2022年シーズンのスーパーGT GT500クラスに参戦する2台のニッサンZ GT500へのタイヤ供給に加え、日本初上陸となったBMW M4 GT3(7号車Studie BMW M4)へのタイヤ供給開始にともない、2年ぶりにGT300クラスに復帰を果たしたミシュラン。1台体制でGT300復帰となったミシュランの、2022年シーズンのGT300クラスへのタイヤ供給に関する新たな取り組みや、2020年シーズンとの違いについて、日本ミシュランタイヤのモータースポーツダイレクターを務める小田島広明氏に聞いた。

 2022年、BMW Team Studieは最新FIA-GT3車両のBMW M4 GT3を日本初導入。その足元を支えるタイヤサプライヤーとしてミシュランが2年ぶりにGT300クラスに復帰することでも大きな話題となった。また、日本ミシュランの公式サイトに『GT300クラスではBMW M4 GT3専用タイヤの開発を世界に先駆けて実施』との表現があり、その取り組みについても高い関心を集めていた。

 GT500クラスの場合、ミシュランを含むタイヤメーカーは開催サーキットや供給車両に適合するタイヤ、いわば“スーパーGT専用スペック”を製造し、レースウイークに臨んでいる。それ故に、ミシュランではGT300クラスでもGT500同様に“スーパーGT専用スペック”のタイヤ供給かが注目されたが、まずはGT500とのスタンスの違いを小田島氏は説明する。

「GT300はGT500と供給コンセプトが異なり、サーキットや車両に合わせて、新たにタイヤを設計するということはありません。(世界のさまざまなレースカテゴリー用の)開発タイヤの中にたくさんのラインアップがあり、その中からGT300で使用するタイヤを選択していくというやり方です。車両への理解が深まれば、どの温度レンジのタイヤが適合するのかがわかりますから、ゼロから車両に合わせたタイヤを新しく製作するということはありません」

 一見、アストンマーティン・バンテージ GT3、レクサスRC F GT3の2台に供給していた2020年同様のスタイルのようにも聞こえるが、ここが大きく違ってくる。2020年は『レースですでに実績のあるタイヤのなか』からの選択だったのに対し、2022年はその『実績のあるタイヤ』に加え、『世界のさまざまなレース用に先行開発している試作中のタイヤ』のラインアップの中から適したものをセレクトできる体制になっているという。

「開発タイヤには使える(選択できる)枠があり、2020年シーズンはWEC世界耐久選手権や、NLSニュルブルクリンク耐久シリーズなどで、ある程度実績のあるものから選択するかたちでした。ただ、2020年シーズンはコロナ禍の影響で、オフシーズンのテストができず、スーパーGTに適合するスイートスポットをなかなか見出すことができませんでした」

「そこで、2022年シーズンは選択肢を広げることにしました。つまり、WECやNLS等で導入されていない先行開発スペックも使えるようになった、ということです。実績のない先行開発スペックを使うことは、将来的にWECやNLSなどで使われるタイヤの開発の際の材料になりうる。そのため、7号車BMW M4 GT3への供給は、世界各地のFIA-GT3用の先行・試作タイヤの組み合わせもあるとも言えます」と小田島氏。

 タイヤメーカーによって『開発タイヤ』の定義は若干異なるが、GT500のように車種ごとに素材や構造、そして形状も専用設計するのとは違い、ミシュランはスーパーGTの現場を通じて、BMW M4 GT3と適合するタイヤ、スイートスポットを見つけるということだ。

 見方によればGT500とは真逆の供給コンセプトとも言える。それはミシュランが日本だけではなく、WECを含め世界各地のレースカテゴリーにタイヤを供給しているワールドワイドなレースタイヤの開発を行っていること、そして、BMW M4 GT3がFIA-GT3という、グローバルスタンダードな車両規格であることからも頷ける。

 また、この開発タイヤの使用枠拡大については、2020年シーズンの反省があってのこと、と小田島氏は振り返る。

「2020年シーズンの枠の中でもいい解答を見つけることはできそうでした。ですが、そのためにはしっかりとテストする必要もありましたし、(大きく外す)リスクもありました。なので2022年シーズンに向けては、もう少し選べる枠を広げようと。そのためにも、将来的にWECなどでも選択しうるタイヤの先行開発というかたちで取り組むことを、このプロジェクトの意義にしようと考えました」

 シーズン開幕2戦、7号車Studie BMW M4はアクシデントやステアリングトラブルにより、未だドライバーズポイント獲得には至っていない。しかし、BMW M4 GT3とミシュランの適合が進めば、NLSで見せた好走を日本でも展開し、GT300クラス初表彰台も見えてくるだろう。開幕2戦を終え、2022年シーズンも中盤を迎えたスーパーGTだが、引き続きGT300クラスはタイヤコンペティションを含め、一戦たりとも見逃すことのできない戦いが繰り広げられることになりそうだ。