F1のモータースポーツ担当マネージングディレクターであるロス・ブラウンは、2022年のF1の新しいレギュレーションを提示した当初、過度に制約的な内容だと評価した各チームから不平不満が聞こえていたと語った。

 接近戦を増やし、マシン間の差を縮めるために空力を簡素化するなどの先鋭的な設計思想に基づくF1の大胆な構想が、2022年シーズンに実行に移される。

 しかし、発表された当初は、全面的に見直されたレギュレーションの内容に対して、各チームのデザイナーやエンジニアたちからかなりの失望の声が上がっていた。彼らにとって、イノベーションの余地が非常に小さい内容だと評価されたためだった。レッドブル・レーシングのチーフテクニカルオフィサーであるエイドリアン・ニューウェイは、当時「この規則からは、まだ私自身がワクワクできるような内容を見つけられていない。端的に、新レギュレーションは良いものだと思わない」と語っている。

 しかし、ブラウンによれば、チームからの不満はその後減っていったのだという。

「各チームが最初にレギュレーションを読んだとき、彼らの作業範囲が大幅に狭められた内容だったため、不平不満が出ていた」と、ブラウンは『New York Times』に述べた。

「ただ、内容を読み込んでいくにつれて、まだいろいろな取り組みの可能性があることに彼らは気がついた」

 一世代前のマシンが「非常に優れたデバイス」であり、F1史上最速のマシンであることは認めたうえで、ブラウンは接近戦を戦うマシンのデザインについて彼らが「あまりにも批判的だった」と語った。F1の新レギュレーションを立案するにあたり、ブラウンの技術部門は各チームにも相談しながら、F1にとっての最優先事項であるマシンの競走性能向上を実現するために時間と費用をかけてきた。

 以前はフェラーリの技術部門を率いていたブラウンは、「この分野に対して資金が投じられることはなかった。規則をつくり上げてきた各チームが、知識も技術も資金も持っていたのだが」と語った。

「規則は、各チームから出される提案や意見を通じて進化する。競い合いを易しいものにするなどという志向は、彼らにはなかった」

「そして突然、資金が出てくるようになった」

 新レギュレーションがF1の新たな時代をつくり出すことへつながるかどうかは、時間が経過しなければ分からない。しかし、もしコース上でのショーをよりよいものにする試みがうまくいった場合、F1はチームの開発作業に制約を課していくという。

「我々は取り組みを止めない。新しいマシンがしっかり走れることが分かったら、我々としてはチームの開発方法をそれぞれ確認し、評価したうえで、マシンの競走性能を高める構想が勢いを保てるように努力し続けていく」

「各チームがそれぞれのやり方でレースに臨む以上、最初のうちはパフォーマンスの点で若干の不均衡が見られるかもしれない。しかし、それらが落ち着く頃には、この規則がマシン設計のよりよいプラットフォームとして機能しているはずだ」