夏休み最後の週末に開催された2022年スーパーGT第5戦、鈴鹿サーキットでは初の試みとなった今季最後の450km決戦は、GT500クラス最後尾グリッドからスタートした12号車カルソニック IMPUL Zの平峰一貴/ベルトラン・バゲットが、セーフティカー導入の好機も捉えつつ、終盤戦の鬼気迫るアタックで前方のライバルを次々と仕留め、大逆転での今季初優勝を達成。結果、ニッサン陣営が鈴鹿“5連覇”を成し遂げた。

 開幕から僅差の勝負が繰り広げられてきたGT500クラスも、ようやくシーズン折り返しを迎えたが、土曜予選日からトヨタ、ホンダ、ニッサンの各メーカーのみならず、各タイヤブランドも入り乱れての肉弾戦と化し、ミシュラン、ブリヂストン、ダンロップ、そしてヨコハマタイヤがトップ5のグリッドを分け合う壮絶な展開に。

 ここまで連続ポールポジション記録を継続してきたヨコハマ、そして開幕から続くGRスープラ最速の牙城を崩したのはニッサン/ミシュラン陣営となり、23号車MOTUL AUTECH Zがついに今季初の予選最高位グリッドを獲得。デビュー4戦目を迎えた新型ニッサンZ GT500にとってもエースカーたる23号車が初のポールを記録し、松田次生とロニー・クインタレッリのふたりにとっても、序盤戦からの苦心を払拭する予選結果となった。

 さらにフロントロウ2番手にはブリヂストンを装着する17号車Astemo NSX-GTが並び、セカンドロウ3番手にはダンロップタイヤの16号車Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GTが続くなど、ホンダ陣営も長距離戦に向け好位置を確保。

 そのテクニカルなコース特性から、セーフティカーやFCY(フルコースイエロー)の発動を予測する陣営も多く、2度のピットをどの時期に設定し、ドライバー交代やタイヤ無交換の可能性を考慮するのか。

 アクシデント想定でタイミングを引っ張るチームもあると予測されるだけに、前戦同様、450kmの決勝に向けどんなプランを用意するか。そして序盤から各陣営が履くスタートタイヤのグリップがどのように変遷していくか。鈴鹿と富士のコース特性と同様に、同じ450kmでも大きく違った展開になることが予想された。

 前日に続き蒸し暑さを感じさせるコンディションのなか、午後13時10分より決勝前ウォームアップ走行が始まると、ここで予選5番手につけていた38号車ZENT CERUMO GR Supraが、20分間のセッションをガレージ内で過ごすことに。どうやらセンサー系トラブルとのことで状況が心配されたが、その後のスタート進行で無事にグリッドへの試走を果たすことができ、なんとか5番グリッドを維持してパレードラップへと進んだ。

 三重県警の白バイ隊とパトカー先導で全15台の隊列が動き出した14時30分時点で、気温は28度、路面温度は39度と前日に似た温度条件に。上空の雲も晴れて日差しが強まり、スタート直後からより厳しい条件に変化していくなか、フォーメーションラップを経てスパートを決めたのが、第3戦のここ鈴鹿で完勝を決めた3号車CRAFTSPORTS MOTUL Zの千代勝正。

 燃料リストリクターの1ランクダウン領域に入ったことで出力低下を強いられながらも、9番手発進からのオープニングで前方の39号車DENSO KOBELCO SARD GR Supraを捉えると、続く2周目の1コーナーで100号車STANLEY NSX-GTを豪快な大外刈りでオーバーテイク。早くも7番手に進出する。

 すると首位がGT300の隊列に追いつき始めた8周目突入時点で、8号車ARTA NSX-GTの福住仁嶺が給油のためピットへ。スプラッシュ&ゴーで再びコースへと復帰し、クリーンエアでラップペースを優先する戦略を採る。

 続く周回ではオープニングラップで遅れていた14号車ENEOS X PRIME GR Supraも早めのピットで山下健太を呼び戻すと、同じ周回では3号車CRAFTSPORTS千代が、シケインのブレーキングで再びアウトから仕掛け、今度は24号車リアライズコーポレーション ADVAN Zをパス。陣営内バトルを制して6番手に浮上する。

 さらに15周目には直前の走行機会を奪われた38号車ZENTの立川祐路が奮起し、1コーナーからサイド・バイ・サイドで並んだ19号車WedsSport ADVAN GR Supra国本雄資をイン側に封じ込め、S字で4番手へと進出。路面温度がついに40度へ到達するなか、ベテランの技を見せつける。

 すると17周目。7番手を走行中だった24号車リアライズコーポレーション ADVAN Zの右リヤタイヤが突如異変を来たし、スロー走行でピットへ。これを受けてか、なんと首位走行の23号車MOTUL AUTECHも早めのタイヤ交換へ向かい、同じ周回で36号車au TOM'S GR Supraもピットイン。19周目にはスプーンの立ち上がりで100号車STANLEY NSX-GTにパスされた3号車も、続くラップでタイヤ交換に向かうなど、レース距離3分の1を前に、ミシュラン陣営が予想外の早さで新たなタイヤセットへの交換を強いられる。

 これで首位を引き継いだ17号車Astemo松下信治だが、24周目のシケインで止まりきれずコースをカット。これで背後に16号車Red Bull MOTUL MUGEN笹原が1秒圏内に迫る。すると29周目に38号車ZENTがセオリーどおり3分割のピットタイミングで石浦宏明にチェンジ。同じ周回で前戦勝者37号車KeePer TOM'S GR Supraもサッシャ・フェネストラズから宮田莉朋に繋ぐ。

