6月4日15時に静岡県の富士スピードウェイで決勝スタートを迎えたENEOS スーパー耐久シリーズ2022 Powered by Hankook第2戦『NAPAC 富士 SUPER TEC 24時間レース』は、5日15時に24時間レースのフィニッシュを迎え、ST-Xクラスの62号車HELM MOTORSPORTS GTR GT3(鳥羽豊/平木湧也/平木玲次/ショウン・トン)がチーム初の総合優勝を飾った。

 近年は多くのエントラント、ファンを集め盛況のスーパー耐久。シリーズのなかに組み込まれるレースが、現在日本で唯一の24時間レースとして開催されるNAPAC 富士 SUPER TEC 24時間レースだ。2022年の富士24時間も多くのエントリーを集め、参戦車両は過去最多となる9クラス56台が24時間レースに挑んだ。

 迎えた決勝日は少し雲があるもののドライコンディションでスタートし、予選でポールポジションを獲得した888号車Grid Motorsport AMG GT3(マーティンベリー/高木真一/黒澤治樹/山脇大輔)を先頭にフォーメーションラップがスタート。1周を終えた隊列がホームストレートに戻り、14時59分39秒に24時間の長きに渡る戦いの火蓋が切って落とされる。富士24時間のスタートは台数が多いため3つのグループに分けられるが、各グループとも接触なく1コーナーを通過していく。

 総合優勝を賭けてレースを争うST-Xクラスはポールスタートの888号車高木が好スタートを決め、1周終了時点で2番手の62号車HELM MOTORSPORTS GTR GT3鳥羽豊におよそ2秒の差をつける。その後は127周終了時点で、黒澤治樹から山脇大輔に交代した888号車が総合トップに立っていたが、141周目に62号車の平木湧也が山脇をかわして総合トップに躍り出る。

 スタートから大きなアクシデントなくレースが進んでいたが、149周目に2022年の富士24時間初のフルコースイエロー(FCY)が導入され、ストップ車両の回収のためセーフティカー(SC)に切り替えられた。レースが再開されるとトップの62号車はリードを広げながら快走をみせる。

 レースは8時間を経過し、迎えた18時45分からのナイトセッションでも62号車と888号車の同一周回での争いは続く。しかし280周目、62号車にドライバー連続運転時間違反との裁定が下され180秒のペナルティストップが科されてしまう。富士24時間では各ドライバーが運転できる最大時間が3時間と決まっており、ショウン・トンのドライブ中にこれに違反したかたちだ。

 これでトップ争いは888号車と81号車DAISHIN GT3 GT-R(大八木信行/藤波清斗/青木孝行/坂口夏月)との一騎打ちとなるが、FCY直前のタイミングでピットに入り差を縮めた81号車が、300周目に888号車を捉えて総合トップに浮上する。

 富士スピードウェイは4時29分の日出時刻を迎え、81号車は2番手の62号車に3周差をつけてレースを支配し始める。2番手争いは888号車黒澤治樹が2番手の62号車鳥羽に追い付くも13コーナーで接触、弾かれた888号車は右フロントをガードレールにぶつけてしまい、修復のため緊急ピットインを余儀なくされる。888号車はマシンを頭からガレージに入れて応急処置を行い、残り3時間49分でコースに戻るも、トップとの差がさらに広がってしまった。

 そんななか迎えたレース残り3時間30分、ルーティンピット作業を完了した81号車のエンジンが掛からない。ピットの坂口夏月が両手を挙げて天を仰ぐが、無情にもオレンジのGT-Rはガレージに仕舞われてしまう。メカニックたちが必死に修復を試みるもすぐにエンジンは掛からず、62号車が3周差を逆転して総合トップを奪還。81号車はその後888号車にも逆転され3番手に順位を落とす。

 セルモーターのトラブルが疑われる81号車は、レース残り2時間53分で修復が完了し大八木がコースに出ていく。しかし、修復作業は12分58秒にもおよび、レースに復帰した時点でトップの62号車とは19周と大きな差がついてしまった。

