ポルシェ・モータースポーツの責任者であるトーマス・ローデンバッハは、FIAとACOフランス西部自動車クラブが2024年に新設するGTクラスにおける“プレミアムGT3キット”の計画に対し、すでにプレミアムと言えるマシンに世界耐久選手権(WEC)専用のエアロパッケージが必要なのかと、疑問を呈している。

 6月10日、2022年のル・マン24時間決勝前日に開かれたACOの年次記者会見で発表された“GT3プレミアム”構想は、GT3をベースとする車両がマニュファクチャラー固有のエアロキットを装着して争うことにより、通常のGT3マシンと差別化を図ろうというもの。

 FIA耐久委員会のリシャール・ミル委員長は、このキットについてはカスタマーに対し、5〜10万ユーロ(約704〜1408万円)の範囲内でコストキャップを設けるとしている。

「コストがかかる何かしらのモディファイをしなければならないが、それはほんの数台のためのものだ。それは難しい」とローデンバッハは語っている。

「技術的な観点から言えば、何かは必ず見つかるだろう。問題は、それが本当に必要なのかどうかということだ。それはこのスポーツをより魅力的にするものなのか? 私には分からない」

「このスペシャルなイベント(ル・マン24時間レース)のために、おそらく彼らはクルマに何か特別なものを持たせたいのだろう。個人的な意見としては、必要ないと思う。観客が気づくようなものではないからね」

「ポルシェはポルシェだ。あまり深入りしたくない」

 ローデンバッハはACOの視点を「充分に理解している」としながらも、ポルシェのカスタマーが全世界でレースをしているのと同じ仕様のGT3車両を使うことに満足していると語った。

「GT3は我々にとって、カスタマー・スポーツだ」とローデンバッハ。

「1台、2台、3台、4台のマシンが選手権に参加していて、そのマシンのためだけに開発を行うことを想像してみてほしい。加えて、カスタマーはそれに対してお金を払わなければいけないわけだろう? 難しいよ」

「本当に必要なことなのか? GT3では嫌だというのなら、別のクルマにすればいい。それが私の意見だ」

「なぜなら、観客は本当に何を見ているのか? ということだ。我々はGT3マシンによる素晴らしいレースを目にすることができている。今年のデイトナ(24時間)でのGTDクラスもそうだった」

「だが、シリーズのプロモーターが何か特別なことをやりたいと思うのは理解できるし、それはそれでいいんだ。私は誰も責めてはいない」

「私にとっての疑問は、そのフォーマットが正しいことかどうか、それはいいイベントのなのか、華やかでエキサイティングなレースができるのか──それが、我々の必要としていることだ」

「このカテゴリーではそれらすべてが供給可能であることが、現在世界的なプラットフォームとなっているGT3マシンを見れば分かる」

「私が知っている世界中のGT3マシンは、きちんとしたレースカーだ。だから、意味が分からないのだ。我々は(GT3でレースが)できるのに、なぜだ? と。シリーズを何か特別なものとするために、それが必要だとは思えないからだ」

「これは私の個人的な意見であり、間違っているかもしれない。だが、なぜコストをかけなければいけないのか? 皆がハッピーになれるような解決策が見つかると思う」

「私にとって大きなポイントは、ここに世界的なGT3カテゴリーがあり、世界中で多くの選手権が開催されているのは素晴らしい、ということだ。それらのマシンがここ(ル・マン)にやってくることは、とても良いと思う」

■マスタングGT3を開発するフォードは前向き
 一方、フォードパフォーマンス・グローバルモータースポーツディレクターのマーク・ラッシュブルックは、この計画を支持してはいるものの、最終判断を下す前にFIAとACOからの情報が、もっと必要だと話している。

 フォードは2024年、IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権のGTDプロクラスのファクトリープログラムに加え、マルチマチックが開発したマスタングを世界中のカスタマーへと提供し、GT3市場へと参入する予定だ。

「それがどういったものになるのか、確認する必要があると思う」とラッシュブルック。「そのことに懸念はないが、詳細を確認することが必要だ」。

 ラッシュブルックによれば、GT3プレミアムのコンセプトについて「対話」があったものの、まだその詳細は示されていないという。

 フォードがWECおよびル・マン24時間レースへの参加資格を得るために、プレミアムキットの製作を検討するかと問われたラッシュブルックは「間違いない」と答えている。

 また、ラッシュブルックは新型マスタングGT3をル・マンでワークスチームとして走らせないことについては、「問題ない」と述べている。

「1年前に社内の承認を得てGT3マシンを作ることを決めたとき、これらの素晴らしいシリーズに参戦するためのカスタマーレースカーとして、世界中で販売できるというビジョンを持っていた」とラッシュブルックは言う。

「IMSAのGTDプロでファクトリーとしてレース参戦ができるようになれば、ファクトリーとして活動できる。我々としては、それでいいのだ」