ルイス・ハミルトン(メルセデス)がF1第19戦ブラジルGPの初日にパワーユニットのICE(内燃機関)を交換した。ハミルトンはすでに第16戦トルコGPで4基目のICEを投入しているので、今回の5基目の投入によって、5グリッド降格が決定している。

 ハミルトンが今回のブラジルGPで5基目のICEを投入するのではないかという噂は、以前から囁かれていた。その理由はふたつある。

 ひとつは、今回のブラジルGPでF1は3回目のスプリント予選を実施することになっていたからだ。スプリント予選は、土曜日の午後に行われる100kmのレース形式の予選である。そして、そのスプリント予選には、ほかのグランプリとは異なるシステムとポイントルールがある。

 ICE交換による5グリッド降格ペナルティは、金曜日に行われる予選で得たポジションには関係なく、土曜日のスプリント予選後の順位に対して、5グリッド降格となる。つまり、ハミルトンはグリッドペナルティを受けることなくスプリント予選に参加でき、トップ3以内でフィニッシュすれば、1〜3点のポイントを獲得できる。

 次にインテルラゴス・サーキットは、じつはメルセデス向きのコースとなっていることだ。

 2年前のブラジルGPでは、ホンダ・パワーが炸裂し、レッドブルだけでなく、アルファタウリの前身のトロロッソもメルセデスを抑えて2位を獲得したことで、戦前はホンダ勢に有利だと思われていたが、いまはメルセデスが使用していると言われている新しいデバイスによって、メルセデス向きのコースとなっている。

 そのデバイスとは「ストレートで車高を下げる特殊なリヤサスペンション・システム」だ。これによって、メルセデスはラップタイムに大きな影響を与える低速区間のセクター2に合わせてリヤウイングを立てつつ、ストレート区間では空気抵抗を軽減してトップスピードを稼ぐことができるようになった。

 これにより、たとえ5グリッド降格しても、レースで挽回することは十分可能だと、メルセデス陣営は踏んだのではないかと考える。

 金曜日の予選でハミルトンに約コンマ4秒離されて2番手に終わったマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)も、メルセデスの逆襲を予測していたようだ。

「彼らは今回新しいエンジンを使用してきたので、こうなることはある程度予想していた。だから、それほどショックは受けていない。むしろ2番手になれてうれしい。いいポジションからスタートできるからね」

 フェルスタッペンにとって、このブラジルGPで最も警戒しなければならないのがハミルトンよりも、そのチームメートのバルテリ・ボッタスだからだ。というのも、スプリント予選をこのままの順位でフィニッシュできれば、フェルスタッペンは労せずして日曜日のレースをポールポジションからスタートできる。しかし、もしスプリント予選でフェルスタッペンがボッタスの後塵を拝すれば、ハミルトンとのポイント差が縮まるだけでなく、日曜日のレースもボッタスに頭を押さえられ、後方からハミルトンに迫られることになる。

 したがって、レッドブル・ホンダとフェルスタッペンにとって重要なのが、スプリント予選のスタートでグリッドペナルティが決定しているハミルトンの前に出ることではなく、ひとつ後ろからスタートするボッタスを絶対に前に出さないことになるだろう。