ラリージャパンの姿が重なって見えた。11月13日から2日間にわたり、愛知県と岐阜県で競技が行われた『フォーラムエイト・セントラルラリー2021』は、新型コロナの影響により2年連続でキャンセルとなってしまったWRC世界ラリー選手権ラリージャパンの代替イベントと言えるもの。本来はWRCで使用する予定だった施設やルートの一部を使い、来年に向けてのプラクティス的なラリーとして行われた。

 WRCでも使われる予定だった、豊田スタジアムの駐車場に設けられたサービスパークの一角では、13日朝のセレモニアルスタートを前に、『フォーラムエイト・ラリージャパン2022大会開催概要発表会』が行われ、ラリージャパン2022実行委員会会長の鈴木賢志氏により2022年大会のアウトラインが説明された。2022年大会の日程は11月10日から13日にかけての4日間。開催エリアは愛知、岐阜の2県と変わらず、競技を行う自治体については、愛知県内は岡崎市、豊田市、新城市、設楽町。岐阜県内は恵那市、中津川市の2県6市町になるという。

「名古屋市と長久手市に関しては、盛り上げPRイベントで引き続きご協力いただくということになっています」ということで、モリコロパーク内でのSSや、期待されていた名古屋中心部でのセレモニアルスタートは、少なくとも2022年大会に関してはなくなったと考えてよさそうだ。スペシャルステージ、リエゾン、スケジュールに関しては再調整のうえ、あらためて発表されるという。

 大会開催概要発表会には、衆議院議員で自由民主党モータースポーツ振興議員連盟の古屋圭司会長、愛知県大村秀章知事、岐阜県古田肇知事、株式会社フォーラムエイトの伊藤裕二代表取締役社長、GAZOO Racingカンパニーの佐藤恒治プレジデントら多くのVIPも出席。2021年大会が実現できなかったことに対する悔しさと、来年に向けての大きな期待が語られた。そのなかでもとくに印象的だったのは、古屋氏の「災い転じて福となす。つまり、来年に向けてしっかりPR期間が増えたということで、満を持して来年の開催に向けて盛り上げていきたい」という言葉だった。

 今年のラリージャパン開催を断念せざるを得なかった最大の理由は、選手を含めた外国人関係者の入国であり、開催可否の最終判断リミットまで確証を得られなかったためである。また、その最終判断を下す時点ではまだ感染者数が多い状況にあり、開催断念は正しい決断だったと言える。それでも、好天に恵まれ、コンパクトなフォーマットでありながらも非常に多くの観客が集った今回のセントラルラリーを見ると、とにかく残念に思われた。新型コロナさえなかったら、きっと素晴らしいWRCイベントが開催されていたに違いなかった。

 ある程度の入場規制をしていたとはいえ、岡崎市の乙川河川敷に設けられたショートステージは満員御礼。チケットはソールドアウトだったという。WRCでもなければ、全日本ラリーのタイトル戦でもない1戦であることを考えれば、驚くほどの集客と盛り上がりだった。岡崎市のスタッフや警察官の数も非常に多く、市を挙げて盛り上げていることが感じられ、まるで海外のWRCイベントを見ているようだった。

 これで来年、WRCのステージが行われたらどれだけ盛り上がるのか、非常に楽しみになったのと同時に、やや不安も感じられるものともなった。というのも、河川敷ステージ周辺の道路が大渋滞となり、競技の進行が大きく遅れたからだ。まだ発表はないが、今回設定されたコースの多くまたは一部が来年のラリージャパンでも設定されるだろうと考えるのが自然で、となれば、この課題クリアはマストである。

 この河川敷ステージはリグループを挟んで2本連続で行われた。しかし、そのあいだの移動が渋滞のため予想以上に時間がかかり、30分程度のディレイにつながった。結果、再走ステージで16時14分スタート予定だった三河湖のステージは日没間際のスタートに。競技車両の火災によって中断があったことも重なり、トップの数台がスタートした後は真っ暗闇のなかでの走行となってしまった。さらに、その後に予定されていた土曜日最後の新城のステージは安全上の理由により中止となるなど、岡崎市内の渋滞による30分の遅れが競技全体に大きな影響をおよぼすことになってしまった。

 渋滞によるディレイやステージキャンセルはWRCでもよくあることで、珍しくはない。しかし、今回はWRCほどの規模ではないプレイベント的なラリーであり、それでも大きな渋滞問題が起きたことをあらためて考える必要があるだろう。主催者によれば、渋滞を予想して決めたリエゾンルートが警察に認められなかったことも原因のひとつのようだが、ポジティブに考えれば来年のWRC開催に向けて準備や対策ができるということでもある。それこそ『災い転じて福となす』となることを期待したい。

 それにしても、ラリーで渋滞が起きるなど、いままでは考えられなかった。河川敷ステージやリエゾン区間には多くの観客がいて、熱心に応援していた。彼らからラリーというイベントへの期待感の高さがひしひしと伝わってきた。まだ一度もWRCが行われていないのに、これほどまでにラリー人気が中部エリアで高まっていることに、ラリージャパンの準備を進めている人々はさぞかし勇気づけられたに違いない。

 今回のセントラルラリーは、全日本ラリー選手権のレギュラー陣である勝田範彦(トヨタGRヤリスGR4ラリー)と、新井大輝(スバルWRX STI)が素晴らしいバトルを展開し、非常に見応えがあった。できれば来年のWRCラリージャパンも、全日本ラリーをはじめとする国内の選手も活躍できるような、複合的な大会フォーマットで開催してほしいと思う。あらゆるレベルのマシン、そして選手が同じステージを走ることができるのもまた、ラリーの魅力のひとつなのだから。

 日本におけるラリー文化が確実に広がり、深化していることが感じられ、来年のWRC開催に向けてワクワク感がさらに高められた、今回のセントラルラリー2021だった。

※この記事は本誌『auto sport』No.1565(2021年11月26日発売号)からの転載です。