10月1〜3日にかけて、フィンランドのユバスキュラを中心にWRC世界ラリー選手権第10戦フィンランドが開催された。TOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラムに参加し、『トヨタ・ヤリスWRC』でシリーズに参戦している勝田貴元は“第2の地元戦”である『ラリー・フィンランド』に挑み総合37位でフィニッシュした。

 開幕から6戦連続入賞を果たし、ケニアの“サファリ・ラリー”では総合2位表彰台を獲得したものの、その後は不運が続き第9戦ギリシャでは、コドライバーのキートン・ウイリアムズが家族の事情により急きょ出場できなくなったことから出場を断念していた勝田。

 そんな彼にとって今戦は“ホームイベント”と呼べるもの。なぜなら現在、勝田の生活拠点がユバスキュラにあるためだ。それだけに、このラリーに対して特別な思いを抱き、キャリアベストのラリーとするために準備を進めてきた。
 
 その一環として負傷中のダニエル・バリットの代役を務めたウイリアムズに代わる新しいコドライバーを招聘。アイルランド出身で、直前までオリバー・ソルベルグ(ヒュンダイ・モータースポーツ育成ドライバー)のコドライバーを務めていたアーロン・ジョンストンを迎えている。

 新コンビで挑む今季のラリー・フィンランドは例年とは異なる秋開催となり、気温や路面コンディションが従来の大会と比べて大きく変化。また、路面がやや湿り気を帯びているため、グリップが全体的に低下し非常に滑りやすいセクションも多く、WRカーで初めてこの大会に臨む勝田にとっては、その点も新たなチャレンジとなった。

「ラリーのスタートは、ステージ優勝という形で非常にうまくいきました。短いステージでしたが、それでも最速タイムを出せたのは良かったです」とのコメントにあるように、勝田はラリーのオープニングステージとなったユバスキュラ市街地でのSS1でベストタイムをマーク。幸先の良いスタートを切った。

 しかし、続く森林ステージのSS2で高速スピンを喫してしまう。幸いマシンにダメージはなかったものの、このスピンで大きくタイムを失った勝田はその後も思うようにペースを上げることができなかった。このことについて彼は、「最初の森林ステージでかなり危ない瞬間があり、その後自信とフィーリングを取り戻すのに苦労しました」と語っている。

 総合8番手で迎えた土曜日、この日最初のSS7を王者セバスチャン・オジエ(トヨタ・ヤリスWRC)に次ぐ8番手タイムで終えた勝田だったが、2本目のSS8でコースを外れクルマをコース脇の岩にヒットさせてしまう。このアクシデントでヤリスWRCの右リヤサスペンションが破壊されたため、勝田/ジョンストン組はデイリタイアを余儀なくされた。

■「全体的には残念な週末でしたが、これがモータースポーツ」

「土曜日のステージではもう少しプッシュしようとしたのですが、出走順が早かったため簡単にはいきませんでした」と勝田。

「SS8では、途中の区間タイムは良かったのですが、フィニッシュ前の高速コーナーが予想以上に滑りやすく、コースから少しはみ出て岩に当たってしまい、ストップせざるを得ませんでした。日曜日に再スタートできるように、クルマを直してくれたチームに感謝します」

 競技3日目に再出走を果たした勝田は、出走順がトップとなった影響で路面が非常に滑りやすい状態にあったが、それでもパワーステージを含む2本のステージで4番手タイムを刻み、ボーナスの選手権ポイント2点を獲得。最終日に本来の速さを示し、ポジティブなかたちでラリーを締めくくっている。

「日曜日は出走順がトップでしたが、タイムは決して悪くありませんでした」とデイ3を振りかえった勝田。

「全体的には残念な週末でしたが、これがモータースポーツですし、将来に向けてさらに学びを深めたいと思います」

 プログラムのインストラクターを務めるユホ・ハンニネンは、「(勝田)貴元はこのラリーに大きな期待を寄せていたが、新しいコドライバーと初めて仕事をするという意味で、フィンランドは理想的な環境とはいえなかった」と述べた。

 また、同氏は「(勝田が)ここ最近のラリーでヤリスWRCに乗る機会が少なかったこともあり、走りのフィーリングを少し失っていたようにも思う」と続けた。

「しかし、金曜日にスピンをした後は、徐々に自信を取り戻していったし、すべての状況を考えるとなかなかのタイムが出ていたように感じる」

「土曜日に入るとスピードが上がり始め、パイヤラのステージの区間タイムはかなり良く、好タイムを期待できそうだった。だが、残念ながらジャンプの着地でコースからはみ出し、大きな岩に当たってデイリタイアを余儀なくされた」

「それでも、日曜日の再出走を強く望み、もっと走りたい、アーロン(・ジョンストン)との経験を多く積みたいと貴元が思えたのはいいことだ。実際、最終日のタイムは良かったし、何よりもアーロンとの仕事がうまくいったことは大きな収穫だった」

 今戦終了後、ポイントランキングの順位をひとつ下げた勝田。彼が挑むWRCの次戦第11戦スペインは10月14〜17日、スペインのサロウを中心に開催される。ラリー・フィンランドと同じく2年ぶりに行なわれる『ラリー・スペイン』はターマック(舗装路)で争われるイベントであり、サーキットレース出身の勝田にとっては実力を発揮しやすいラリーといえる。