過去の戦績、直近数戦の戦いぶりから、2021年F1第19戦ブラジルGPはレッドブル・ホンダの優位を予想する声が多かった。ところが実際には初日からメルセデスの速さがレッドブル・ホンダを圧倒、ルイス・ハミルトン(メルセデス)はグリッド降格ペナルティ、予選失格のハンディキャップを跳ね返し、マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)をコース上で抜き去って今季6勝目を挙げた。

 そんなブラジルGPをホンダF1田辺豊治テクニカルディレクターは「メルセデス、ハミルトンの速さが完全に上回っていた」として、「非常に大きな1敗だった」と総括した。

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──決勝レースは、少なくとも序盤は有利な展開で進んでいました。

田辺豊治テクニカルディレクター(以下、田辺TD):はい。フェルスタッペン、(セルジオ・)ペレスの2台が、スタート直後に1-2を奪うことができました。しかし中盤以降は、昨日のスプリント予選からとんでもない速さを見せていたハミルトンに迫られ、抜かれてしまいました。

 我々は最高の形で結果を引き出せたとは思いますが、完全に力負けでした。ただペレスに関しては、(バルテリ・)ボッタスがVSC(バーチャルセーフティカー)のタイミングでタイヤを交換した不運な部分もありました。とはいえ、総じて言うと、メルセデス、ハミルトンの速さが完全に上回っていました。

──アルファタウリ・ホンダについてはいかがでしたか?

田辺TD:(ピエール・)ガスリーはレース終盤、コンストラクターズ選手権で直接のライバルであるアルピーヌの2台を抜いて7位入賞を果たしました。スプリント予選では順位を落としましたが、最大限の結果を残してくれたと思います。

 角田(裕毅)選手に関しては、序盤に他車と接触しクルマにダメージを負って後退しました。さらにペナルティを受けて15位完走でした。そんななかでもペースは確実に上げていましたし、レース中もしっかりと走っていました。4台入賞の目標が今回も達成できなかったのは残念でしたが、全車完走はできました。

──ルイス・ハミルトンは今回新品エンジンに換えていますが、彼の速さにどれほどその影響があったと見ていますか?

田辺TD:トト・ウォルフ代表(メルセデス)が言っているように、メルセデスのICEは劣化が大きく、それで交換したと。それが理由で馬力が回復しているのは彼らの認めるところです。昨日のスプリント予選での速さは本当に驚異的でしたし、今日のレースも非常に速かった。もともとのパフォーマンスに加え、フレッシュエンジンという相乗効果が出たのかなという印象です。ですので、ハミルトンのグリッド降格ペナルティや予選失格裁定が我々にどう影響するのかというところでしたが、そんなハンディキャップを完全に拭い去って優勝し、強さを見せつけられた週末でした。

──今回、メルセデスのフレッシュエンジン効果を見せつけられたことで、ホンダとしてもあえてパワーユニットを交換する選択肢を考えたりはしないのですか?

田辺TD:距離に対する劣化度合いなど、メルセデスとは特性が違うと思います。ですので、今回の結果を踏まえて何かをするかと言えば、それはありません。

──有利が予想されたブラジルGPでメルセデスに敗れたわけですが、この敗戦はあくまで22戦分の1に過ぎないのか。あるいはそれ以上の意味を感じていますか?

田辺TD:22戦分の1なのは確かですが、両タイトルを接戦で争っている状況で、残り1戦1戦を今まで以上に大事に戦わないといけないなかでは、ひとつのつまずきが取り返しのつかない状況になります。その意味では、非常に大きな1敗だったと捉えています。

──次戦のカタールGPは初開催になりますが、どんな展開を予想していますか?

田辺TD:初めてということで過去のデータは参照できません。現在得られている情報から準備を進めるだけですね。そして実際に現場で走行してフィードバックをかける。ポケットにいろいろな事態を想定したノウハウを仕込んでおき、それをすぐに出せるようにする。そうしてセッティングを進めていくことが、我々のやるべきことだと思っています。

──ホンダはすでにMotoGPでのカタールのデータが豊富にあると思いますが、HRC(ホンダ・レーシング)との情報共有などはしていないのでしょうか?

田辺TD:MotoGPのメンバーとは非公式な情報のやり取りなどはしていますが、実際にシミュレーション作業をするなかで重要なのはコースの詳細なデータで、今回に関してそのデータは(主催者側から)提供されています。ただ、一般的な話としては、たとえば先月のオースティン(アメリカGP)にしても直前にMotoGPが行われており、通常データに出てこないようなコース情報を貰ったりはしています。