2月末に開幕した2022年のNTTインディカー・シリーズ。ここまで8戦を終え、7月3日のミド・オハイオ戦からいよいよシーズン後半戦へと突入する。

 17戦のうちの8戦終了時点、6人いるルーキーの中でポイントスタンディング最上位にいるのはクリスチャン・ルンガー(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)だ。

 デンマーク出身の20歳は140点を稼いで16番手につけている。チームのエース格であるグラハム・レイホールがひとつ上のランキング15番手で、もうひとりのチームメイトであるジャック・ハーベイは20番手という点からもルンガーがどれだけ健闘しているかはわかるだろう。

 アルピーヌアカデミーのメンバーだった彼は開幕戦セント・ピーターズバーグが初のアメリカンストリートレースだったが、いきなりルーキー最上位となる11位でのフィニッシュを記録した。

 その後はヨーロッパ出身の若手らしく常設ロードコースで高いパフォーマンスを示している。バーバー・モータースポーツパークとロードアメリカでルーキートップの成績を残し、インディアナポリスのロードコースではルーキートップにこそなれなかったが、9位でのフィニッシュを記録した。


 3カーへと体制拡大はしたが、エンジニアリングの強化には失敗したレイホール・レターマン・ラニガン・レーシング。彼らはどのコースでも苦戦を強いられてきている。そうした状況を考えれば、インディカーへのフル参戦初年度で20歳という若さでありながら、彼は確実にポイントを重ねるという面で非常に良い仕事をしている。

 スピードを見せるのはマシンセッティングなど環境が整ってからになる。それが今シーズン中に訪れるかは少々心配な状況だ。

 ルーキーの中でポイント2番手につけているのはデイビッド・マルーカス(デイル・コイン・レーシング・ウィズHMDモータースポーツ)。

 こちらはイリノイ州シカゴ出身の20歳で、123点を獲得してランキング19番手にいる。開幕戦セント・ピーターズバーグでのレースで彼はクラッシュ。レッドタイヤでスタートし、ブラックにスイッチして2周目のことだった。

 2種類両方のタイヤをレース本番でキッチリ経験することができなかった手痛いミスの後、テキサスでの第2戦ではルーキートップとなる11位で完走。ミスから学び、進歩する姿勢を見せた。


 佐藤琢磨というベテランチームメイトから多くを学んできているマルーカスは、インディ500で予選13番手/決勝16位と、どちらも2022年シーズンルーキーのトップの成績を残した。

 アメリカ人ルーキーとしては大きな期待、興奮、プレッシャーなどもろもろが入り混じって非常に難しい戦いとなるのがインディ500だが、マルーカスは見事に仕事をやり切った。

 そして、続くデトロイトのストリートでは今年のルーキーで最初となる予選ファイナル進出を達成(結果は6番手)。決勝も11位で2レース続けてルーキー最上位となった。インディ500で琢磨は予選10番手、デトロイトでは予選2番手だった。チームのマシンが良い仕上がりになれば、マルーカスはパフォーマンスを引き出せると証明している。

 ポイント21番手につけているのがカイル・カークウッド(AJフォイト・エンタープライゼス)。昨年のインディライツで7勝のマルーカスを逆転、10勝して王座に着いた彼はインディライツで所属していたアンドレッティ・オートスポートにインディカーの空席がなく、AJ・フォイト・エンタープライゼスでフルシーズンを戦うこととなった。


 小規模チームからだがエース扱いでの参戦となったフロリダ州出身の23歳は、デビュー戦となったセント・ピーターズバーグでいきなりルーキーでは唯一となる予選Q1突破をやってのけた。

 さらに、彼は第3戦ロングビーチでもQ1をクリア。どちらのQ2も最下位で結果は12番手だったが、ドライバーの実力がより高いパーセンテージで現れるストリートでのハイパフォーマンスに秘めた能力の高さが感じられた。

