アルピーヌF1チームのオットマー・サフナウアー代表は、フェルナンド・アロンソとの契約交渉がまとまらなかった理由について語り、チームは彼の年齢を心配して2023年のみの契約を希望したが、アロンソはより長期的にF1で走れる保証を得たいという強い希望を持っていたと明かした。

 7月28日にアストンマーティンのセバスチャン・ベッテルが今季末でのF1からの引退を発表。わずか数日後の8月1日、アストンマーティンは2度のF1チャンピオンで現在41歳のアロンソと複数年契約を結んだことを明らかにした。アルピーヌは2日にアロンソの後任として現在リザーブドライバーを務めるオスカー・ピアストリの起用を発表。しかしピアストリがそれをすぐさま否定し、契約上のトラブルがあることが明るみに出た。

 そもそもなぜアルピーヌはアロンソとの契約をまとめることができなかったのかという問題について、サフナウアー代表がチームのスタンスを説明した。

 2年間のブランクを経て2021年にアルピーヌからF1に復帰したアロンソだが、現時点ではレーシングドライバーとしての力に全く衰えは見えず、モチベーションも極めて高い。昨年はカタールで3位表彰台を達成、今年はカナダGPでフロントロウを獲得、チームの前進を後押ししている。

 しかしアルピーヌは、アロンソとの契約延長を望みながらも、彼の現在のパフォーマンスは長くは続かないと考え、1年契約にこだわった。そのため2023年の契約プラス翌年のオプションという条件を提示したが、アロンソはそれを受け入れなかったと、サフナウアー代表は述べている。

「我々は彼に、1プラス1の契約を提示した。将来を予想するのは難しい。そのため、1プラス1の契約をオファーしたのだ」とサフナウアー。

「フェルナンドと話し合いを行い、『来年の今頃に君が同じレベルのパフォーマンスを見せているなら、もちろんその後も君を乗せるつもりだ』と我々は言った。だが彼はより確実な状況を望んでいたのだろう。『パフォーマンスとは関係なく、もっと長く走り続けたい』という考えだ。その点で、1プラス1は、2プラス1、3プラス1あるいは3年契約といった条件より難しかった」

 サフナウアーは、アスリートはいずれは年齢により衰えていくものであり、チームとしてはベストのコンディションでないドライバーを走らせたくはなかったと示唆した。
   
「ドライバーには生理的な変化が訪れる時期が訪れる。自分が若かったころと同じ能力を発揮できなくなるのだ」とサフナウアーは言う。

「それはミハエル(・シューマッハー)も経験したことだ。42歳のシューマッハーは、32歳や35歳のころと同じドライバーではなかった。それは他のスポーツマンにも起こることだ。たとえばクリケット選手もそうだ。クリケットは素晴らしいスポーツだが、それほど身体を酷使するスポーツではない。視覚と手の協調、バットを極めて正確に動かすことが重要なのだ」

「それでも32歳、33歳、34歳になると、世界最高のバッツマンでも同じことができなくなる。(年齢の影響で)選手に何かが起こるからだ。それはレーシングドライバーにも起こることだ」

「そのために我々は、ハイレベルのパフォーマンスを維持するなら残すという方向性を選んだ。1年ずつ決めていこうという方針だ。だが彼(アロンソ)はもっと長い期間が保証されることを望んでいたと思う」

 サフナウアーは、41歳にして最高レベルのパフォーマンスを発揮しているアロンソを賞賛しながらも、その状態がいつまで続くのかは確認が持てないと示唆した。

「彼は偉大なドライバーだ。私が共に働いたドライバーのなかでベストに入る」とサフナウアー。

「彼は今も非常に高いレベルで戦っており、今も速さを発揮している。トリッキーなコンディションではドライバーのスキルが如実に表れるが、そういうコンディションでは彼はより一層優れた走りをする。それを今年見てきた」

「今の状態があと3年続くなら素晴らしいことだ。アストンにとってもフェルナンドにとってもね。だが、いつ衰え始めるのか分からない」

 アロンソを引き留めるため、アルピーヌのチーフエグゼクティブ、ローラン・ロッシは、F1引退後にFIA世界耐久選手権のシートを提供するという条件を提示した。アロンソはそのこと自体は喜んでいたものの、それが2024年よりももっと後に実現することを望んでいたという。

「フェルナンドと交渉し、ローランも話をし、『F1でのキャリアを終えた後にもファミリーに残って、アルピーヌとともに他のカテゴリーのレースに出てほしい』と言った」とサフナウアー。

「それはフェルナンドにとって驚くような話ではなかったし、いいアイデアだとして、そのこと自体には同意した。だが問題はいつそうなるかということだった。いずれル・マンで走るというプラン自体は、非常に喜んでいたのだが」