バーバーモータースポーツ・パークで行われた2022年NTTインディカー・シリーズの第4戦でパト・オワード(アロウ・マクラーレンSP)が今季初優勝を挙げた。

 この勝利の翌週に23歳になったオワードはメキシコ北東部のモンテレイ出身。CARTシリーズ〜チャンプカー・シリーズが2001年から2006年までインディカーのレースを開催した町だ。

 これでオワードの勝利数は「3」となった。彼は天性のスピードだけでなく、勝負の流れを読み、それを自らの側に引き寄せて勝つ力、そして、ポイントを着実に積み重ねていく能力も備えている。

 初勝利がテキサス(オーバル)、2勝目がデトロイト(ストリート)、3勝目はバーバー(ロードコース)とすでにインディカー・シリーズにあるコースバラエティで勝利をマークしている点にも彼のドライバーとしての完成度の高さは表れている。
 

 
 そんなオワードだが、アロウ・マクラーレンSPに辿り着くまでのキャリアには紆余曲折があった。

 母国メキシコで13歳からフォーミュラカーに乗り、フランスF4を1シーズンのみ戦った後、第二の故郷であるアメリカへ。プロ・マツダ・シリーズに参戦して7勝、5ポールポジション獲得を果たしたが、タイトルを獲得したのは彼より1勝少なかったチームメイトだった。

 シリーズ2位となったオワードはそのままフォーミュラカーのステップアップをするのではなく、小型スポーツカーのシリーズにフル参戦し、デイトナとセブリングというメジャーコースでのレースを制覇してチャンピオンになった。

 そして2018年、彼はフォーミュラカーへと戻る。インディライツにアンドレッティ・オートスポートからエントリーし、チームメイトでインディライツ2年目のコルトン・ハータと勝負。当時の1シーズン最多勝となる9勝をマークしてチャンピオンとルーキー・オブ・ザ・イヤーに同時に輝いた。ハータはシーズン中盤に4連勝を記録したが、勝利はその4戦だけに終わった。

 タイトルを獲得してすぐ、インディカー・シリーズ最終戦ソノマに参戦するチャンスを与えられると、オワードはそこで大きな輝きを放ってみせた。アンドレッティ・オートスポートがエンジニアリングで手助けをしたとはいえ、いきなり3段階の予選でファイナルに進出し、5位に食い込んだのはセンセーショナルだった。

 レースも落ち着いた戦いぶりを貫き通し、9位フでィニッシュ。このレースには彼と同じチームからハータもインディカーにデビューしたが、予選19番手・決勝20位と目立ったパフォーマンスを発揮することはできなかった。

 翌2019年からのオワードの本格的フル参戦には大きな期待が集まった。ところが、ハーディング・レーシングからハーディング・スタインブレナー・レーシングへと体制を新たにしたチームのとんでもない失態により、彼のキャリアは急失速をさせられた。

 フル参戦を約束していたというのにチームは資金を十分に集めることができず、もう開幕直前というタイミングでハータだけを走らせる1台体制で行くことをオワードに伝えてきたのだった。

 この年、彼はカーリンからインディカー・シリーズ7戦に出場し、レッドブル契約ドライバーとなってFIA F2に2戦、日本のスーパーフォーミュラ3戦に参戦したが、準備期間も少なく好成績を挙げることはできなかった。

 負のスパイラルに陥ってレッドブルでも行き場を失いつつあったオワードに声をかけたのはマクラーレンだった。

 シュミット・ピーターソン・モータースポーツの共同オーナーとなった彼らは、若手ドライバーふたりを起用した新体制の一員としてオワードに白羽の矢を立てたのだ。その期待に応え、オワードは2020年にポールポジション1回、4戦でのトップ3フィニッシュで、初勝利こそ記録できなかったが、ランキング4位という素晴らしい結果を残した。

 失った1シーズンを取り返そうとする意気込みが強く感じられた戦いぶりで、前年に予選落ちしたインディ500でもメキシコ人ドライバーとして史上最上位となる6位フィニッシュを記録し、映えあるルーキー・オブ・ザ・イヤーに輝いた。

 2021年、オワードは2勝、ポールポジション3回、トップ3入り5回でシリーズランキングは前年よりひとつ上の3位となった。凄まじい競争が繰り広げられているインディカーシリーズで、フルシーズン出場2年目にしてトップ3に食い込んだのだ。インディ500では4位フィニッシュし、歴代メキシコ人のベスト更新も達成した。




 フルシーズン3年目となる今年、オワードは目指すタイトル獲得を実現できるだろうか?

 その可能性は十分にある。彼のパフォーマンスを支えているのは急成長中のアロウ・マクラーレンSPだ。

 フェルナンド・アロンソのインディ500参戦をきっかけにアメリカのトップオープンホイールへの復活を思い立ったマクラーレンは、シュミット・ピーターソン・モータースポーツに参画し、3年をかけて主導権を握った。

 F1の名門チームならではのアプローチで彼らはチームを急成長させている。大量の活動資金確保を確保してチームスタッフを補強、拡充。より多くのデータを集めることが有利に繋がる3台体制への拡大を2023年には実現すべく、彼らは更なる人員強化に取り組んでいる。

 驚いたのは、2022年シーズンを前にしたオフの間に彼らがインディカー最強チームのチーム・ペンスキーでジョセフ・ニューガーデンを担当していたエンジニア、ギャビン・ウォードを引っこ抜くという荒業をやってのけたことだ。

 ウォードは2022年中にスポット参戦を行うチームの3台目でレースエンジニアを務める可能性があるが、マクラーレンはそれよりも長期的なビジョンの下、彼には2024年から導入される新マシンパッケージに向けた先行開発部門を率いてもらう考えだ。

 昨年、インディカー初優勝を飾ったオワードには、マクラーレンからF1テストのチャンスがプレゼントされ、2021年の12月、メキシコ出身の22歳はアブダビで初めてF1マシンを走らせた。

 その翌年の3月、マクラーレンはハータとテスト契約を結んだことを発表。インディライツ時代の2018年からライバル関係にあるふたりはF1参戦に向けてもマクラーレンでシート争奪戦を繰り広げることになるようだ。

 2021年は最終戦までチャンピオン争いを繰り広げたオワード。今季初勝利は今シーズンも彼を勢いづかせるだろう。