 これに反応し、2番手を走行していた16号車Red Bull MOTUL MUGENも大湯都史樹へ、続くラップで4番手の19号車WedsSport ADVANも阪口晴南に。そして続く30周目突入時点で首位17号車Astemoも塚越広大にスイッチ。

 16号車Red Bull MOTUL MUGEN大湯は直接の相手となる23号車とアウトラップのターン1で交錯するあわやの場面もありつつダンロップタイヤの発動を待つと、32周目の130RでZの前に出ることに成功。ここで実質の首位に浮上する。

 一方、8号車ARTA福住は33周目のシケインで直進し、38号車ZENTの石浦に5番手を明け渡すと、やはりスタートタイヤのグリップ低下が響いているか、続く周回では17号車Astemo塚越にもヘアピンで先行されてしまう。

 34周目に全15台の1回目ルーティンが終わると、首位の16号車Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GTに続き、23号車MOTUL AUTECH Z、38号車ZENT CERUMO GR Supraのトップ3に。するとタイヤのドロップが予想以上に大きいか、23号車ロニー・クインタレッリのペースが落ち、37周目のダンロップコーナーで38号車ZENT石浦が2番手に上がる。

 同様に7番手争いを展開する3号車CRAFTSPORTS MOTUL千代も、19号車WedsSport ADVAN阪口の先行を許し、その坂口は勢いそのまま14号車ENEOS X PRIME山下もかわし6番手へと上がっていく。

 そして42周目に23号車MOTUL AUTECHは松田次生に残る距離を託し、同じ周回では8号車ARTA福住も、ロングスティントを終えて野尻智紀にスイッチ。後続も続く周回でドライバー交代のためピットへと戻ってくる。

 一方で首位の16号車大湯、2番手38号車ZENT石浦、そして追い上げてきた17号車Astemoの塚越が1秒圏内のテール・トゥ・ノーズに迫り、ここから3台のジリジリした精神戦が展開される。するとここで動いたのは3番手の塚越で、49周目に最後のルーティンピットを選択。33.2秒の作業静止時間でダブルスティントに挑む。

 するとその直後。50周目の130RでGT300クラスの車両がクラッシュを喫し、ここでセーフティカーの導入が宣言されることに。この直前、ピットエントリーへとステアリングを切っていた39号車DENSO KOBELCO SARD GR Supraと、12号車カルソニック IMPUL Zは、作業を終えて80km/hスロー走行のトラック上へ復帰。39号車DENSO KOBELCO SARDの中山雄一は、直前に作業を終えていた17号車の背後2番手へとジャンプアップ。12号車カルソニック平峰一貴は、僚友23号車の背後で実質4番手とする。

 規則どおりホームストレートでのクラス別隊列整理を経て、55周目突入でリスタートが切られると、暫定2番手にいた38号車ZENT石浦がピットへ向かうなか、トラック上では12号車カルソニック平峰が躍進。まずは23号車の松田をパスすると、39号車DENSO中山も捉えて実質2番手に浮上。さらにDENSO中山は23号車の松田にも先行され、実質4番手へとダウン。しかし、57周目の130Rでラップダウンをパスしようとした平峰がラインを乱してアウト側にワイドになり、背後にいた松田が再びポジションを取り戻す。

 60周目に入り、ついに暫定首位の16号車Red Bull MOTUL MUGENがピットへ。モニター上で31.3秒の作業でフレッシュタイヤにチェンジし、大湯が最後のスパートに賭ける。一方、一足早く追い上げを開始していたZENT石浦がトラブルかアクシデントか、なんとまさかのスロー走行の末、無念にもマシンをピットへと戻すことに。

 首位争いは17号車塚越、23号車松田、12号車平峰の接近戦になり、GT500、GT300両クラスのバックマーカーを処理しながら一進一退の攻防が続くと、65周目のヘアピン進入で2番手争いのさなか、右サイドへ押し出された形となった平峰はグラスエリアを走行し、芝や砂利などデブリを拾ってしまう。

 この行為が“幅寄せ”と判断された23号車は、レース残り10周を前にドライブスルーペナルティを科され、目前だった表彰台をフイにする痛い代償を支払うことに。70周目にピットレーンを通過した松田は6番手でコースに復帰する。

 この周回でGT300車両回収のため、この日最初のFCYが宣言され、首位が70周突入で解除になると、新たな3番手争いが接近。ともにタイヤ無交換を選択したと思われる39号車DENSO中山と、100号車STANLEY山本尚貴がコンマ5秒圏内で表彰台争いを繰り広げる。しかし73周目にはその背後から迫った3号車CRAFTSPORTS高星明誠が前へ出て、この争いの輪に割って入ると、さらに39号車DENSOのテールに迫る。

 さらに優勝戦戦も風雲急を告げ、ラップあたり2秒以上速いペースで首位17号車を追い詰めた2番手カルソニック平峰は、75周目のヘアピンでレース終盤にペースの上がらないAstemo NSX-GTのインを刺し、スプーンへのサイド・バイ・サイドで勝負を決し、最後の最後で首位を奪う。

 これで予選の不調で最後尾発進となっていた12号車カルソニック IMPUL Zが大逆転での今季初優勝を達成。17号車Astemo NSX-GTの塚越がからくも2位を死守し、3位の39号車DENSO KOBELCO SARD GR Supraも薄氷のポディウムを獲得。またしても3メーカーが表彰台を分ける結果となった。また、最終ラップでは100号車STANLEY NSX-GTと23号車MOTUL AUTECH Zが5番手を争い、130Rで100号車が飛び出して大クラッシュ。幸いにもステアリングを握っていたSTANLEYの山本尚貴は大きな怪我はなかった。