7月14日(水)から15日(木)にかけて、ラインランド-プファルツ州やノルトライン-ヴェストファーレン州等の西南部を中心に、多くの地方で豪雨により洪水をともなう甚大な被害に見舞われているドイツ。またベルギーやオランダ、ルクセンブルクでも多くの被害が出ているが、モータースポーツ界ではニュルブルクリンクの周辺、スパ・フランコルシャンでも大きな被害が出ている。

 ニュルブルクリンクが位置するラインランド-プファルツ州のうち、ニュルからほど近いアールヴァイラー地区は、今回の豪雨のなかでも最も大きな被害を受けており、多くの家屋が流され多数の死者や行方不明者に加え、家屋に取り残されている人たちも大勢おり、現在もその救助活動が懸命に行われている最中だ。

 ニュル自体には被害はなかった模様だが、アールヴァイラー地区やアイフェル地方に災害緊急事態宣言が発令され、消防や救急、警察や軍隊は地域の人命救助や保護が優先されるべきとして、この週末に予定されていたADAC・トラックグランプリは中止が決定した。すでにトラックGPに参加するチームのトランスポーターやタイヤサービスがパドックへの入場待ちをしていた状態だったが、ニュルのグランプリサーキット周辺はそれほど強い雨ではなかったため、チーム関係者も驚きを隠せなかったようだ。

■ニュルブルクリンクでは災害支援に動く
 また、ニュルブルクリンクGmbHでは、例年ニュル24時間のレース後に表彰パーティが行われるビットブルガー・イベントセンターで、15日に地域の災害ボランティアセンターを開設し、衣類や靴、日用品、衛生品等の物資の提供受付や希望者への受け渡しのほか、それらの受付や仕分けをするボランティアスタッフをFacebookで募る等、被災した地域のために即座に24時間体制で活動を開始した。

 一方、同敷地内にあるリントナーとドリントのふたつのサーキットホテルでは、被害が出始めた14日の夜から、自宅が濁流で流されたり、浸水してしまい行き場がなくなり困っている人、また自宅にいることが危険な人にも避難所として無償でホテルの客室を提供することを発表し、24時間体制でいつでも訪れることができるよう、被災者へ人々に手を差し伸べている。

 ニュルブルクリンク近郊のアデナゥの町では、14日の午後からすでに浸水しはじめ、瞬く間に水位が上昇した。現在もなお、停電や断水、通信障害で電話もインターネットも通じない地域もあるようだ。かろうじて通信機器に障害が起きなかったホテルや商店等は、困っている人々にフリーWiFiのパスワードや消息を知らせるホットラインのフリーナンバーを貼り付けたり、日中最高気温が20℃を下回り、寒いなかで避難する人々や救援救助作業をする人々のために協力し合っている。

 2020年に亡くなったニュルを代表する女性ドライバー、ザビーネ・シュミッツの母親が経営するホテル・ティアガルテンなどニュル周辺のホテル、サーキットホテル同様に、被災を免れた個人経営のホテルやペンション、民泊でも被災者の宿泊受け入れや温かい食事の提供が行われているほか、地元の銀行やロータリークラブ等を通じて被災者への募金活動が開始された。

 ニュル近郊を含め、ラインランド-プファルツ州やノルトライン-ヴェストファーレン州では多くの道路が破損や冠水により通行止めとなっているが、現時点では郵便や宅配便の復旧の目途がつかず、宿泊施設は被災者が利用すべきという観点から、宿泊を伴う作業ボランティアの手伝いに行けない遠方にファクトリーを置くレーシングチームは、ファンや他のチームからの寄付の物資を集約してトランスポーターに積み、ニュルへ届ける準備をしている最中で、道路事情や安全状況を確認して出発をする予定だという。

■スパ・フランコルシャンでもサーキット内に被害
 今回の豪雨災害は隣国のルクセンブルグ、ベルギー、オランダでも大規模な被害が出ており、ベルギーのスパ・フランコルシャンでは、コース上や低い位置にある旧パドック、その周辺道路が冠水。樹々がなぎ倒され、道路も崩壊する等、甚大な被害を被っている。

 特にスパでは、高速コーナーのブランシモンからパドックへ向かうアクセスロードが崩壊。通行できない状態になっているという。スパ・フランコルシャンによればコース自体は被害を受けていないというが、樹木が倒れる危険があることから安全フェンスの交換、コース上の安全のためのデジタル設備の点検などが必要で、サーキットでは週末から作業を開始する。

 また、スパ・フランコルシャンでは今回の豪雨災害で被害を受けた人々への支援を提供する用意もあるとしているが、6月初旬にも豪雨による被害を受けており、その翌日には即座にアスファルトを張り替える等の改修を行ったばかりだっただけに、今回の被害の痛手は大きい。7月29日〜8月1日にはトタルエナジーズ・スパ24時間が控えているだけに、二次災害を防ぎながらも急ピッチの修復作業が行われる模様だ。