 レース残り2時間でも62号車は総合トップをキープしてレースを進めるも、残り1時間17分、グリーンファイト100Rのアウト側に55号車MAZDA SPIRIT RACING MAZDA2 Bio conceptが止まってしまい9度目のFCYが導入。55号車の回収後、残り1時間8分でレース再開となる。

 その直後、トップの62号車に黄旗追越でまさかのドライビングスルーペナルティが科される。しかし、2番手の888号車に3周差をつけているためポジションは変わらず。62号車はドライビングスルー消化の次の周となる728周に最後のルーティンピットに入り、トンから湧也にドライバーを交代する。

 レース残り50分を切ると18号車Weds Sport GR86がTGRコーナーの先のグラベルにマシンを止めてしまい10度目のFCYが導入される。18号車の回収完了後、残り43分でレースは再開。

 レースは残り30分を切り、再び18号車がTGRコーナー先でマシンを止め11度目のFCYが宣言。レースは残り20分というスプリントで再開される。総合トップの62号車湧也はその後も安定してマシンをチェッカーまで運び、760周を走り切ってフィニッシュ。HELM MOTORSPORTSがST-Xクラス移行2戦目にして24時間レースの頂点を掴み取った。2位には888号車が、3位には81号車が続いている。

 チェッカーを受けた平木湧也は「まさか今年勝てるとは思わなかったです。レースの途中でペナルティがあり勝負権がなくなってしまったと思いましたが、最後の最後に転がり込んできたという感じです」とレース後に語った。

「24時間レースは本当にドラマがあります。こんなことになるなんて今朝来たときには思ってもいませんでした。感無量です」と語るのはジェントルマンドライバーとは思えない活躍を披露した鳥羽。また、平木兄弟の弟である玲次も「本当に今日はチームのみなさんがすごく完璧な仕事をしてくれたので優勝することができました」とチームを称賛。

 今回の富士24時間でチームに加入したトンは「本当に嬉しい。今日は本当に難しいレースでかなりプッシュしたよ。こんな機会を与えてくれたHELM MOTORSPORTSに感謝したい」と喜びをみせた。

 GT4規格マシン7台で争われるST-Zクラスは、レース序盤にトップに立ったPorsche Team EBI WAIMARAMAの22号車PORSCHE 718 Cayman GT4 RS CSが独走する速さと安定性をみせるも、夜明け後の千代勝正のドライブ中にウォーターポンプのトラブルに見舞われエンジンがオーバーヒート、レース中に修復ならずリタイアに。これにより同一周回でレースを続けていた500号車5ZIGEN AMG GT4(大塚隆一郎/太田格之進/金石年弘/木村偉織)が制した。

 メーカーの開発車両が7台エントリーしたST-Qは、クラスポールからスタートした3号車ENDLESS AMG GT4(小河諒/菅波冬悟/川端伸太朗/谷岡力)が24時間を通して独走し、ST-Zを上回る総合6位でフィニッシュする速さをみせる。

 今回の富士24時間から参戦開始となる2台のニッサンZは、通常のガソリン燃料を使用するMax Racingの244号車ニッサンZ Racing Concept(田中哲也/田中徹/三宅淳詞/高星明誠/安田裕信)がレース序盤に2度に渡る左フロントタイヤのパンクに見舞われるも、その後はポテンシャルの高さを披露して総合10位で完走。

 NISMOが走らせ、カーボンニュートラル・フューエルを使用する230号車のニッサンZ Racing Concept(平手晃平/松田次生/ロニー・クインタレッリ/佐々木大樹/星野一樹)はレース序盤こそ順調に周回を重ねたが、ナイトセッション中にエンジンのベルトが切れるトラブルが発生してしまう。リペアエリアやピットガレージ内での作業を強いられる場面があったものの、244号車とともにランデブーフィニッシュを行い総合49位に入っている。

 ORC ROOKIE Racingの2台は、28号車ORC ROOKIE GR86 CNF Concept(蒲生尚弥/豊田大輔/大嶋和也/鵜飼龍太/関口雄飛)がマシントラブルによりコース上でストップしてしまい、リペアエリアでミッション交換を行うなどの場面があったが総合39位でフィニッシュ。

