2021年ERCヨーロッパ・ラリー選手権も折り返しの第4戦となる8月27〜29日開催のバルム・チェコ・ラリー・ズリンを控え、この伝統のターマック戦には、地元盟主で同ラリー通算8勝、現在5連勝中と無類の強さを誇るヤン・コペッキー(シュコダ・ファビア・ラリー2エボ/アグロテック・シュコダ・ラリーチーム)や、クレイグ・ブリーンの代役としてWRC3チャンピオンであるヤリ・フッツネン(ヒュンダイi20 R5)がチームMRFタイヤに招集され新たにタイヤ開発を担うなど、多くのスタードライバーが集結している。

 そんななか、今季もここまで1ポイント差でアンドレアス・ミケルセン(シュコダ・ファビア・ラリー2エボ/トクスポーツWRT)とのタイトル争いを展開していた現ERCチャンピオン、アレクセイ・ルカヤナク(シトロエンC3ラリー2/サンテロック・ジュニアチーム)が木曜のシェイクダウンテストで大クラッシュを喫し、ラリー開始を待たずに撤退を決めるという窮地に陥っている。

 今回で記念すべき第50回大会を迎えるというラフな舗装路を特徴とした同ラリーは、例年より若干のルート短縮や修正が図られながらも、いつもどおり首都プラハから南に300km離れたモラヴィアの大学都市を拠点とする全15ステージ、210.92kmのSS総距離が設定された。

 2004年のERC復帰以降、昨年の新型コロナウイルス(COVID-19)の影響によるキャンセルを除いて欠かさず開催されてきた伝統の1戦には、この2021年大会も国内選手権を合わせて146台のラリーカーが集結。そのうちERC登録は61台を数え、2017年のここチェコでタイトルを確定させたダブルERCジュニアチャンピオンのマリアン・グリーベルなどは、今回2輪駆動部門のERC3クラスにオペル・コルサ・ラリー4でエントリーし、一方でトップカテゴリーのラリー2規定マシンは29台と、人気イベントぶりを証明する台数が集った。

 そんななか、ERC2冠を誇るディフェンディングチャンピオンであり、現在のERC選手権リーダーでもある“ロシアンロケット”ことルカヤナクが、本格的なイベント開始前となる木曜午前のテストで、まさかのエラーによりマシンを大破。

 彼のシトロエンC3 Rally2はロールケージも含めてひどく損傷し、交換用車両の搬送も難しいことから同イベントへのエントリーを取り下げる判断が下された。

■インド製タイヤでのラリーを「楽しみにしている」とWRC3王者

 このクラッシュに際して、シトロエン・レーシングは「アレクセイ・ルカヤナクとアレクセイ・アルナウトフのふたりは、テスト中に発生したアクシデントのため、今週末のラリーをスタートしません。クルーのふたりは“OK”です」と、短い声明文を発表している。

 これで2016年にここで死闘を繰り広げたライバルが不在となった“ターマック・マイスター”のコペッキーだが、2013年のERCチャンピオンも「勝つことが目標だが、明らかにそれは簡単な仕事ではないんだ」と、依然として慎重な姿勢を崩さない。

「僕は最近、かつてほど頻繁にはラリーに参戦する機会を設けていないからね。地元チェコとハンガリーの国内戦だけで、世界戦やヨーロッパ選手権を追ってはいないから、このレベルでの戦いは厳しいものになるだろう」

「このバルムはドライでも難しいのに、雨が降ると非常に滑りやすく、グリップがcm単位で変化するため、さらに難しくなるんだ」と、天候変化の要件も指摘した“モラヴィア・マスター”のコペツキー。

「天気が一定であれば、僕にとっても楽になる。ドライでもウエットでもね。でも、天候が変わりやすい場合は、特にタイヤの選択に関しては注意が必要だね」

 一方、現役王者がクラッシュに消えたシェイクダウンで、MRFタイヤのターマック・スペックを初体験したフッツネンは「これが初ドライブだったが、そのグリップと感触には本当に感銘を受けた」と語り、進化を続けるインド製タイヤでのラリーを「楽しみにしている」と抱負を述べた。

「僕は今回、タイヤ開発を手伝うためにズリンに来たんだ。主な目的はタイヤの開発に関するデータを取得することで、まずはチームに貢献するという明確な目標を念頭に置いてドライブするつもりだ」と続ける現WRC3チャンピオン。

「2017年にここでジュニアタイトルを獲ったけれど、難しいラリーであり、天候も影響する。このユニークな1戦でデータを取得することは、僕にとってもチームMRFタイヤにとっても重要だ。ミスなくフィニッシュしたいと思っているよ」

 そして、王者ルカヤナクと1点差でERCのタイトル争いを繰り広げるミケルセンも、この週末からコドライバーをスイッチ。2006年から連れ添ったオラ・フローネに代わり、ヨナス・アンダーソンとともに難攻不落のターマック戦に挑むこととなる。