2022年のNTTインディカー・シリーズはいよいよ最終戦。チャンピオン争いは今年もカリフォルニア州モンテレーでの最終戦までもつれ込み、5人以上のドライバーたちに年間王者となる可能性が残されている。

 しかし、現実的にはランキングトップ3による戦いと見ていい。その3人とはウィル・パワー(チーム・ペンスキー)、ジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)、スコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)だ。

 今年もチャンピオン争いはペンスキーとガナッシというインディカーシリーズの強豪2チームによるものとなった。

 アンドレッティ・オートスポートは多くのコースでパフォーマンス低下に苦しみ、着々と実力を伸ばしているアロウ・マクラーレンSPも戦闘力を発揮できるレースとそうでないレースの差が依然として大きい。

 ワンメイクシャシーでの戦いは毎年エアロパッケージを限定的に新しくすることで近代化を推し進めてはいるものの、テスト日数の制限などもあって二強が実力をハイレベルに維持し続けているのに対し、ライバル勢はアンドレッティやマクラーレンをもってしてもトップ争いを全レースで行えるだけの力を保つことができていない。

 今シーズンはこれらトップ4しか優勝を飾れておらず、他のレイホール・レターマン・ラニガン・レーシング、エド・カーペンター・レーシング、デイル・コイン・レーシングらはかなりの苦戦を強いられている。

 ポイントリーダーはパワーで、ニューガーデンとディクソンは同ポイントでパワーとの差は20ポイントだ。

 優勝が50点で、2位が40点、3位が35点だから、パワーはトップ3でゴールできれば2度目のチャンピオンとなれる。20点という差はかなり大きい。パワーがチャンピオン候補の最右翼だ。

 あとはのしかかるプレッシャーに押しつぶされたり、トラブルなどの不運にパワーが見舞われないことを願うばかり……。








 最終戦ラグナセカは路面のグリップの低さに定評のあるコースで、パワーが表彰台に上る可能性は、実は決して高くない。

 理由は3つ。そのひとつ目は、このコースでは地元カリフォルニアのコルトン・ハータ(アンドレッティ・オートスポート・ウィズ・カーブ・アガジェニアン)が明確に速い。

 昨年、3年前の2019年ともにポールポジションから優勝している(2020年はCOVID-19パンデミックでレースなし)。


 ふたつ目は、、ハータのチームメイトで同じくカリフォルニアンのアレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)もラグナセカを得意としている。

 そして3つ目が、事前テストを行っているチップ・ガナッシ・レーシング、アロウ・マクラーレンSPの存在だ。

 ペンスキーとアンドレッティなどがポートランド直前に事前テストを行った頃、ラグナセカでチップ・ガナッシ・レーシング、マクラーレン、レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング、デイル・コイン・レーシングらが最終戦に向けたテストを行っていた。

 アンドレッティはルーキーのデブリン・デフランチェスコのみだがテストを行えているので、彼らも最新のラグナのデータを手に入れており、ペンスキーにはそれがない。

 彼らはテストをしたポートランドでスコット・マクラフランが勝ち、パワーは2位フィニッシュしてポイントリードを保ったが、ラグナセカはライバル勢がレースウイークエンドを前に優位を手に入れているのだ。

 来シーズンに向けた勢いを得ようとアンドレッティ、マクラーレン、レイホールなどが優勝、あるいはトップ3フィニッシュに強い意欲を持って臨んでくる。

 参考までに昨年と2019年のレース結果をここに挙げる。マシンも現在とほぼ同じスペックになっている状況での2レースだ。

 2019年はハータがPPから優勝。2位は予選7番手だったパワーで、3位は予選2番手だったディクソン。彼はファステストラップも記録している。

 ロッシは予選3番手だったがハータとのトップ争いでアクシデント。4位は予選6番手からシモン・パジェノー(当時はチーム・ペンスキー)。5位はフェリックス・ローゼンクヴィスト(当時はチップ・ガナッシ・レーシング)。ニューガーデンは予選4番手から8位フィニッシュした。

 2021年もハータがPPから優勝。2位は予選4番手だったアレックス・パロウ(チップ・ガナッシ・レーシング)。3位は予選13番手のロマン・グロージャン(デイル・コイン・レーシング・ウィズRWR)。4位はグラハム・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)、5位はパト・オーワード(アロウ・マクラーレンSP)。
 予選2番手だったロッシは25位、予選3番手のパワーもはエンジントラブルで26位だった。ニューガーデンは予選17番手、決勝7位だったがファステストラップを記録。

 マーカス・エリクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)は予選7番手から決勝6位。ディクソンは予選8番手から決勝13位という結果だ。

 パワーはラグナで過去に悪くない成績を残してきているが、ガナッシ&アンドレッティの優勢は否めない。

 ディクソンが7度目のタイトルに手を届かせる……可能性は十二分にある。シーズン終盤の粘り強い戦いぶりによって史上最多タイの7度目のチャンピオンシップ獲得が見えているディクソンはモチベーションがとても高くなっている。

 ニューガーデンはラグナセカで良好なパフォーマンスを見せることがまだできていないが、こういうレースで一発速いところを見せるのが彼だ。逆転で3度目のインディカーチャンピオン……先輩チームメイトは2度目のタイトルを逃して失意の底へ……というケースはおおいにあり得る。

 ペンスキーは3カー、ガナッシは4カーで2022年シーズンを戦ってきているが、ガナッシの4台目は元NASCARチャンピオンのジミー・ジョンソン搭乗なので、実質的にはガナッシもペンスキーと同じ3カー体制と言っていい。

 そんな彼らが直前テストを行った。果たしてどこまでのアドバンテージを手に入れることができているのか? そこがポイントになる。金曜日の最初のプラクティスに注目したい。

 最終戦におけるジョンソンに対しては、チャンピオン争いに影響を与える“道を譲らないバックマーカー”となることや、スピン&ストールでフルコースコーションを出さないことを期待したい。

 ジョンソンに対してパワーは否定的な意見を何度も口にして来ている点が気にかかっていいる。NASCARで史上最多のタイトル獲得歴を誇るドライバーだからといって、オープンホイールに乗せて遅いのだったらトップグループに対してはさっさとレーシングラインを譲るべき、というのがパワーの見解だ。

“迷惑なぐらい遅いドライバーには出場する資格すらない”……とまでハッキリ言ってはいないが、ほぼそう聞こえるぐらい厳しく批判をパワーーは行ってきている。

 ディクソンはジョンソンのチームメイトなので、彼に対する不平を言うはずことなどない。そして、ニューガーデンも、同じアメリカ人ドライバーとして、NASCARチャンピオンに敬意を払っているようだ。それだけに、ただひとり批判的立場のパワーに何か悪いことが起こる可能性が心配されるのだ。

 チャンピオン争いでは現在のポイントリーダー、それも20点という大きな差をランキング2位以下につけているパワーが絶対に有利。

 彼に続くのが事前テストをしている、過去6回チャンピオンになった実績を持つディクソンで、最後のチャンピオン候補、しぶとく、しつこいキャラクターのニューガーデンという状況だ。果たして最終戦で王者に輝くのは……。