WEC世界耐久選手権第5戦富士6時間レースは9月9日、走行初日の2セッションが終了した。両セッションでトヨタGAZOO Racingの2台のGR010ハイブリッドがベストタイムを分け合う形でスタートしたが、プジョーも健闘を見せている。また、LMP2、LMGTEプロ、LMGTEアマの各クラスにおいても上位陣のタイムは接近しており、土曜以降の激戦を予感させる滑り出しとなった。

 そんな富士スピードウェイの金曜日のパドックから、各種トピックスをお届けする。

■LMGTEプロのBoPは“手動”で決定
 富士に向けたGTEプロクラスのBoP(性能調整)の更新は、2017年から採用されているオートマチック(自動)システムによる調整ではなく、選手権主催者のFIAとACOフランス西部自動車クラブによってマニュアル(手動)で行われたものだ。

 自動のBoP変更は、ル・マン24時間以外の直近2レースで十分なデータが得られた場合にのみ行われるものだが、第2戦スパでは雨が降り、第4戦のモンツァにおけるBoP修正も手動で行われていた。なお、この手動による変更は、新しいクルマのデータがもたらされたときなど、さまざまな理由で行うことができるとされている。

 コルベット・レーシングのドライバー、トミー・ミルナーは、5kgの軽量化とエアリストリクター径の拡大が許されたポルシェ911 RSR-19に対して、コルベットの10kgの軽量化はコンマ3秒の価値しかないと考えているという。

「僕らはまだ車のセットアップやその他について自分たちのやり方を見つけているところだから、実際の完全な効果を把握することはできないだろう」とミルナーは説明している。

 富士でのBoP手動変更により、GTEプロのBoPは最終戦でも主催者により手動で調整されることになった。

 ポルシェのファクトリーモータースポーツディレクターであるアレックス・シュテューリグは、「バーレーンのBoPは、モンツァと富士の結果を受けて、唯一(自動)変更が可能だったはずだ」と語った。

「しかし今、彼らはまた“ブラックボール”の変更を行ったので、これでオートマチックBoPは終わりとなった」

■スピン後にコース逆走でペナルティ
 アイアン・リンクスのクラウディオ・スキアボーニは、FP1において、ターン7(ヘアピン)でスピンした後、コース上で逆走したため、ドライブスルーペナルティ(これ以上のレギュレーション違反がなければ、ミーティング終了まで執行を猶予)を科された。

 ナイテッド・オートスポーツのフィリペ・アルバカーキはFP2で接触事故を起こし、10分間のストップ&ホールドを科された。彼はターン16(最終コーナー)でチーム・プロジェクト1の46号車ポルシェを追い抜こうとしてスピンさせたと判定された。

■フェラーリLMHが“ガス欠テスト”実施か
 フェラーリは8月にイモラで2023年デビュー予定のル・マン・ハイパーカー(LMH)のテストを行った。これは、フィオラノでの最初のシェイクダウンの後、サーキット開発プログラムという次のステップに入ったことを意味する。

 インターネット上では、このマシンがローダーに載せられてパドックに運ばれる画像がアップされているが、燃料タンクを空にするために意図的に行われた『ガス欠テスト』の結果と見られる。

■プジョー、最終戦までにさらなるテストを予定
 プジョーのテクニカル・ディレクターであるオリビエ・ジャンソニーは、11月の最終戦バーレーン8時間レースの前に1〜2回のテストを行う可能性を示唆した。

 プジョーはモンツァと富士の間でテストを行ったスペインのサーキットについて口を閉ざしているが、ジャンソニーはテストトラックとして人気の高いアラゴンであったことは否定している。

 プジョー・スポールチームは、エンジニアリングスタッフやメカニックのほとんどがフランス人であるにもかかわらず、コミュニケーションは英語で行われている。その理由は、ドライバーとのコミュニケーションの取りやすさと、ステランティス・グループの企業言語であることが挙げられる。かつてLMP1時代には、プジョーのファクトリーチームはフランス語で活動していた。

 プジョーは、モンツァで起きたギヤボックスの熱交換器にデブリが入る問題を解決するため、いくつかの部品に「小さな設計変更」を実施したという。

 ステランティス・モータースポーツディレクターのジャン・マルク・フィノーは、「2回清掃しなければならなかった」と語った。

「FIAの検証を受けた小さな進化で修正したんだ。(モンツァの後の)テストではOKだった」。この仕様変更は、パフォーマンスに関連する“エボ”ジョーカーとしてカウントされない。

■コルベットC8.Rの来季、まもなく発表へ
 富士に来日しているゼネラルモータース(GM)のスポーツカー・レーシング・マネージャー、ローラ・ウォントロップ・クラウザーによれば、コルベットC8.Rが2023年にどこでレース活動を行うかについての発表時期は迫っている、とのことだ。

「2023年に何が起こるか、もうすぐ発表があると思う」と彼女は言う。

「だけど、それまでは我々の状況に関してはコメントできない」

 今季限りでGTEプロクラスが廃止されるため、コルベットがWECに継続参戦するにはGTEアマクラスでの参戦が必要となり、現在のチームの“ファクトリーレーシング・スピリット”からは逸脱することになる。

 クラウザーは、チームが(LMGTEアマで必要とされる)プロ/アマのシステムに対してにどのように適応できるかを「評価中」であると繰り返している。

■星野敏、“アマ”の定義に物申す
 プレ・イベント記者会見に登壇したDステーション・レーシングの星野敏は、WECのGTクラスがアマチュアのブロンズドライバーのために「より規制される」ことを望むと語った。

「ル・マン、アジアン・ル・マン、ヨーロピアン・ル・マンでは、元プロドライバーや若いドライバーがブロンズになっていることがあります」と星野。

「私のような純粋なブロンズドライバーには、とても不公平なことだと思います」

 これはFIAのドライバーレーティングの見直しによって、是正される予定となっている。

■「代打、ELMS」
 TFスポーツの33号車アストンマーティン・バンテージAMRは、モンツァでのエンリケ・シャベスが宙に舞うアクシデントに見舞われたオリジナルシャシーが損傷したため、直後にヨーロッパを出発するWECの船便には、ELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズで使用しているシャシーを載せて日本に送り出した。

 チームはクラッシュしたマシンを送ることも考えたが、修理の程度を考慮し、このように対処したという。

■英国系チームが哀悼の意
 英国籍のチームは金曜日、エリザベス2世が96歳で亡くなったというニュースで目を覚まし、哀悼の意を表した。

 ユナイテッド・オートスポーツ、JOTA、アストンマーティン・レーシング、ベクター・スポーツ、TFスポーツがソーシャルメディアに声明を発表した。TFスポーツは、女王について「70年にわたる在位期間中の驚異的な奉仕と献身によって記憶されるであろう、真のアイコン」と表現し、「この週末、我々は重い気持ちでレースに臨む。ありがとうございました」と付け加えた。

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 走行2日目となる10日(土)の富士スピードウェイでは、10時からのサーキットサファリに続いて、10時20分から60分間のFP3が行われる。そして14時40分からは、決勝レースのグリッドを決する予選のセッションが、LMGTEプロ&アマ、LMP2&ハイパーカーと、2セッションに分けて行われる予定となっている。