長年F1を取材しているベテランジャーナリスト、ルイス・バスコンセロス氏が、全20人のドライバーのグランプリウイークエンドの戦いを詳細にチェック、独自の視点でそれぞれを10段階で評価する。

 2022年F1第7戦モナコGPは、決勝スタート直前に雨が降り出し、レース中に路面が乾いていくという難しいコンディションに。シャルル・ルクレール(フェラーリ)はポールポジションから余裕の勝利を飾るかに思われたが、フェラーリが適切なピットストップ戦略で対応することができず、まさかの4位に沈んだ。優勝したのは、週末を通してチームメイトのマックス・フェルスタッペン(レッドブル)より速さがあったセルジオ・ペレス(レッドブル)だった。モナコGPでのそれぞれのドライバーたちの戦いぶりを、バスコンセロス氏が振り返る。

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■評価 10/10:今最強のルクレール。ペレスが予選のミスを帳消しにする完璧なレース

 モナコGPで最も光っていたドライバーは、間違いなくシャルル・ルクレール(フェラーリ)だった。モナコのヒーローは、FP3以外すべてのセッションで最速タイムを記録し、Q3最後に赤旗に妨げられるまで、すばらしいラップを走っていた。アタックを完了できていたら、1分11秒を切ったものと思われる。それほどのタイムを出せる者は他に誰もいなかっただろう。

 フェラーリが戦略で失敗したために、ルクレールは、手にして当然の勝利を逃した。それでも彼はスペインの時と同様に、今、20人のなかで最も強力なドライバーであることを証明した。

 セルジオ・ペレス(レッドブル)に満点を与えるのは行きすぎかもしれない。予選Q3の最後で致命的なミスをしたからだ。だが、ポジティブな点に目を向けてみよう。彼は週末を通してマックス・フェルスタッペンより速かった。決勝ではフロントランナーたちのなかで一番早くインターミディエイトに交換するという、リスキーな戦略をうまく機能させてみせ、リスタートの際に左フロントタイヤにダメージを負いながら、終盤20周、後方からプレッシャーをかけられながらも、全くミスをしなかった。それまでのふたつのミスの影響を被ることなく、完璧な形で週末を締めくくった。

■評価 9/10:現状で最大の結果を出したラッセル

 ジョージ・ラッセル(メルセデス)とランド・ノリス(マクラーレン)は、それぞれ、マシンの力を最大限に引き出した。ラッセルはルイス・ハミルトンとのチームメイトバトルでも優勢で、予選でクリーンなラップを走って6番手をつかんだ。決勝ではメルセデスの戦略をうまく機能させ、ピットアウトしてくるノリスの前に出て5番手に上がり、彼に可能な最大の結果を達成した。

 ノリスもチームメイトバトルを制し、予選では余裕で“ベスト・オブ・ザ・レスト”の位置に立った。決勝ではスリックに換える判断が遅れたことで、ラッセルに敗れた。


■評価 8/10:サインツがこれまでのミスを挽回する走り

 この3戦、ミスが続いたカルロス・サインツ(フェラーリ)は、今回はなんとしてもクリーンな週末を過ごす必要があった。彼はルクレールには届かないながらも、自分のやるべきことをやってのけたといっていいだろう。予選2番手を獲得し、決勝でもミスなく走った。

 タイヤ戦略が良かったことで、チームメイトの前に出た。アウトラップでニコラス・ラティフィに引っかかっていなければ、サインツは念願の初勝利を挙げていたかもしれない。

 ベテランのセバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)とバルテリ・ボッタス(アルファロメオ)は堅実な週末を送った。マシンに期待できる以上のパフォーマンスを見せて、チームに貴重なポイントをもたらした。

 ベッテルは予選で見事にQ3に進出してみせた。決勝ではスタート直後、サン・デボーテでわずかに体勢を乱したことでいくつかポジションを落とした。早い段階でインターミディエイトに交換するというリスクを冒したことが奏功、入賞を果たした。

 ボッタスは、モナコの難コースでFP1をトラブルで走れず、大きな痛手を被った。それでも予選12番手を獲得し、安定した走りで、貴重な2ポイントをつかんだ。




■評価 7/10:最後までマシンに手こずったフェルスタッペン

 マックス・フェルスタッペン(レッドブル)が週末を通してチームメイトに敗れたのは2018年半ば以来のことだ。モナコでのフェルスタッペンは、RB18のフロントエンドをうまく機能させることができなかった。予選最後のアタックは、ペレスのミスによる赤旗に妨げられた。決勝では、不運なルクレールの前に出て3位表彰台をつかんだが、週末を通してペレスに勝てなかったことで、高い評価をつけることはできない。

 フェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)は珍しく予選Q3でミスを犯したが、最初のランのタイムで7番手を獲得した。レースになると、アロンソはさっさと前のグループのことを忘れて、タイヤをできるだけ長持ちさせることに集中した。その戦略がうまくいき、7位でフィニッシュすることができた。

 チームメイトのエステバン・オコン(アルピーヌ)は、予選Q3終盤で出た赤旗の犠牲者のひとりだった。最初の2セッションはアロンソより速かったオコンだが、予選10番手という結果になった。レースでは9位でフィニッシュしたものの、レース序盤、ターン1への進入でハミルトンに接触したことにより、当然のペナルティを受けて、降格された。


