NTTインディカー・シリーズは9月に入って最後の西海岸3連戦でシーズンのフィナーレを迎える。昨シーズンは西海岸のレースはすべてコロナ禍の為にキャンセルされており、今年は2年ぶりの開催だ。

 3連戦最初のレース、ポートランドは、2018年に佐藤琢磨がレイホール・レターマン・ラニガンに移籍してから最初に勝ったレースだった。20番手グリッドから、ピットステラトジーを巧みに変えて、2ストップ作戦で勝利していた。

 9月の西海33連戦のうち、ポートランドとロングビーチは優勝経験のあるサーキットだけに、シリーズの最後にひと花咲かせて欲しいところだ。

 だがそんな我々の期待をよそに、琢磨は出だしから躓いてしまった。

 今年のポートランドは2デイのレースだったが、初日のプラクティスが始まるやいなや、エンジンから異音が発生しピットに戻ることになってしまった。

「エンジンは換えたばかりでした。インスタレーションラップは問題なかったんですけど、もう一度コースに出たら異音がして戻ってきました。テレメトリーでは問題ないって言うんですけど、確認のためコースに戻ったらやっぱりだめでした」と言う琢磨。

 チームはまもなく始まる予選に間に合わせるために、早速エンジンの換装作業を始めた。

 2時間あまりのインターバルの後、いきなり予選のタイムアタックに出ることになった琢磨。チームメイトのプラクティスでのデータを参考にしてセッティングを施し、ブラックでタイムを出した後、レッドでタイムアタックをすると、59秒1953のタイムをマークしたが、Q1突破まで0.2秒足りずグループ12番手。

 さらにエンジン交換のペナルティで26番手となり今季最後方グリッドでのスタートとなってしまった。もうここからは下がる心配はなく上がっていくだけだ。

 スタートでは例年のようにシケインとなるターン1〜ターン2で多重クラッシュが発生する。

 ポールポジションのアレックス・パロウ(チップ・ガナッシ)、チームメイトのスコット・ディクソン、フェリックス・ローゼンクヴィスト(アロウ・マクラーレンSP)らが勢い余ってターン1に進入できずシケイン侵入を回避すると、後続でエリオ・カストロネベス(メイヤー・シャンク・レーシング)、リナス・ビーケイ(エド・カーペンター・レーシング)、ウィル・パワー(チーム・ペンスキー)を巻き込むアクシデントに。

 琢磨はこの混乱を避け切り17番手に浮上。さらにシケイン不通過のマシンにペナルティが出されて、琢磨は期せずして12番手までジャンプアップすることになった。


 ブラックタイヤでスタートしていた琢磨は、燃料をセーブしながらポジションを上げ一時は2番手まで浮上する。

「今年のレースは105周から110周になって、2ストップでは燃料が足りない。だけどそのまま3ストップで勝負しても、ポジションは上げられないので、あえてダウンフォースをギリギリまで減らして、2ストップで行こうと思っていました」

 最初ピットの後はしばらく8番手を維持していたが、2度目のピットの後に順位を落とすことになった。最初のアクシデントで後方に落ちた上位陣はイエローコーションの間に燃料の補給とタイヤ交換を済ませ3ストップにしており、琢磨やジョゼフ・ニューガーデンなど2ストップ作戦のマシンを抜いていく。


 レース終盤ではもう作戦の変更をする手段はなく、琢磨は12番手となったままチェッカーを受けることになった。

「今日は厳しかったですね。ブラックタイヤで引っ張るのは作戦通りだったんですが、上位のドライバーがペナルティで後ろに下がって3ストップにしてくるのは、予想外でした」

「最後尾に近いところでしたから、ライバルと同じ作戦にしても順位が上がらないので、ダウンフォースをギリギリまで落として、直線番長で勝負していました(笑)」

「その分ブレーキも効かなくなるし、高速コーナーも本当にギリギリの走りでしたね。でもインフィールドでペンスキーのマシンを抜けたり、いいバトルもありました。力強い走りができたのに結果に繋げられなかったのは残念ですが、マシンは良くなってきているし、残りは2レースになってしまいましたけど、頑張りたいと思います」

 琢磨の26番手から14ポジションアップは、ジャック・ハーベイの16ポジションアップに続いて2番目のゲイン。週末の不運なスタートを考えると大健闘だったが、今もう何も起きずにレーススタートを迎えられればと願わずにいられない。