大きな責任を担うF1チーム首脳陣は、さまざまな問題に対処しながら毎レースウイークエンドを過ごしている。チームボスひとりひとりのコメントや行動から、直面している問題や彼のキャラクターを知ることができる。今回は、フェラーリの代表マッティア・ビノットに注目した。

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 過去2シーズン、フェラーリのペースはライバルたちより大きく劣っていたが、今年のマシンは間違いなく最速のオールラウンドマシンだ。これだけの転換を実現したマッティア・ビノットは、本来なら大きな誇りを胸に、休暇に向かうことができたはずだった。

 開幕から13戦で8回のポールポジションを獲得したことが、フェラーリF1-75にどれだけのペースがあるかを物語っている。しかし勝利数はわずか4回となれば、チーム代表にとっては深刻な事態だ。

 ビノットはフェラーリが批判を受けるのは不本意だというような思いを時々のぞかせる。しかし、多少批判を受け止めるべき面があることを認めなければならないだろう。フェラーリは優勝とチャンピオンシップのために戦うことを期待されているチームであり、ようやくそれが可能なマシンを手に入れた。それにもかかわらず、アドバンテージをフルに活用できていないのだから。

 もちろんチームの責任でない時もあり、たとえばフランスGPはそうだった。シャルル・ルクレールはポールポジションを獲得、レース序盤、マックス・フェルスタッペンをリードし、フェラーリが3連勝を挙げる可能性が高そうに思われた。そんな時にルクレールはミスを犯してクラッシュし、フェルスタッペンに勝利をプレゼントし、両選手権での大量リードをライバルに許すことになったのだ。

 この時のビノットは冷静だった。今年、フェラーリは多くの戦略的ミスを犯し、信頼性も低い。ドライバーを非難できる立場ではないことをわきまえていた彼は、ルクレールをしっかり弁護した。

「(ルクレールはミスが多いというのは)少し不公平な見方だと思う」とビノットは語った。「彼は限界ぎりぎりのところで走っていたのだ。そういうときには何かが起こる場合がある」

「なぜこういうことが起きたのか、他に理由があるのか、彼と一緒に時間をかけて話し合い、判断する。今の時点で、彼を非難する理由はない。それに、彼は(このことから)学習するはずだ。シャルルはミスをした後には、それにしっかり反応する。その姿をいつも見てきた。ハンガリーではもっと強く、もっとハングリーになって戻ってくるはずだ」

 フランスでフェラーリはルクレールがリタイア、カルロス・サインツが5位という結果に終わった。しかしビノットは勇敢にも、ハンガリー以降に向けて、高い目標を設定した。フェラーリはシーズンの残りのレースをすべて勝つことが可能であり、ブダペストでは1-2を達成できると宣言したのだ。

「我々が集中しているのは、この後のひとつひとつのレースで最大の結果を出すことだ。ポール・リカールではそれができなかった。だが、我々はすでにハンガリーに気持ちを切り替えている。次は1-2を目指す。ひとつひとつのレースが等しく重要だ。シーズンの終わりに(ポイントを)計算して、自分たちの位置を確認する」

「今日何より重要なのは、我々のパッケージが優れていることを確認できたことだ。ここから最後までの10戦を勝つことができるか。それができない理由はない。私は物事をポジティブに考えたい。ポジティブで、楽観的でありたいのだ」

「マックスやレッドブルに何かが起こる可能性はあるか? 我々に起きているように、彼らにもすでに起きている。これから起こることもあるかもしれない。だが私はそれを当てにはしない。自分たちのことに集中し、ベストを尽くすべきだ」

 残りレースすべて勝つことができるというのは、非常に大胆な発言だった。ビノットのこの宣言は、それができなければすべて失敗とみなされるというプレッシャーをチームに与えてしまったかもしれない。

 ハンガリーGPでフェルスタッペンが予選10番手に沈み、フェラーリはサインツが2番手、ルクレールが3番手につけた。ピットストップのタイミングでルクレールが前に出ることができ、チームオーダーを出す必要がないままにルクレールがトップに立った。その時、フェラーリは再び戦略で誤った判断をしてしまった。明らかに選んではならないハードタイヤをルクレールに履かせて、その結果、彼は6位に沈んだ。

 ビノットは、レース後、タイヤ選択は問題ではない、今回どういうわけかマシンに速さがなかったのだと主張した。そう言うことで、彼はチームを守り、ミスを誰かのせいにすることを避けたわけだ。

「運が悪かったということではないし、何かを変える必要もない。常に学び続け、経験を積み、スキルを高めていくことが重要だ。今日は、理由を理解するために調べるべき問題があることは間違いない」

「シーズン前半のバランスを見ると、我々が変わるべき理由はない。今日何が悪かったのかという問題に取り組む必要があると思うだけだ。ここまでの12戦と同様の競争力を取り戻すために、問題を理解して、それに取り組むのだ。次に(競争力を)取り戻せない理由はない」

 対外的にはそういう発言をしているが、チーム内では、戦略的なミスが続いていることが問題視されるだろう。ビノットとしては、なんとかサマーブレイク明けには態勢を立て直し、今度こそ自分の宣言したとおりになること、つまり強力な戦いができることを願っているに違いない。