 水素エンジンを搭載し、MORIZOこと豊田章男社長や、TOYOTA GAZOO Racing WRT代表のヤリ-マティ・ラトバラがドライブする32号車ORC ROOKIE GR Corolla H2 concept(佐々木雅弘/MORIZO/石浦宏明/小倉康宏/ヤリ-マティ・ラトバラ/勝田範彦)は水素補給の関係で41回のピット回数を数えるも総合52位で完走。水素補給時間も従来より短縮されるなどの進化ポイントを披露した。

 エンジントラブルにより予選タイムを記録できず最後尾スタートとなった61号車Team SDA Engineering BRZ CNF Concept(井口卓人/山内英輝/廣田光一/鎌田卓麻/吉田寿博)は、決勝では快調な走りをみせて徐々にポジションを上げ、ライバルである28号車GR86を上回る総合31位でフィニッシュ。

 55号車MAZDA SPIRIT RACING MAZDA2 Bio concept(寺川和紘/井尻薫/関豊/前田育男/加藤哲也/手塚祐弥)は320周終了後にミッショントラブル発生によりピットで修復を余儀なくされ、コース復帰後には残り1時間17分というところで100Rアウト側にマシンを止め総合51位という結果になっている。

 2台のホンダ・シビック・タイプR TCRの直接対決となるST-TCRは、スタートから徐々に75号車Team Noah HONDA CIVIC TCR(塚田利郎/蘇武喜和/金丸ユウ/三浦康司/“J”/清瀧雄二)が97号車Racer HFDP CIVIC(遠藤光博/中野信治/西村和真/三井優介/小出峻)を引き離し、最終的に77周差をつけた75号車が開幕戦に続いてST-TCRを制した。

 4台が参戦したST-1は、レースの大半を2号車シンティアム アップル KTM(井田太陽/加藤寛規/吉本大樹/小林崇志/高橋一穂)が制し、ピット作業違反でのペナルティストップ60秒が科せられてもトップをキープする速さをみせクラス優勝、総合でも4位に入っている。クラス2番手には47号車D’station Vantage GT8R(浜健二/織戸学/近藤翼/松浦孝亮/ジェイク・パーソンズ)が続き、こちらも総合5位フィニッシュを果たしている。

 ST-2はレース序盤から13号車ENDLESS GRヤリス(伊東黎明/石坂瑞基/花里祐弥/岡田整)がトップに立ちリードするが、レース開始から17時間が経過したとき、花里が駆る13号車が緊急ピットイン。ガレージで20分弱の作業を行ったため、2番手につけていた225号車KTMS GR YARIS(平良響/荒川麟/奥住慈英)の若手3名が嬉しいクラス優勝を飾った。

 ST-3は52号車埼玉トヨペット GB クラウン RS(服部尚貴/吉田広樹/川合孝汰/地頭所光)が終始速さをみせる。序盤こそ39号車エアバスターWINMAX RC350 55ガレージ TWS(冨林勇佑/伊藤鷹志/石井宏尚/大滝拓也/水野大/宮下源都)がトップ争いを展開するも、52号車は最終的に3周差をつけて開幕2連勝を達成。

 富士24時間が実質の開幕ラウンドとなったST-4は、ニューマシンのTOM’S SPIRIT GR86(河野駿佑/松井孝允/山下健太)がスタートから独走態勢を築き、トラブルに泣いた884号車シェイドレーシング86(石川京侍/国本雄資/山田真之亮/影山正彦)や18号車Weds Sport GR86(浅野武夫/藤原大暉/石森聖生/芝叔和/普勝崚/勝木崇文)を寄せ付けず圧勝した。

 14台が争う激戦のST-5は、スタートから37分経過時にトップに立った17号車DXLアラゴスタNOPROデミオ(吉岡一成/大谷飛雄/上松淳一/西澤嗣哲/山本浩朗/野上敏彦)が627周を走破してクラス優勝を達成した。

 例年と違い大きなアクシデントやトラブルは起こらず、無事にレースが終了した2022年の『NAPAC 富士 SUPER TEC 24時間レース』。スーパー耐久シリーズの次戦は7月9〜10日にスポーツランドSUGOで『第3戦SUGOスーパー耐久3時間レース』が開催される予定だ。