■評価 6/10:チームのギャンブルが奏功しなかった角田裕毅

 ルイス・ハミルトン(メルセデス)は、予選Q3で8位にとどまったが、それは自分自身のせいだ。重要なラップで誤ったエンジンモードを選択したことで、良いタイムを出せず、最後のアタックでは赤旗が出てしまった。3列目を確保したチームメイトからは0.4秒も遅い予選タイムにとどまった。決勝では早い段階でインターミディエイトに交換したものの、オコンに引っかかり、アロンソの前に出るチャンスを失った。

 ピエール・ガスリー(アルファタウリ)とケビン・マグヌッセン(ハース)は、ポイントを獲得することができなかったが、パフォーマンス自体は悪くはなかった。ガスリーはプラクティスではトップ7に入っていたが、チームが誤った戦略を取ったことで、予選Q1で敗退。決勝ではリスクを冒す覚悟で臨み、ライバルたちに先駆けてイターミディエイトに交換した。周冠宇とダニエル・リカルドを見事にかわしてポジションを上げ、最終的にはグリッドより6つ上の11位でフィニッシュ、あと一歩で入賞だった。

 マグヌッセンは週末を通してチームメイトより速かったが、予選でトップ10争いをするほどの速さはなかった。フルウエットでボッタスを追っていたが、再びPU関連のトラブルが発生して、リタイアした。

 角田裕毅(アルファタウリ)は、予選ではQ3進出まであと一歩だった。Q1のシケインで軽い接触があったが、大きなダメージをうまく避けることができた。決勝ではチームが6周目にインターミディエイトに交換するというギャンブルをしたが、うまくいかず。アレクサンダー・アルボンとミック・シューマッハーに長い間引っかかり、ドライタイヤのコンディションになった後は、全ドライバー中、唯一、ハード、ミディアム、ソフトのすべてで走ったものの、どのコンパウンドでもグリップを得られなかった。




■評価 5/10:予選の速さを決勝につなげられなかったアルボン

 アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)は予選で自分より速いマシン3台を破って16番手につけた。予選の仕事は見事だったものの、決勝では11周目にミスをしてポジションを落とし、22周目にはコースオフをしてタイヤがパンク、その後、マシンの不調によりリタイアした。



■評価 4/10:ラティフィとストロール、セーフティカー先導中にバリアにヒット

 ニコラス・ラティフィ(ウイリアムズ)、ランス・ストロール(アストンマーティン)、周冠宇(アルファロメオ)は週末を通して低調だった。ラティフィは、予選は遅く、決勝ではセーフティカー出動中にバリアにヒットした。レースを続行できたラティフィは、スリックタイヤに交換してコースに復帰したサインツの前を走り続け、サインツの勝利の可能性を奪った。

 ストロールは週末を通してベッテルより大幅に遅く、決勝ではセーフティカー先導中にバリアにヒットし、14位フィニッシュにとどまった。周冠宇はモナコのコースに手こずっていた上に、チームの戦略のせいで予選最下位となった。レースの間ずっとトラフィックに引っかかった状態で走り、11周目には死に物狂いでターン11でアルボンに仕掛けたが失敗。これに動揺したか、周はその後は慎重に、その分、遅いペースでレースを走り切った。


■評価 3/10:シューマッハーとリカルドの将来に暗雲

 ミック・シューマッハー(ハース)とダニエル・リカルド(マクラーレン)は悲惨な週末を過ごした。それぞれのチームは2023年に彼らを走らせない可能性が高いといわれているが、モナコの週末はその理由を説明するような展開になった。

 シューマッハーは予選は15番手とまずまずの結果だったが、決勝25周目にスイミングプールで激しいクラッシュを演じ、赤旗の原因を作った。シューマッハーはこのクラッシュでまたもやマシンを大破させた。

 リカルドはFP2に同じ場所でコースオフ。その後、調子を上げていくことができなかった。予選はQ2で敗退。レースを通して速さがなく、13位でフィニッシュした。6位で9ポイントを獲得したチームメイトのノリスから45秒遅れだった。



■全ドライバー評価/F1第7戦モナコGP(10段階)

評価 10/10
シャルル・ルクレール:予選1番手/決勝4位
セルジオ・ペレス:予選3番手/決勝1位

評価 9/10
ジョージ・ラッセル:予選6番手/決勝5位
ランド・ノリス:予選5番手/決勝6位

評価 8/10
カルロス・サインツ:予選2番手/決勝2位
セバスチャン・ベッテル:予選9番手/決勝10位
バルテリ・ボッタス:予選12番手/決勝9位

評価 7/10
マックス・フェルスタッペン:予選4番手/決勝3位
フェルナンド・アロンソ:予選7番手/決勝7位
エステバン・オコン:予選10番手/決勝12位

評価 6/10
ルイス・ハミルトン:予選8番手/決勝8位
ピエール・ガスリー:予選17番手/決勝11位
ケビン・マグヌッセン:予選13番手/決勝リタイア
角田裕毅:予選11番手/決勝17位

評価 5/10
アレクサンダー・アルボン:予選16番手/決勝リタイア

評価 4/10
ニコラス・ラティフィ:予選19番手/決勝15位
ランス・ストロール:予選18番手/決勝14位
周冠宇:予選20番手/決勝16位

評価 3/10
ミック・シューマッハー:予選15番手/決勝リタイア
ダニエル・リカルド:予選14番手/決勝13位