大きな責任を担うF1チーム首脳陣は、さまざまな問題に対処しながら毎レースウイークエンドを過ごしている。チームボスひとりひとりのコメントや行動から、直面している問題や彼のキャラクターを知ることができる。今回はハース代表ギュンター・シュタイナーのオーストラリアGPの週末を追った。

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 大規模なレギュレーション変更が行われた今年、F1チーム関係者は誰もが慌ただしくシーズンスタートを迎えたはずだが、そのなかでもこの数カ月を最もせわしなく過ごしていたのは、ハースの代表ギュンター・シュタイナーであろう。

 シーズンが始まる前から、シュタイナーは大きな問題に直面した。ロシアによるウクライナ侵攻に伴い、チームはタイトルスポンサーであるウラルカリとレギュラードライバーのニキータ・マゼピンとの契約をどうするのか、対応を迫られ、両方の契約を打ち切ることを決めた。その後すぐさまシュタイナーはケビン・マグヌッセンを復帰させるために動き、多くの者を驚かせたその選択は結局は正解だったことがすぐに分かった。マグヌッセンはシーズン最初の2戦で連続してポイント獲得を果たしたのだ。

 困難な2021年の後、好調なシーズンスタートを切ったハースチームは、安堵していたのではないだろうか。しかし第2戦サウジアラビア予選でのミック・シューマッハーのクラッシュが、状況を一変させた。

 シューマッハーには幸いけがはなかったが、シュタイナーは彼を決勝に出場させないという決断を素早く下した。次のオーストラリアのことを考えていたからだ。サウジアラビアでシューマッハーがピットレーンからスタートしてポイントを持ち帰れる可能性は極めて低いと、シュタイナーは考えた。それなら、決勝で走る方がリスクが大きくなる。再びインシデントが起きれば、オーストラリアにも影響が出てしまうのだ。

 貨物はオーストラリアに送らなければならなかったので、次戦までの間にファクトリーで修理をすることができなかった。そして、シーズン序盤はそもそもスペアパーツの数は限られている。

 実際、シュタイナーは、オーストラリアに着いた時点で、チームは非常にリスキーな週末を過ごすことになると示唆していた。シューマッハーが使っていたシャシーはヨーロッパに戻して検査をする必要があった。だが税関手続きの関係で、シャシーをまずは当初の予定どおりオーストラリアに運び、そこからファクトリーに送らなければならなかった。

 この効率の悪いロジスティクスにより、メルボルンの週末を、ハースのドライバーふたりはスペアシャシーなしに過ごさなければならなくなった。つまり、アルバートパークでクラッシュすれば、彼はそこで週末を終えなければならないわけだ。

 そしてハースに不足しているのはシャシーだけではなかった。リザーブドライバーがいなかったのだ。

 ケビン・マグヌッセンは木曜夜から体調を崩しており、金曜プラクティスで走れるかどうか分からない状況だった。もしマグヌッセンがマシンを運転できる状態でなければどうするか、と聞かれたシュタイナーは、「分からない」と答えるしかなかった。

 なぜかというと、リザーブドライバーのピエトロ・フィッティパルディはヨーロッパでヨーロピアン・ル・マンのマシンのテストをしていた。バックアップのアントニオ・ジョビナッツィは、ローマでフォーミュラEに出場していた。そして、ジョビナッツィが不在のため、シューマッハーはフェラーリのリザーブドライバーの役割を担うことになった。つまり、ハースは場合によっては、ひとりもドライバーがいなくなる可能性もあり得たわけだ!

 シュタイナーは、マグヌッセンの体調が良くなり、シューマッハーがクラッシュしないことを祈るしかなかった。幸い、マシンもドライバーも足りなくなる事態には陥らなかった。しかし、パフォーマンス的にはハースにとって良い週末だったとはいえない。

 オーストラリアGPは3年ぶりの開催に向けて大規模なコース変更を行っており、キャリアの短いハースは、それにうまく対応できなかった。イニシャル・セットアップを旧レイアウトに寄せすぎたせいで、初日は競争力が大幅に不足、そしてその後も遅れを取り戻すことができなかった。

 さまざまな心配事を抱えて臨んだオーストラリアGPは、ハースにとって今シーズンここまでで最も精彩を欠いた週末となった。どちらのドライバーも予選でも決勝でもトップ10に近づくことができずに終わったのだ。

 だがシュタイナーは、オーストラリアを大きなダメージなく乗り切れたことを喜んでいた。この週末、少なくともチームは貴重な学習を積んだ。ハースは、今後直面するであろう様々なドラマに、今回学んだことを生かしていくことだろう。