12月19日に東京都新宿区の明治神宮外苑特設コースにおいて開催されたレッドブルのモータースポーツイベント『Red Bull Race Day(レッドブル・レースデイ)』。このイベントには、国内外のさまざまなモータースポーツで活躍するレーシングマシンたちが集結したが、そのなかで唯一の二輪ライダーとして参加したのがMotoGPに参戦しておりレッドブル・アスリートでもある中上貴晶(LCRホンダ・イデミツ)だ。

 中上は1992年生まれの29歳のライダーで、ミニバイク、ロードレースへと順調にステップアップし14歳で全日本ロードレース選手権GP125クラス全戦優勝を果たすと、2012年から、世界最高峰の二輪レースであるロードレース世界選手権のMoto2クラスにレギュラー参戦する。その後2018年に最高峰のMotoGPクラスにステップアップを果たし、現在もMotoGPクラスにフル参戦する唯一の日本人ライダーとして、LCRホンダ・イデミツからチャンピオンを目指し参戦を続けている。

 約4000人のファンが集まったレッドブル・レースデイの終了後、中上にイベントの感想と来季への意気込み、そして今季限りでライダーを引退した、中上が子どものころからテレビで見ていたという“伝説のライダー”バレンティーノ・ロッシへの想いを聞いた。

 まずレッドブル・レースデイについての感想を中上に聞いた。イベントでライディングしたマシンはMotoGP参戦マシンである『RC213V』をベースに、スペックの一部変更と公道走行用に保安部品を付けて販売された『RC213V-S』だが、乗り味はほとんど変わらなかったという。

「今回使用させて頂いたマシンは『RC213V-S』の方ですが、乗り味はほとんどMotoGPマシンの『RC213V』と一緒です。ライディングポジションもまったく同じなので、そのあたりの変化はありませんが、(今回の舞台は公道なので)サーキットのように思っいきり攻めることはできません」

 また、今回のイベントは12月の冬の路面温度が低い公道でのデモランということもあり、やはりサーキットのようにハングオンをさせるのは難しかったようだが、予想外の収穫があったことを明かした。

「タイヤももちろん違っていました(スリックではなく溝ありタイヤ)し、正直一発勝負だったので、ちょっと難しいところもありました。ですが、それ以上に『楽しめた!』という収穫が今回のイベントにありました」

 レッドブル・レースデイをそう振り返った中上は、次に今シーズンの振り返りと来季への意気込みを語った。2020年MotoGP第12戦テルエルGPでは自身初のポールポジションを獲得するなど、その速さは折り紙付きだが、今季2021年シーズンは苦戦を強いられた。

 それは中上本人も感じていたようで、「正直今シーズンは自分が望んでいた成績を残すことができなかったので、自分自身にとってもすごく悔しいシーズンになってしまいました」と切り出した。しかし、2022年シーズンはチャンピオン争いにも絡んでいくために、違った進化が必要だと意気込みを見せる。

「ただ、2022年シーズンはマシンも新しくなり、ポテンシャルはすごく高くなっているので、あとは自分自身がさらに進化し、速さというよりも、どちらかというと強さというところをより磨いて来シーズンを戦いたいと思っています」

「来シーズンはMotoGPで5年目のシーズンになるので、しっかりと成績を残し、この先もしっかりとMotoGPで活躍というよりも、来シーズンはチャンピオン争いをしていかないといけない立場になっています。チームを含め、バイクもライダーもいいところにはいるので、最後、自分自身に変化を加え、本当に来シーズンのチャンピオン争いを望んでいます。自分もその目標をしっかりと立てているので、すごく自信があります」

 そして最後に、2021年をもって26年参戦したMotoGPからの現役引退を発表したロッシへの想いを改めて聞いた。9度のロードレース世界選手権タイトルホルダーであるロッシは、現在までに通算115勝を挙げ、235度の表彰台、65度のポールポジションを獲得しており、MotoGPで高い人気を誇ったライダーだ。

 2021年MotoGP第18戦バレンシアGPでは、ロッシが現役最後の記者会見に登場し、ライバルやこれからの過ごし方を語ったが、その後中上のSNSにはロッシとの笑顔のツーショット写真が掲載されている。これについては、「ロッシ選手との件は、自分も最後の記者会見をずっと待って聞いていて、終わった後に一緒に写真を撮ってもらいました。すごくうれしかったです」と中上は思わず笑顔を見せた。

「本当に9〜10歳のころにテレビで見ていて輝いていたライダーと、こうして一緒に4年間MotoGPというカテゴリーで一緒に走れたというのは、ものすごくいいタイミングでした。なかなか一緒に走りたくても走れません」

「タイミングもありますが、自分に関しては本当に運よく4年間(ロッシと)一緒に走ることができましたし、最後の引退というところまで一緒に走れたことはすごくよかったです」

「そしていまだに、たとえばロッシ選手の後ろを走っていると『バレンティーノが前にいる』という感覚も実際にあります。ロッシ選手はやはりアイドルといいますか、伝説のライダーです。今シーズンで引退してしまいましたが、それは自分のなか、そしてほかのライダーのなかでもずっと変わらないのではないかなと思っています」

 レッドブル・レースデイのことから、2022年シーズンのチャンピオン争い挑戦、そしてロッシへの想いを存分に語った中上。来季はMotoGPで2度目のポールポジション獲得から初優勝、そしてチャンピオンを争う日本人ライダーの姿が見られるかもしれない。