2年ぶりに岡山国際サーキットで幕を明けた2021年のスーパーGT開幕戦は、14号車ENEOS X PRIME GR Supraの大嶋和也と山下健太の2019年チャンピオンコンビが、大混乱のピット作業から後半スティントの死闘を制し初優勝。TGR TEAM ENEOS ROOKIEもチーム結成後の初勝利となり、トヨタ勢のGRスープラが表彰台以下トップ4を独占する結果となった。

 名実ともに世界最速のGT車両規定を採用する2021年のGT500クラスは、フロントにエンジンを積むFR駆動方式採用のホンダNSX-GT、昨季デビューを飾ったTOYOTA GAZOO Racing(TGR)のGRスープラ、そして2008年から参戦を続けるR35型をベースとしたニッサンGT-R NISMO GT500の3車種が、現行規定2年目の戦いを迎えた。

 前日予選日の4月10日土曜から快晴に恵まれたサーキットは、午前と午後で対照的な展開を見せ、公式練習でトップ3を独占したホンダ陣営が午後に入ってまさかの失速。代わってGRスープラ勢が予選で躍進し、37号車KeePer TOM’S GR Supra以下5番グリッドまでを占拠する一方的な結果に。

 とくにポールシッターの37号車にとっては、昨年の最終戦でほぼレースを支配しながら、最終ラップの最終コーナーでタイトルを獲り逃した2020年の雪辱を晴らす、その第一歩として万全の準備が整った。

 対して6番手と7番手に並ぶ2台のダンロップタイヤ装着組NSX-GTや、ニッサンGT-R勢がファーストスティントでどこまで巻き返せるか。コース幅が狭くトラフィックの処理も難しい岡山ではアクシデント発生率も高まると予測され、序盤の混戦で戦況がどう動くかが見どころとなった。

 朝から降り注ぐ強い日差しを受け、13時30分のスタート前時点で路面温度は33度まで上昇。気温19度のコンディションのもと、15台のマシンがフォーメーションラップへと向かう。

 37号車KeePer TOM’S GR Supraのスタートを担当する阪口は、背後を固める14号車ENEOS X PRIME GR Supraの大嶋和也、36号車au TOM'S GR Supra関口雄飛、さらに39号車DENSO KOBELCO SARD GR Supraヘイキ・コバライネンに、38号車ZENT CERUMO GR Supra立川祐路といった錚々たる先輩ドライバーを従えながら、“GRスープラ・フォーメーション”を形成して1コーナーへと入っていく。

 オープニングは各車バックストレートでウィービング(クルマを左右に振る)を繰り返し、タイヤのウォームアップを助ける動きを見せるなか、12番グリッドからスタートした23号車MOTUL AUTECH GT-Rのロニー・クインタレッリがミシュランタイヤの素早いグリップ発動を活かし、一気に7番手までポジションを上げてホームストレートに帰ってくる。

 一方、1分21秒台前半のタイムを並べて後続を引き離したい37号車KeePer阪口だったが、14号車ENEOS X PRIMEの2019年チャンピオン大嶋がテール・トゥ・ノーズで揺さぶりを掛けてくる。

 その後方では、6周目のバックストレートエンドで速度を乗せた23号車MOTUL AUTECH GT-Rが、64号車Modulo NSX-GT伊沢拓也のアウトサイドから並び掛け、続くコーナーへのアウトイン入れ替えでオーバーテイクに成功。この際、64号車Moduloはフロントが軽く接触し、カナード類にダメージを負ってしまう。

 直後、GT300クラス車両がアクシデントによりヘアピン内側でストップしたため、この日最初のセーフティカー(SC)導入となり、早くもレースは仕切り直しに。

■レース後半は山下と坪井による同世代の激しいバトルが勃発
 トップ5は依然としてGRスープラ勢が固め、その背後にロニー・クインタレッリのGT-R、17号車Astemo NSX-GTベルトラン・バゲットの構図で13周目にリスタートが切られると、上位3台は再び1分21秒台でスパートを掛けていく。

 さらに10番手以下も縮んだギャップにより混戦となり、12号車カルソニック IMPUL GT-Rのスタートを託されたルーキー松下信治と、チャンピオンカーの1号車STANLEY NSX-GTを預かるベテラン、武藤英紀がポジションを入れ替えながらのバトルを繰り広げる。

