オーストラリア大陸が誇る人気ツーリングカー選手権、RSCレプコ・スーパーカー・チャンピオンシップが2022年の導入を予定する“Gen3”と呼ばれる新車両規定に向け、シリーズの魂とも言うべきV型8気筒の新スペックエンジンのテストがスタート。ゼネラルモータース(GM)傘下のブランド、ホールデン陣営でホモロゲーションチームとして戦うトリプルエイト・レースエンジニアリングが、テスト用のミュールカーを使用してクイーンズランド・レースウェイでのシェイクダウンを実施した。

 この5月にも新規定対応のローリングシャシーを公開しているスーパーカー・シリーズだが、8月の最終週になっていよいよGen3規定対応の新開発V8のトラックテストに漕ぎ着けた。

 地元チューナーであるKREレース・エンジンズが手掛けたGM製V8エンジンは、北米のトランザム・シリーズに準じた『オーストラリア・マッスルカー・シリーズ』で使用されるTA2規定車両に搭載され、この『メルセデスAMG C63』のボディカウルを架装したミュールカーを、現RSCシリーズリーダーの“SVG”ことシェーン-ヴァン・ギズバーゲンがドライブした。

 現在シリーズで使用されている“カー・オブ・ザ・フューチャー(COTF)”規定をベースとした“Gen2”のエンジンは、7500回転上限で公称645PS以上を発生するものの、シーズン中にも4000kmごとのオーバーホールを必要とするハイチューン・エンジンとなっている。

 その点に関して、シリーズのモータースポーツ部門責任者であるエイドリアン・バージェスは、新しいGen3のルールセットが現行エンジンに対し「2倍の寿命をもたらすことになるはずだ」と説明する。

「すべてを一新する必要があるんだ」とシリーズ公式サイトの『supercars.com』に語ったバージェス。「我々は自分たちがしていることを改善し、チームにとってスポーツをより持続可能なものにする必要がある。このエンジンの要件は、運用面でのライフを2倍に伸ばすことだ」

 新規定Gen3車両のキーポイントは、現行モデルに比べダウンフォースが約200kg減少すると同時に、車両重量も100kg削減。燃料タンク容量を拡大しつつ、寸法面でも全高/全幅ともに100mmほど低く、より拡幅され、こちらはモステック・レースエンジンズが開発するV8を搭載予定の『フォード・マスタング・スーパーカー』と、新型『シボレー・カマロZL1スーパーカー』は、ともにロードカーとの“スケーリング上の相関”を強めることになる。

■「出力を抑えても、現行マシンと同じくらいの速度で走らせることは可能」とバージェス
 そしてレース運用面に目を向けると、ダウンフォース総量はおよそ60〜70%のオーダーで大幅に低下し、ブレーキング競争によるオーバーテイクの機会を演出するとともに、バージェスによれば「馬力がさらに低下しても、マシンの速度は低下しない」方向になるという。

「650PSも絞り出す必要はないんだ。エンジン出力を500〜600PS程度のパワーに抑えても、現行マシンと同じくらいの速度で走らせることは可能だ。ダウンフォースとドラッグの量を取り除けば、例えばコンロッドストレート(マウントパノラマのバックストレート。現行規定車は300km/hを超える)でも同じトップスピードを記録するはずさ」と続けるバージェス。

「エンジンから50〜60PSを削減することで、わずかに異なるアーキテクチャーを採用できるようになり、エンジンの耐用年数とメンテナンス寿命を長くすることが可能になる。600PS級を狙いつつ、1万km以上のライフサイクルを目標にしている」

 これにより、各チームはエンジンのオーバーホールに掛かる間隔を長くでき、参戦コスト削減に繋がるのと同時にシーズン全体で信頼性を高めるのに役立ち、マニュファクチャラーにとってもより市場に関連する方向となる。

「現時点で、エンジンは最後の“1インチ以内”にストレスがかかっている」と続けたバージェス。

「長期間にわたる開発作業で高度に微調整されたエンジンは、正直に言って世界で最も高度に開発されたV8と言っても過言じゃない。以前は2000kmにも満たない距離でエンジンを交換していたが、今では5000kmを可能にするエンジンを4000kmごとにリビルドして使っている。しかし、そのさらに先を目指す必要があるんだ」

 バージェスはまた、その新エンジンが発生するサウンドに関しても、今回のテストで使用したTA2シャシーとはマウント方法が異なることから「Gen3マシンのサウンドはよりラウドになるだろう」と語っている。

「今回のTA2の配置により、実際のサウンドは異なる。エアボックスが異なり、エキゾーストも異なるからね」とバージェス。

「吸気音がはるかに少ないというだけで、エンジンの音は慣れ親しんだものと違う雰囲気を漂わせるね。我々としては、現在設計している排気システムに満足しているし、エキゾーストの長短を変更したり、特定のトラックではマフラーなしの運用を実現する機能もある。現状、その音量に不満を示す要素はどこにもないけれどね!」