1月15日(金)、いよいよトヨタGAZOO Racingが2021年のル・マン24時間レースを含むWEC世界耐久選手権に投入する新型レーシングカーを発表する。

 トヨタGAZOO RacingのSNSなどでは15日に向け、ティザー画像/動画を用いたカウントダウンが盛り上がりを見せているが、ここではいま一度今回発表されるレーシングカーの位置付けや、WECにおける技術をベースに開発中の市販ハイパーカー『GRスーパースポーツ(仮称)』との関係性などをおさらいしておきたい。

 最初にひとつ注意したいのが、“ハイパーカー”という呼称が、複数の意味で使われている点である。現在、この“ハイパーカー”という単語は、おもに以下の4つの意味で使用される傾向にある。

1:超高性能な市販車(量産車・ロードゴーイングカー)一般
2:『ル・マン・ハイパーカー(LMH)』という新規則
3:上記規則に基づいて製作された車両
4:2021年以降のWEC最高峰カテゴリーのクラス名(正式クラス名が『ハイパーカー』)

 本稿では以下、1について『市販ハイパーカー』、2および3について『ル・マン・ハイパーカー(略称:LMH)』あるいはそれぞれ『LMH規則』『LMH車両』、4について『ハイパーカー・クラス』と記述する。

 2012年のWEC復活とともに、最高峰クラスであるLMP1にはハイブリッド・システム搭載マシンでの参戦が可能となった。この規定実現のため長期にわたりル・マン24時間レース主催者のACOフランス西部自動車クラブや他の自動車メーカーと交渉を重ねてきたトヨタは、『TS030ハイブリッド』を新規開発・投入し、悲願であるル・マン24時間レース制覇を目標に耐久レースの世界へと復帰した。

 2006年の十勝24時間参戦以来、レーシングハイブリッド技術を磨いてきたトヨタは、その後WECでTS040ハイブリッド、TS050ハイブリッドとマシンを進化させていき、2018年にはついにル・マン初制覇を遂げる。

 一方で2010年代後半に入り、このLMP1ハイブリッド期にライバルとして戦ったニッサン、アウディ、ポルシェが相次いでシリーズから撤退。危機感をつのらせたWEC、およびACOがLMP1に代わる新たな規則として制定したのが、2021年より採用される『ル・マン・ハイパーカー(LMH)』規則である。

 この規則は最初、LMP1へのワークス参戦がトヨタのみとなった2018年のル・マン24時間レース期間中に、概要が明らかにされた(この時点では、導入は2020/21シーズンからを予定。その後新型コロナウイルス感染拡大の影響により2019/20シーズンが延長され、LMH採用は単年となる2021年シーズンからへと変更)。

 当初は市販ハイパーカーをベースにしたレーシングカー、ハイブリッドシステム搭載義務付け、車重は980kgといった規則だったが、翌年6月のル・マンでは一部内容の変更がアナウンスされる。マシンはハイパーカースタイルのプロトタイプも可、ハイブリッドシステムの搭載は自由、車重は1100kg、オートマチックBoP(性能調整)で性能均衡を図る……といった形となった。参戦ハードルを下げ、より多くのメーカーを呼び込む狙いである。なお、ハイブリッドシステム(を採用する場合)はフロントアクスルへの搭載に限定、最高出力は200kWという内容については変更がなかった。

 トヨタはこの2019年のル・マンで、LMH車両の開発・WECヘの投入を正式に表明する。

 だが2020年初頭、北米・IMSAのLMDh規定との“コンバージェンス”(収斂、収束といった意)が合意に達すると、LMH規則をめぐる状況はさらに変化していった。

 LMDh規定はLMP2のシャシーをベースとし、リヤに共通ハイブリッドシステムを搭載するのが最大の特徴だ。IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権での完全採用は2023年(当初は2022年)初頭となる見込みだが、両シリーズ間の合意により、このLMDh車両がWECのハイパーカー・クラスに出場できることとなった。

 この流れのなかでLMH規定にも変更が加えられていく。LMDhの規則詳細についてIMSAは2020年5月、最高出力は500kW、最低重量は1030kgなどと発表するが、WEC/ACO側はこれを受けLMHの最高出力と最低重量、空力性能を、LMDhに合わせる旨を発表している。

■市販ハイパーカー『GRスーパースポーツ(仮称)』との関係性
 なお、市販ハイパーカー『GRスーパースポーツ(仮称)』を開発中のトヨタだが、LMH規定においてはプロトタイプとしてレーシングカーを制作(市販型はレーシングカー発表以降に登録・販売)することを、2019年のLMH参戦発表時に明らかにしている。

 GRスーパースポーツについては、2018年の東京オートサロンでコンセプトカーの『GRスーパースポーツ・コンセプト』、およびそのテストカーが初めて公開され、TS050ハイブリッドと同様のレーシングハイブリッドを搭載することで話題を呼んだ。

 2020年のル・マン24時間レースの決勝直前、トロフィー返還セレモニーに最新型の開発車両が登場。この時点で、トヨタはこの市販車両の名称を『GRスーパースポーツ(仮称)』と発表した。なおTGRウェブサイト上では現在、この車両の発売年月日は『未定(現在、ご予約は受け受けておりません)』と記載されている。

 念のため再度確認しておくと、トロフィー返還セレモニーに登場した車両は『市販ハイパーカーの開発中車両』であり、『LMH規定で開発途中のレーシングカー』ではない。後者はその翌月である2020年10月、非公開でシェイクダウンされている。

 トヨタGAZOO RacingのSNS上で15日の発表が予告(※基本は英語でのみ)されているのはLMH車両についてだが、市販の『GRスーパースポーツ(仮称)』に関する発表が合わせて行なわれる可能性も残されている。LMH車両の詳細や参戦体制含め、15日の発表内容に期待したい。