 ロングビーチ決勝は10位で、今年のルーキー最初のトップ10フィニッシャーとなった。第4戦からの彼は思った通りの成績を残せていない。ふたりいるチームメイトのサポートをほとんど期待できない体制で焦りも生じているのか、GMRグランプリとデトロイトではアクシデントでのリタイアを喫している(テキサスも……だが、それはライバルの強引な走りが原因)。

 本当のシングルカー体制で奮闘しているのがカラム・アイロット(フンコス・ホーリンガー・レーシング)だ。フェラーリドライバーアカデミー出身で、現在もアルファロメオF1のリザーブドライバーであるイングランド出身の23歳は、昨シーズンの終盤3戦に出場し、ライバルたちより少々先行した形で2022年シーズンに入った。


 実際にはシリーズで最も体制が脆弱なチームからの出場で大きな期待はしにくいのだが、アイロットは第5戦GMRグランプリでQ1を突破し、ファイナル進出を惜しくも逃す7番手という目覚ましい成績を挙げ、レースでは8位でゴールしてみせた。

 これは今シーズンの第8戦終了時でのルーキー最上位フィニッシュだ。さらに彼は第8戦ロードアメリカでもQ2進出を果たし、予選12番手となった。インディ500決勝では横風で難しいコーナーとなっていたターン2で他の何人かのドライバーたちと同様にクラッシュ。

 その時に左手を骨折したためにデトロイトは欠場。復活したロードアメリカでもQ2でのアタック中にクラッシュ……とマシンを複数回壊しているが、体制の不利を跳ね除けて見せ続けているスピードにはすでにパドックの注目が集まっており、来年もJHRが彼を走ら続けることは難しいかもしれない。

 アンドレッティ・スタインブレナー・オートスポートからインディカーにデビューしてきたデブリン・デフランチェスコは8戦を終えて、予選でのベスト、決勝でのベストともに17位(テキサスとバーバー)。

 インディライツでほとんど成績を残していないのにカナダ出身の22歳はインディカーへとステップアップしてきた。


 チームオーナーのマイケル・アンドレッティは、「彼のドライビングスタイルにはインディライツよりハイパワーなインディカーの方が合っている」と言っていたが、インディライツチャンピオンのカークウッドを押し退けてのアンドレッティ入りは20ミリオン前払い!などという噂もある彼の莫大な持ち込み資金によるところが大きいようだ。

 メイヤー・シャンク・レーシングも含めればチームメイトが5人もいる、アイロットやカークウッドとは比較にならない恵まれた体制を手にしていながら、残念ながらそれは今までのところ活かされていない。

 今年参戦しているルーキーの6人目はコロンビア出身、29歳の女性ドライバー、タティアナ・カルデロン。

 AJフォイト・エンタープライゼスからストリート&ロードコースのみにエントリーしている。日本のスーパーフォーミュラでも走った経験を持つ彼女はアメリカのコースをほとんど知らないが、昨年ストリート&ロードコースをすべて走ってきているジミー・ジョンソン(チップ・ガナッシ・レーシング)に6レースのうち4戦で予選上位につけている。


 ガナッシとフォイトというチーム力の差を考えると、このパフォーマンスは上々と評価できる。また、彼女はデフランチェスコの自己ベストを上回る成績をすでに2レースで記録してきてもいる。

 アンドレッティとフォイト、こちらも参戦体制ではデフランチェスコ側が断然有利のはずだが、カルデロンはロングビーチで16位、GMRグランプリではここまでの自己ベストとなる15位でのフィニッシュを達成。レースでバックマーカーとなった際にトップグループのドライバーたちの邪魔をしないという点でも彼女はジョンソンやデフランチェスコの上をいっている。

 ここ2、3年のルーキーたちの活躍に比べると少し見劣りするかもしれない2022年のルーキードライバーたち。後半戦の活躍はあるのか? そして、ルーキー・オブ・ザ・イヤーの行方も気になるところだ。