10月9〜10日、DTMドイツ・ツーリングカー選手権第8戦がドイツ・ニュルンベルクに位置するノリスリンクで行われた。4名のドライバーによるタイトル争いを制したのは、マキシミリアン・ゲーツ(メルセデスAMG・チームHRT/メルセデスAMG GT3)だった。

 2021年最終ラウンドの舞台は1周2.3kmのストリートコース。当初、伝統である7月上旬の開催が予定されていたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、本来の最終戦であるホッケンハイムの翌週に延期となっていた。中核都市であるニュルンベルク市内からのアクセスも良いノリスリンクには、多くの観客がDTMの“フィナーレ”を見届けに集結した。

 前戦ホッケンハイムを終え、ランキングではリアム・ローソン(レッドブルAFコルセ/フェラーリ488 GT3 Evo)が206ポイントでトップ。2位に192ポイントのケルビン・ファン・デル・リンデ(アプト・スポーツライン/アウディR8 LMS)、3位に180ポイントのゲーツ、4位に165ポイントでマルコ・ウィットマン(ワーケンホルスト・モータースポーツ/BMW M6 GT3)が続いており、タイトル争いはこの4人に絞られていた。

 なお、この最終戦ではアルファタウリAFコルセのフェラーリ488 GT3 Evoで、今季これまでステアリングを握ってきたアレックス・アルボンに代わってニック・キャシディが初めて参戦。さらに前戦ホッケンハイムと同様に、アプト・スポーツラインのアウディR8 LMS GT3でルーカス・ディ・グラッシがスポット参戦している。

 気温10度と寒いコンディションとなった土曜日のレース1予選では、ローソンが48秒720でポールポジションを獲得。逆転タイトルを狙うケルビンがコンマ1秒差で2番手につけた。

 以下、ルーカス・アウアー(メルセデスAMG・チーム・ウィンワード/メルセデスAMG GT3)、アルジュン・マイニ(メルセデスAMG・チーム・ゲットスピード/メルセデスAMG GT3)、ゲーツ、フィリップ・エリス(メルセデスAMG・チーム・ウィンワード/メルセデスAMG GT3)、ダニエル・ジュンカデラ(メルセデスAMG・チーム・グループエム・レーシング/メルセデスAMG GT3)、キャシディと続くトップ8のオーダーとなった。ウィットマンは19番手に沈んだ。

 決勝レースは通常どおり55分+1周。コース全長が短いことから、レース中に一度義務付けられるタイヤ交換作業を行うとほぼ1周分のタイムをロスするというノリスリンク特有の条件のなか、レース1がスタートした。

 スタート直後の1コーナーでは、逆転タイトルを狙うケルビンがローソンのインへ飛び込む。しかし止まりきれず、大きくポジションを落としてしまう。マイニと接触があったローソンは2番手に後退し、トップに立ったのはエリスだった。1周目を終えると、エリス、ローソン、キャシディ、ゲーツ、マイニ、アウアー、ケルビンというオーダーに。

 4周目、ゲーツがキャシディをパスして3番手へ。続いて7周目には最終コーナーでローソンのインに飛び込み2番手に浮上すると、10周目にはエリスから首位の座を譲られる形に。トップに立ったゲーツは、後続を引き離していった。

 その後はゲーツを護衛したい2番手エリスと、前を追いたいローソンがポジションを争う展開となるが、エリスが絶妙な押さえ込みを見せ、こう着状態となる。エリスを先頭とした車列のなか、ケルビンがアウアーをパスし6番手にポジションアップを果たす。

 22周目、ローソンがシケインでエリスのインを突くが、接触しエリスがスピン。ローソンは2番手に浮上する。

 直後に6番手のケルビン、そして翌周には首位ゲーツと2番手ローソンが同時にピット作業を行った。ここでゲーツはバーチャルの首位を死守。さらに次の周、アウアーがピットアウトするとローソンの目前でピットアウトしジャンプアップ成功かと思われたが、ローソン、そしてケルビンに先行を許した。

 その後、遅れてピット作業を行ったマイニもローソンの前でコースイン。実質の2番手となり、首位ゲーツのためにローソンを封じ込める役割を担うこととなった。

 レース時間残り1分というところまでピットを引っ張り暫定トップに立っていたキャシディが作業を終えると、実質4番手のケルビンの前へ。ケルビンを抑えることができればローソンのサポートになったが、アウトラップの最終コーナーでケルビンに先行を許す。

 結局、レース1はゲーツが独走で優勝。後続を封じ込めたマイニが2位で初表彰台、3位にローソン、以下ケルビン、キャシディ、アウアー、ジュンカデラというリザルトになった。

