2021年F1第19戦ブラジルGPでは、ルイス・ハミルトン(メルセデス)がエンジン交換、予選失格で2度のグリッド降格ペナルティを受けながらも、圧倒的な速さで勝利を奪った。その結果に危機感を募らせたレッドブルが、ホンダ側と緊急ミーティングを行ったという報道も見られたが、ホンダF1田辺豊治テクニカルディレクターによれば「通常のミーティング以外は、特にしていない」と、その事実を否定した。

 一方でメルセデスがシーズン終盤に立て続けにエンジン交換を行っていることについては、「勝つために戦っているわけで、規約上はまったく問題ない」としつつも、全体的なコストを抑えるなど、F1の基本理念からは「はたしていいことなのかどうか」と、若干の疑義を呈した。さらにホンダ製パワーユニットの特性からすれば、「新品を入れるメリットはない」とメルセデスのやり方は追従しないと言明した。

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──メキシコ、ブラジルと続いたシーズン終盤の3連戦も、いよいよカタールで終了です。

田辺豊治テクニカルディレクター(以下、田辺TD):カタールにはブラジルから直接入国しました。前戦ブラジルGPはハミルトンの速さが光るレースで、その意味では残念な展開でした。初開催のカタールに向けては、車体、パワーユニットともにさまざまな準備を重ねてきました。

 カタールは未知のコースであると同時に、日没時にレースが始まるトワイライトレースでもあります。外気温の状況など、初日フリー走行で注視しながらセットアップ作業を重ねていこうと思っています。今回も、もちろん目標は4台完走、4台入賞です。3連戦最後のレース、そして今季残り3戦の最初のレースを、しっかりと戦っていくつもりです。

──すでにコースの下見はしましたか?

田辺TD:いえ、していません。

──データ上のレイアウトや最高速などを見て、今季のどのコースに似ている印象でしょうか?

田辺TD:難しいですね。実際に走ってみないとわからないです。

──そうですか。では今週末、パワーユニット面で特に注意している部分はありますか?

田辺TD:特にストレートが特別長いわけでもないですし、加減速区間がそれなりに散りばめられています。ですので、特に課題となるところはないのかなと思っています。

──2輪関係者の話では、カタールは燃費が厳しいとのことです。シミュレーション上はどうでしょう?

田辺TD:まだ把握していません。

■劣化の少ないホンダPUでは「あえて新品を入れるのは得策ではない」──前戦ブラジルはハミルトンの新品エンジンのパワフルさが大きな話題になりました。ブラジルでの結果を受け、レッドブル側と対策を話し合うような特別ミーティングを行ったのでしょうか?

田辺TD:いえ、特にしていません。

──通常のミーティングを行ったということですか?

田辺TD:そうです。

──メルセデスはシーズン終盤になり、どんどんとエンジン交換をしています。新品の威力ということが言われていますが、ホンダもメルセデス同様に新品をどんどんと投入して戦おうとは思っていないのでしょうか? 規約的に、それは違うという思いはありますか?

田辺TD:規約的には、まったく問題はありません。ただ、パワーユニットのコストなど、F1全体にかかるお金の話をしているわけです。そういった状況を踏まえると、F1のプリンシパル(基本理念)といいますか、F1スピリット、あるいはポリシーですか、そういったことを考えると、はたしていいことなのかどうか。ただ一方では、我々は勝つために戦っています。規約が許せば、悪いことをしているわけではない。そういうことですね。

──メルセデスの新品エンジンはマイレージの進んだものに比べて、15kwほど(約20馬力)はパワーが違うという話もあります。ホンダはそこまで劣化が激しくなく、言い換えれば新品を入れるメリットもないということでしょうか。

田辺TD:はい。

──たとえ新品エンジンの相対的なパワーが最高ではなくても、残り3戦しかないのなら思い切ってエンジンを回せるという割り切りもできるのではないですか?

田辺TD:供給しているパワーユニットは同じキャリブレーションで走らせないといけません。そのときに残り3戦だからといって、1基だけ投入した新品エンジンだけを頑張って走らせることは今の規約では許されません。そして我々のパワーユニットは、新品と、マイレージが数1000km伸びたものでは、そこまで顕著な劣化はないです。それを思えば、あえて新品を入れるのは得策ではないですね。