタッフ数を減らす必要がある。フェラーリがハースに一部スタッフを移すのと同様に、メルセデスもF1スタッフを他の部署に異動させるのではなく、アストンマーティンへと送り、彼らが必要としている経験と専門知識を提供する。

 ふたつのファクトリーの距離が近いことから、メルセデスからアストンマーティンへ移るエンジニアのための社屋を新たに建設する必要はない。フェラーリも、ハースに移籍する技術者たちをマラネロの別社屋において作業させる予定だ。

 メルセデスとアストンマーティンの提携関係は今後さらに強化されていくだろう。メルセデスの親会社ダイムラーがアストンマーティンの株主であり、メルセデスF1チーム代表トト・ウォルフがアストンマーティンの株式を多数購入していることを考えれば、それは驚くべきことではない。