WEC世界耐久選手権第5戦富士6時間レースではトヨタGAZOO Racingの8号車GR010ハイブリッドの最終スティントを担当し、2時間にわたる安定した走行の末にトップチェッカーを受けた平川亮。

 レース後のポディウムセレモニー、そして記者会見を終えて日本人メディアのグループ取材に応じた際にはフィニッシュから1時間近くが経過していたが、平川はいつもより少し饒舌で、テンションも高めに見えた。それは、“プレッシャーから解放された”から、だったようだ。

 今季、セバスチャン・ブエミ/ブレンドン・ハートレーに加わるレースドライバーに抜擢された平川は、「1年くらい前、WECのドライバーになると聞いた時から、かなり不安な日々を過ごしてきた」と振り返る。

 開幕戦セブリング1000マイルでは表彰台デビューを飾ったものの、続く第2戦スパ・フランコルシャン6時間では、平川が乗る前にメカニカルトラブルからリタイア。決勝でのドライブ経験が少ない状態で“大一番”の第3戦ル・マン24時間を迎えることとなり、プレッシャーは一層高まった。

 ル・マンではテストデーからしっかりと走り込めたこともあり、レースウイークを通じてマシンとWECのレースへの順応が進んだ平川は、見事に最高峰カテゴリー初挑戦にして初優勝を遂げた。

 ル・マン後、第4戦モンツァでは最終スティントでアルピーヌA480・ギブソンとの接近戦を演じてさらなる経験値を高めた。だが、今回の地元凱旋に向けては、また別の種類のプレッシャーに悩まされていた。

「コースをよく知ってるということで“速くて当たり前”という雰囲気がチーム内にあって、それでちょっとみんなにからかわれたり」していたという。

「まぁそれはいいのですが、自分自身、プレッシャーはありました。でもそのなかで力は発揮できたし、決勝では後続とギャップがあるなかでも自分の走りをしっかりと安定して出すことに集中できました」

「ギャップがありすぎて集中しづらい状況が逆にプレッシャーだったのですが、そのなかでしっかりと1周1周集中していけましたし、結構あっという間に2スティントが終わったかなと思います」

「ル・マンで勝てて、今日こうして富士も勝てて、一旦落ち着けるのかなとは思います」

 アプローチを変えずに、目の前のことに集中して取り組む──。その平川のスタイルは決勝でも変わることはなかった。

「このクルマを富士で走らせるのは初めてなので、何か新しい走り方はあるのかな、という研究は(事前に)すごくやってきたし、そのなかではたくさん発見もありました。今日、走っているなかでも発見はあったし、そういったいつも通りの取り組み方をしました」

 7号車の小林可夢偉は、タイヤやブレーキングの面で厳しかったというが、「そこがこのクルマの難しいところなのですが、それも想定して僕ら8号車チームは金曜日からしっかりとクルマ、路温を考えてやってきました。チームにはいいクルマを用意してもらって感謝しています」と、8号車では順調に週末が進んでいたようだ。

■最終戦バーレーンは、タイトルをかけた“同点決戦”へ
 今回の優勝により、3位で富士を終えたアルピーヌ・エルフ・チーム36号車陣営に、ドライバーズランキングで同点に追いついた8号車の3人。前でゴールした方がチャンピオン、というシンプルな対決構図で最終戦バーレーンを迎えることになった。

「バーレーンはもっと(レース距離が)長い。富士はチームとしてもうまく組み立てられましたし、それをしっかりとバーレーンでもやらなければいけないと思います。暑さ対策もしっかりと……」と平川。

 さらなるライバルが参入してくる2023年を前にタイトルを獲ることの重要性は、平川も痛感しているという。ゆえに、この先の2カ月も、その双肩には新たなプレッシャーがのしかかるに違いない。

 それでも、アプローチを変えることはないはずだ。「あまり油断せずにというか、しっかりと自分たちの力を発揮できれば、チャンピオンは獲れると思います」と、平川は力強いコメントで締め括った。