 このレース1の結果により、ノーポイントに終わったウィットマンのタイトルの可能性は消滅。ローソンがポイントリードを伸ばしたため、ケルビンとゲーツはレース2で勝利することがタイトルへの最低条件となった。



■レース2:前日の再現のようなターン1。ローソンが一気に最後尾へ転落
 日曜のレース2予選では、2戦連続でローソンがポールポジションを獲得し、タイトル奪取へ一直線。しかし2番手にはまたしてもケルビンが並び、3番手にはキャシディがつけた。以下、アウアー、エリス、ジュンカデラ、マイニ、ゲーツというトップ8となった。

 2周のフォーメーションラップのあと、この日もローソンが好スタートを決める。そして1コーナーではケルビンが前日以上の飛び込みを見せた。

 縁石の内側からローソンのインを突いたケルビンだったが、止まりきれずに両者は接触。さらにローソンはアウト側にいたキャシディとも接触し、フェラーリの2台はアウト側の縁石外側に、コンクリートウォールを向いて止まってしまう。リバースギヤに入れ、キャシディから順にリスタートをする必要があり、ここでローソンは最後尾へ転落。その後、2度ピットイン/アウトを繰り返し、レーシングスピードを失いながらも周回を重ねていった。

 1コーナーでの混乱により、トップに立ったのは4番手スタートのアウアーだった。2番手にはケルビンをパスしたエリスがつけ、ケルビンの背後にはタイトルを争うゲーツが浮上してきていた。

 ここで、1コーナーでの件でケルビンには5秒加算のペナルティが発出される。ワン・ツーがいずれもメルセデスとなったため、ケルビンは背後のゲーツをどうしても押さえ込む必要に迫られていた。

 こう着状態となった3番手争いを動かすべく、先に動いたのは背後のゲーツ。タイヤ交換を終え、ちょうどケルビンの鼻先でコースに戻ったゲーツだったが、すぐにかわされラップダウンとなってしまう。1周の差はあれど、ピット前と変わらぬ見た目の位置関係で、タイトル争いは続いた。

 アウアーとエリスもピットへ向かうと、ケルビンが見た目上の首位に浮上する。残り13分、背後のゲーツを少し引き離したケルビンは、ようやくピットへ。5秒のペナルティを消化したあとにタイヤ交換を行い、なんとかゲーツの前でピットアウト。そのまま2台のバトルは約2周にわたって続いた。

 しかし、最終コーナー立ち上がりでケルビンの左リヤとゲーツの右フロントが接触。この影響かケルビンの左リヤタイヤが破損し、シケインでスピンを喫してしまう。ケルビンはピットへと向かい、ポイント圏外へ転落した。

 これでケルビン、ローソンともにノーポイントとなることがほぼ確定。優勝すればタイトル獲得という状況のゲーツの目前には、2台のメルセデスがいるのみとなった。最後までピットストップを引っ張っていたキャシディも、ゲーツの前でのコース復帰はかなわず、ローソンを援護することはできなかった。

 残り3分、エリスにポジションを譲られたゲーツは2番手に。さらに首位を独走していたアウアーも明らかにペースを緩め、ゲーツを先行させる。キャシディは前をゆくメルセデス勢をなんとか抜こうと奮闘するが、激しいポジション争いのなかで接触を喫してしまった。

 これで楽になったゲーツが花火の上がるなかトップチェッカー。大逆転で2021年シーズンのドライバーズタイトルを決めた。レース2の2位にはアウアーが入り、マキシミリアン・ブーク(メルセデスAMG・チーム・ミュッケ・モータースポーツ/メルセデスAMG GT3)が3位で今季初表彰台を獲得。4位には今季限りでアウディを離れることを表明しているマイク・ロッケンフェラー(アプト・スポーツライン/アウディR8 LMS)、以下ジュンカデラ、マイニと続いた。

 ランキングではゲーツが230ポイントで王者となり、ローソンは227ポイントと惜敗する結果となった。レース後、ローソンは涙を見せながらシリーズ表彰に臨んだ。

「全力を尽くし、常にプッシュしていた」とゲーツ。

「どんなことであれ、チャンスは利用するつもりだったけど、最終的にはうまくいった。予選は僕らの弱点だけど、またしてもピットストップは僕らの強みとなった」

 ゲーツとは対照的に、ローソンは失望と怒りにあふれていた。

「もちろん、とても残念だし、ひどく打ちのめされている。僕らのチームは、タイトルに値する働きをした。同じドライバーに、またしてもコース外に追いやられた。しかもレースの1周目のターン1でのことだ。なんと言えばいいんだ」

 なお、チームタイトルはローソン、アルボン、キャシディがドライブしたレッドブル・アルファタウリAFコルセが獲得。マニュファクチャラーズタイトルはメルセデスAMGのものとなった。