 19周目にはグリップダウンが始まった10番手の64号車Modulo NSX-GTと、19号車WedsSport ADVAN GR Supraに対し、裏ストレート立ち上がりのアトウッドから大外を駆け上がった8号車ARTA NSX-GT野尻智紀が並び掛け、ヘアピン進入で一気にパスして9番手へと浮上。14番手スタートから意地の挽回を見せる。

 その後、膠着状態の続いた先頭集団は首位2台が1秒圏内での追走劇を続けるなか、ピットウインドウの開いた29周目にはコース上で12号車カルソニックの松下が動き、WedsSport ADVAN GR Supraの国本雄資をパスしてトップ10圏内に入ってくる。

 続く周回で64号車Moduloが最初にピットへ向かうと、31周目には19号車WedsSport、1号車STANLEYが続けてピットレーンへ。ここで山本尚貴はふたつポジションを上げてコースへと復帰する。

 そして33周目に1コーナーでGT300車両のクラッシュが発生したことで、上位8台までが一気にピットロードへとなだれ込む。そこでなんと、首位で飛び込んできた37号車が斜め止めストップし、ファストレーンに推し戻るタイミングで立ち往生。後からピットインした14号車ENEOS、そしてチームメイトの36号車au、さらに39号車DENSOに先を行かれ、37号車KeePerの平川亮は4番手にポジションダウンしてしまう。

 さらに後方ではホンダ陣営の16号車なども斜め停車のいわゆる“ダイブ”ストップを強いられ、GT300クラスも入り乱れて大混乱の様相を呈する。

 そのタイミングで2度目のSCが宣言され、ピットレーンクローズの状態に。しかし暫定首位に出た24号車リアライズコーポレーション ADVAN GT-R以外はピットストップを済ませているため、実質2番手の14号車ENEOS X PRIME GR Supraの山下健太がトップランナーに立つ。

 40周目のリスタート以降もステイアウトを選択した24号車リアライズに対し、GRスープラ軍団がラップあたり3秒速いタイムで次々と襲いかかり、42周目突入時点では4台ともにパスして陣営内で真剣勝負の舞台が整う。

 さらに4番手37号車KeePer平川は1分21秒034の全体ファステストで前の3台を追うも、トラフィックも絡んで前方2台が逃げを打ち、39号車DENSO KOBELCO SARD GR Supra中山雄一との表彰台争いを強いられる。

 その後方では47周前後からバトルが激化していたGT-R3台のポジション争いが接触の結末を迎え、23号車MOTUL AUTECH GT-R松田次生がリボルバーコーナーで8号車ARTA NSX-GTと接触してバランスを崩し、GT300とも接触。それを避けようと、12号車カルソニックの平峰一貴がスピンを喫し、このアクシデントでMOTUL AUTECH GT-Rは右フロントを破損。そのままピットガレージに収まってしまう。

 一方、56周目にはヘアピンでインに飛び込んだ平川が中山を仕留め、まずは3番手へ。ここから約20秒先に逃げている14号車ENEOS X PRIME、36号車auの2台を追う。その山下と坪井翔はコンマ差のテール・トゥ・ノーズでバトルを続けており、30周以上にわたって一歩も引かないドッグファイトを繰り広げる。

 ペースに勝る背後の坪井は66周目のヘアピン、71周目の1コーナーと再三にわたって山下に仕掛けるも、サイド・バイ・サイドで並ばれながらもこれを退け、ときには軽いコンタクトも伴いながら気迫の応戦でしのいでいく。

 そして迎えた75周目。再びアトウッドから車速を乗せ首位に並び掛けた坪井は、ヘアピンに向けアウト側から山下とのブレーキング競争に持ち込んでいく。しかし、バックストレートエンドで止まりきれず、ロックし白煙を上げながらアウト側のグラベルへとコースオフ。

 なんとかグラベルエリアから復帰して再び山下を追った坪井だったが、これで実質勝負あり。ENEOS X PRIME GR Supraが2021年オープニングラウンドを制し、TGR TEAM ENEOS ROOKIEは新体制となったチーム初戦で見事デビューウインをマーク。

 2位には8秒まで開いたギャップを1.187秒まで詰めた坪井のau TOM’S GR Supraが続き、3位にも同じくTOM’SのKeePer TOM’S GR Supraが入ってGRスープラがポディウムを占拠。

 4位DENSO KOBELCO SARD GR Supraの背後には、終盤68周目に38号車を仕留めてトヨタのトップ5独占を阻止した、塚越広大の17号車Astemo NSX-GTが入っている。